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両隣の幼馴染が交代で家に来る  作者: みらいつりびと


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灯1 好都合

 3月27日、日曜日のこと。

 ふゆっちのお母さんがうちに来た。

 彼の母親とうちのお母さんとは手芸友だちで、仲がいい。

 ふゆっちのお父さんは4月1日からタイで働くことになったそうだ。夫婦一緒にバンコクへ行くらしい。

 2年以上の海外暮らしになる予定で、その間、ふゆっちは隣の家でひとりで暮らすことになるという。

 お母さんたちはゆっくりとお茶を飲みながら、寂しくなるわねえとか話している。

 ふゆっちのお母さんはケーキを買ってきてくれて、あたしもご相伴にあずかっている。


「灯ちゃん、お願いがあるんだけど、聞いてくれないかしら」とふゆっちのお母さんがあたしに言った。

 あたしはガトーショコラを食べ、紅茶を飲んでいた。食べながら顔をおばさんに向けた。

「あい。なんでふか」

 口の中にケーキが入っていたので、変な発音になってしまった。

「うちの冬樹のことなんだけど」

 冬樹という言葉に、胸が高鳴った。


 ふゆっちはあたしのヒーローで、大好きだ。

 あたしの命を助けてくれた人で、穏やかでやさしい性格で、その上顔もいい。

 最高の男の子で、小学生時代は親友のようにつきあっていた。でも中学生になって、異性として強く意識しすぎて、なんとなく距離を置くようになってしまった。

 告白したいが、絶対に振られたくない。

 たまには話しかけてみるが、お互いに異性を意識する年齢になっていて、以前のようには話は弾まない。それにあたしはふゆっちと友だちづきあいをしたいわけではなく、恋人になりたいのだ。どんな感じで接すればいいのかよくわからない。

 好運にも同じ高校に通うことになった。在学中に恋を成就させたいと思っているのだが、なかなか距離を詰めることができないでいる。


「私たちがタイに住んでいる間、たまにでいいから、冬樹のようすを見てくれないかしら。ちゃんとごはんを食べているか確かめてほしいの。息子をひとりで置いていくのは本当に心配なんだけど、私はどうしても異国で働く夫を支えたいの。きっと冬樹は寂しがる。でも、灯ちゃんがそばにいてくれれば、そんな心配はなくなるわ。お願い、あの子のことを頼めるのは、灯ちゃんしかいないのよ」

 あたししかいない?

 任せてください、お母さん。

「私が面倒を見てあげてもいいんだけど」と私の母親が言った。黙ってて、お母さん。

「私としては、冬樹と灯ちゃんが親しくなって、森川家と天乃家の関係が深まると嬉しいのよねえ」

「私もその点は同感だわあ」

 母親同士の仲は異様にいい。

「灯ちゃん、冬樹の世話をしてくれないかなあ」

「はい。任されました」とあたしは答えた。

 これは好都合だ、と思った。

 おばさんから頼まれた。この機会に徹底的にふゆっちの世話をして、前のように仲よくなる。

 いや、小学生時代よりもっと深い仲になる。

「ふゆっちの面倒はあたしが見ます」

「ありがとう、灯ちゃん。お願いするわ。よかったあ、これで安心してタイへ行けるわ」


 そんななりゆきで、あたしは4月1日からふゆっちのお世話をすることになった。

 森川家に入り浸って、たっぷりと甘い時間を過ごそう。そして、彼の恋人になるんだ。

 そう思ったが、目論見ちがいがひとつあった。浅香空がふゆっちのお父さんから彼の世話を頼まれていたのだ。


 浅香も冬樹に命を助けられている。

 小3のとき、あたしとふゆっちと浅香は、自殺志願の男性に秘密基地で捕まって、手首をロープで縛られた。

 あたしは男を殺して逃げようと思った。後から考えると、それは無謀すぎた。両手首を縛られた小3の女子に大人の男の人が殺せるはずはない。

 自殺志願者は秘密基地で酔っ払って眠ってしまった。ふゆっちはそのとき、あたしと浅香の手首のロープを口を使ってほどいてくれた。彼のおかげで、あたしたちはを逃げることができた。

 男はあたしたちを道連れにしてやると言っていた。

 ふゆっちががんばらなければ、あたしたちは全員殺されていた。

 彼はあたしのヒーローだ。

 あのとき、あたしは生まれて初めての恋に落ちた。その後、彼への愛が消えたことはない。

 

 浅香もふゆっちを愛している。

 彼を目で追っている。

 バレバレなんだが、ふゆっちはびっくりするほど鈍感で、浅香みたいに綺麗な子が彼を好きになるはずがないと思っているようなのだ。

 ふゆっちは自己評価が低い。

 彼はやさしくて、成績がよくて、顔立ちも整っていて、静かで落ち着いている。ふゆっちを好きな女の子は実は多いのだが、彼は気づいていない。

 自分は地味で目立たず、とりえのない男だ、と常に思っているようだ。

 とんでもない。

 森川冬樹はモテる男の子だ。

 鈍感すぎるのが玉に瑕。

 あたしが彼を好きなことも、まったく気づいてくれない。


 家に毎日通って甘くお世話をすれば、さすがにあたしの気持ちに気づくだろう。

 そう目論んで4月1日に森川家へ行ったのだが、そこで浅香とかち合った。

 しかたなく話し合って、1日交代でふゆっちのお世話をすることになった。

 浅香には負けない。先に彼のハートを射抜いてやる。

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