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失われた断片  作者: 無光
第1章─ビグトラス島
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08─メルシャイマ



 「うう……」


 今日はSWEETの再開日だから、特典クロワッサンを買いに行かなきゃ!


 「ササ……サ」


 草……?手を横に伸ばすと、湿った草がたくさん触れた。


 (ぼんやり……)


 ?


 「ここはどこ?」だんだんと周りの人や物が見えてきた。


 ミドとルキが一人はそばに立ち、一人は私の隣に座っていた。


 「イラン!目が覚めたんだね!」


 その声色から、彼女がとても喜んでいるのがわかった。


 目が覚めると、彼女は顔を私に近づけてきた。


 彼女はいつもの自信に満ちた表情とは異なり、眉をひそめていた。


 私は目をこすり、右を見て、上を見て、そして左を見た。


 見慣れない光景が広がっていた……土の山、石の塊、壊れた建物の残骸、簡素な木の椅子、そして私が寝ていたツタのベッド。


 周囲には見知らぬ紫色の花が咲き、花の中心はオレンジ色の丸い輪が描かれていた。


 外から吹く風で、リラックスできる香りが漂ってきた。


 香りを一息吸い込み、起き上がろうとすると、突然頭が少し痛み始めた……


 「イラン、大丈夫?」


 ルキは両手を差し伸べ、よろめく私を支えた。彼女は心配そうな表情で私を見つめていた……


 どうしてここに来たのか全く覚えていなかった。


 そうだ、あの時SWEETで想像を絶する状況を目の当たりにした。


 あの人たちは一体どうなったのだろう……?


 ……あれ、星雨が見当たらない?


 自己紹介をしようとした時、あの恐ろしい光景に邪魔されたのを思い出した……彼女が無事であることを願っている。


 「やあ、イラン、やっと起きたか。」


 この聞き覚えのある粗い声は……


 「ミド!?」


 間違いない、この粗い声はミドだ!


 「無事でよかった!」私はミドに抱きつこうとした。


 「おい、イラン、ちょっと待て!」ミドは反射的に数歩後退した。


 彼が無事だとわかり、本当に嬉しかった!


 私がぶつかった拍子に、彼が手にしていた紫の花びらが地面に散らばった……


 「これは?」


 地面に散らばった花を見て、私は何が何だかわからなかった。


 「イラン!お前は相変わらずドジだな!ハハ。」


 ミドの背後に立っていたのは、青い角が多い帽子をかぶり、長い灰色の髪をした優しい笑顔の老人、キリム教授だった!


 「キリム教授!無事でよかったです。他の皆さんは?」


 私は期待を込めて尋ねた。あの時見たものがただの夢や幻想であってほしいと願っていた。しかし、教授、ミド、ルキの顔が次第に険しくなるのを見て、皆もういないのかもしれないと思った……


 いつも温かい笑顔を絶やさないマリーナおばあさんが無事であることを祈りつつ……


 「一体どうなっているんですか?」


 「教授、私は何日間眠っていたんですか?」


 「それと、ここはどこですか?」


 私は今の状況を一刻も早く理解したかった。


 もし私たちが残された者だとしたら、他の人たちは死んだのか、それとも失踪したのか?


 教授やルキたちはどうして無事だったのか?


 私は教授をじっと見つめた。彼の知恵があれば、必ず解決策を見つけ、何が起こったのかを知っているはずだ!


 「イラン、今日は事件が起こってから3日目だ。ここはパミラ市場の地下だ。」


 意外にも、最初に口を開いたのはルキだった。


 待って!3日も!?


 外の世界はどうなっているのだろう。見慣れた風景はまだ残っているのか?


 それとも、私たちは何者かによって征服されてしまったのか!


 そんなことを考えると、私は落ち着いていられなかった。なんて長い間眠っていたんだ!!


 「教授、一体何が起こったのか教えてください!」


 「焦るな、イラン。」


 キリム教授は鷹のように鋭い目で私を見つめ、両手を私の肩に置いた。


 すると、淡い暖かさが体中を駆け巡り、私はさっきほど焦る気持ちがなくなった。


 教授はミドに地面に落ちた葉を拾うように指示した後、紫色の液体が入った透明な瓶を取り出した。


 「この紫色の花から作ったエキスを飲んでくれ。」教授は私が躊躇しているのを見て続けた。


 「頭痛が和らぐはずだ。」


 ルキが瓶を受け取り、私を引っ張って隣の草地に座らせた。


 「イラン、これで痛みが軽くなるよ、さあ。」


 ルキは瓶を私の口元に近づけた。鼻をつく刺激的な辛い匂いが漂ってきた。


 ……


 「えっと……私は……」その謎の匂いが鼻腔に直撃し、私は頭をそむけてその匂いからできるだけ遠ざかろうとした。


 「イラン、つべこべ言わないで、私が手伝う!」


 ミドはルキから瓶を奪い、謎の紫色の液体を私の口に直接注ぎ込んだ!


 「うう~ゴクッ……ミ……!」


 「アハ~これで暫くしたらもっと楽になるだろう。」


 喉に流れ込んだ液体は想像していたほど辛くはなかった。いや、液体ではなく、むしろ気体のような煙が体内に流れ込む感じだ。


 心地よい感覚で、懐かしい香りさえ感じた。残っていた頭痛もだいぶ和らいだ。


 「ありがとう、ミド。」


 ミドは少し乱暴だったが、彼の性格はいつもシンプルで直感的だ。だから、彼には怒れない。またしても彼に助けられた。


 「怒らないのか?つまらないな~」ミドは両手を後ろに組み、ブツブツと文句を言いながらそばにいた。


 「ゴホン~」


 教授は咳払いをし、考え込んだように全員を見渡しながら言った。


 「それでは、説明しようか。」


 キリム教授は懐から木箱を取り出した。その箱には見たことのない文字と図像がたくさん描かれており、それぞれの文字と図像の間は多くの円で繋がっていた……


 「これは、君たちもよく知っているものだろう、授業で。」


 そう言いながら教授は木箱を開けた。すると、眩しい光が一気に広がった。


 「これは!あの日見た白い光じゃないか!?」突然、恐ろしい考えが脳裏をよぎった。まさか……


 教授は私の表情を見て、微笑みながら淡々と言った。


 「坊や、それは君が思っているようなものじゃない。見続ければ、真実がわかるだろう。」



 教授を信じることにした。きっと何か私が知らないことがあるのだろう。私はうなずき、光をじっと見つめた。


 よく見ると、その光の奥には、小さな星のような白い点が木箱の中を漂っていた。


 その星のような点が箱の周囲を漂いながら、ゆっくりと回転し始めた。まるで宇宙のように静かで神秘的な光景だった。


 しばらく見つめていると、突然、木箱の中央に7センチほどの薄い破片が現れた。破片の周囲は紫がかった赤い光を放っていた。


 その瞬間、心臓が高鳴り、全身に鳥肌が立った。見たことはなかったが、文献で読んだことがある。


 これはまさに、失われた断片ではないか、間違いない!?


 「教授!これって、あの失われた断片ですか!?」さすがルキ、私が反応する前にもう答えを言ってしまっていた。その時彼女は振り返って私を一瞥した。



 「そうだ、イラン、君たちはこれを聞いたことはあっても、実物を見るのは初めてだろう。」教授は僕を見て静かに話しながら、破片を指さした。


 「教授、どうしてこんな貴重なものを……」ミドは、暗闇の中でも緑に輝く瞳を大きく開き、破片をじっと見つめていた。まるでその視線を離せば、破片が消えてしまうかのようだった。


 「今回の事件は、この断片の力が悪用されたことによるものだ。」教授は続けた。


 「断片のエネルギーが使われた……」ミドがじっと見つめてつぶやいた。彼は以前、断片を見つけることなど夢物語だと言っていた。


 今、本物が目の前にある。彼の信じられないという表情を見て、これまで彼にからかわれていたことさえも、今ではどうでもいいと思った。私は思わず、満足そうに笑みを浮かべた。


 しかし、なぜ教授がこれを持っているのだろう?断片は古代の時代から消え去ったとされているのに……


 「イラン、君は頭でも打ったのか?どうして急に笑ったり、考え込んだりしているんだ?」ミドは不思議そうに私を見て尋ねた。


 「いや、なんでもないよ。」私は適当に返事をしながら、ただ真実を知りたかった。


 ミドは一瞬私を見て、頭をかきながら肩をすくめ、再び断片に集中した。


 そういえば、あの日の出来事は、これまでの歴史と何か関係があるのかもしれない。教授が授業で話していたことを思い出した。


 (古文学研究の講義)


 「かつて、とても高度な文明を持つ一群の存在が、地球と呼ばれる美しい惑星に住んでいたと言われている。彼らの姿は人間に似ているが、身体は半分青い透明な物質で構成されていた。彼らは意志の力で自分の身体を物質化し、宇宙のエネルギー体になることができた。思い描くだけでどこへでも行けるとされ、簡単な装置を使えば瞬時に目的地に到達できたと言われている。」


 彼らは地球だけに留まらず、宇宙のあらゆる星々を自由に行き来していた。後の世代は彼らの存在を“神”と呼んだ。


 ある日、彼らの中に、他の同族を超越した知恵を持つ新しい種族が現れた。彼らは三つの目を持ち、背中には銀白色の翼があり、身体は完全に透明だった。この種族は、単なる星間移動に満足せず、さらに進化しようとしていた。そしてその中に、一人のリーダーが現れた。


 その名は:メルシャイマ。


 彼らは青い神々から離れ、地球から3800万光年離れた新たな地に到達した。その星は奇妙な鉱物で満たされ、鉱石同士が意識を持ち、互いに話すことさえできたと言う。


 その星には三分の一を覆う巨大な黒い鉱石があり、それが星全体の生命の源だと言われていた。


 近づくだけで、エネルギーが吸い取られるかのように消えてしまう。メルシャイマは、空間を超越する力を手に入れようとし、同族を率いて信じられないような研究を行っていた……











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