05─チョコレート工房
空はすでにオレンジ色に染まり、月が隅々からゆっくりと昇り始めていた。
ついにタンプス大通りに到着し、あの眩しい金色の光が徐々に消えていった。
今は午後5時ごろだろうか。
遠くに見える巨大なSWEETの看板人形が、紫がかった赤の夕焼けに映えてひときわ目立っている。
ここからでも彼が笑顔で手を振っているのが見える。
心の中で期待が高まり、興奮して思わず微笑んでしまい、風球をジェットモードに切り替え、速度が三倍に増した。
複雑に入り組んだピグト古びた小路を抜ける。この小道を通り抜けるには一流の操縦技術が必要で、さもなければ顔をぶつけるかもしれない。
「イラン~久しぶりだね。」
優しい声が、すれ違いざまの私に呼びかけた。
「マリナ婆さん!」
この温かく親しみのある声に、すぐにジェットモードをローミングモードに切り替え、その声の主が立っている場所に引き返した。
白髪をたたえ、60歳を過ぎた女性が緑色のエプロンを身に着け、微笑みを浮かべて、「ラマヤティチョコレート工房」と書かれた淡紫色の看板の下に立っていた。
「お久しぶりです、マリナ婆さん!」
マリナ婆さんは微笑みながら私の頭を撫でて言った。「ふふ~イラン、相変わらず礼儀正しい子だね、ふふ~」
「ここに焼きたてのラマヤティチョコレートがあるよ、持っていきなさい~」
「ありがとうございます、マリナ婆さん!」
婆さんはビグトラス島で有名なチョコレート職人で、遠古学院はよく婆さんに最高級のラマヤティチョコレートを頼んで学院に届けてもらい、島に訪れる貴賓や貴族たちをもてなしている。
私とミドは機会があると、倉庫に忍び込んでチョコレートを盗み食いし、学院の先生たちによく叱られたものだ。
婆さんは私たちがチョコレートが大好きだと知っていたので、いつも多めに用意してくれていた。そして、婆さんのおかげで、私たちのやんちゃな性格も少しは直った…。
私は嬉しそうに婆さんに手を振り、婆さんは笑顔でうなずき、手を腰に当ててゆっくりと工房の中へと戻っていった。
再び風球を使い、表示されている残り回数は7回だった。
港に近づくにつれ、湿った風が吹きつけてきた。傾斜していた狭い道も、次第に平坦で広々としたものになっていった。
目の前には巨大なクルーズ船が見え、その船体にはSWEETの看板人形が描かれている。どうやらSWEETは広告にかなり力を入れているようで、それが世界一のスイーツ店となった理由も納得できる。各国に7654店舗もあることから、その実力と影響力がいかに強いかがわかる。
風球が最後の環線に触れたとき、浮力が明らかに弱まり、終わりが近いことを感じた。