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両隣の幼馴染が交代で家に来る  作者: みらいつりびと


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女の勘

 心臓がドクンと鳴り、顔がこわばった。

「机の引き出し……?」

「うん。本の整理をしているときも、冬樹はときどき見てた。いったいなにが入っているの?」

 そんなに見ていただろうか。あまり気にしないようにしようと思っていたのだが……。

「た、たいしたものは入っていないよ。ちょっとした個人的なものだよ」

「嘘!」

 空は激しく叫んだ。


「冬樹はあの鍵のかかる引き出しを異様に気にしているわ。よほどのものを入れているでしょう?」

「嫌だなあ。そんなたいそうなものじゃないよ……」

 俺は嘘を言うのが下手だ。ひたいから冷や汗が出た。

 あそこにはとんでもない秘密を隠している。

 空のお姉さんの裸の写真集。


「たいそうなものじゃないなら、教えてほしいわ」

「どうしてそんなに知りたいの? ただの俺の私物だよ」

「冬樹が懸命に隠そうとしているのがわかるから。わたしには絶対に見せまいとしているでしょう?」

 そんなことまで伝わってしまっているのか。

 女の勘は怖ろしい。

「別に空にだけ見せたくないわけじゃないよ……」

 俺の言葉は空虚で、弱々しかった。

「見せて!」

 彼女は俺の目を見て、強く迫ってきた。

 俺はプレッシャーに弱い。でも、あれだけは隠し通したい。


「じゃあ言うよ。あの引き出しにはエロ本が入っているんだ」

「エロ本……?」

「そう。俺だってエロ本の1冊や2冊は持っている。でも、そういうのは隠したい。わかってくれるよね?」

 空は目を見開き、しばらく黙り込んだ。

「本当にただのエロ本なの?」

「そうだよ……」


 俺は嘘をつくのが本当に下手だ。

 空の目を見て堂々と答えればいいのに、それができない。

 うつむいてしまった。


「もう1杯コーヒーが欲しいわ」と彼女は言った。

 俺はお湯を沸かし、ペーパーフィルターを使って、ゆっくりとコーヒーを淹れた。

 淹れながら落ち着こうとしたけれど、心臓はドクドクと高鳴ったままだった。


 食卓にコーヒーカップを置き、空とまた対面した。

 彼女はめずらしく角砂糖をひとつも入れず、ストレートで飲んだ。

 俺をじっと見つめていた。


「冬樹はなにか隠してる……」と彼女はつぶやいた。

 そんなこともわかっちゃうのか。

 俺の幼馴染、鋭すぎるだろう。

「なにか大切なことを隠してる……」


 コーヒーを飲みながら、空は俺の顔を凝視している。

 俺の表情は、まちがいなくこわばっている。

 冷や汗が流れている。

 たぶん蒼ざめている。

 心音が高く、空に聴こえないか心配だ。


「だめ。どうしても気になる。引き出しの中を見せて、冬樹!」

 空はあきらめず、さらに迫ってきた。

「男の秘密だよ。恥ずかしいものなんだよ。女の子には見せられないよ」


 ああ、どうして空にこんなことを言わなくてはならないのだろう。

 恥ずかしすぎる。

 いっそのこと、秘密を明かしてしまいたくなる。

 

「ごめんなさい……」

 彼女は暗い表情になって、うつむいた。

「冬樹の秘密を、隠したいことを、無理に見せてもらおうなんて、ひどいよね。わたし、どうかしてる……」


 胸が痛んだ。

 あかりとちゃんには秘密を開示したのに、空には隠そうとしている。

 ふたりとも大切な幼馴染なのに。


「悪かったわ。もう言わない。本当にごめんなさい。誰にだって、秘密のひとつやふたつあるわよね。それを無理にこじ開けてはいけない。わたし、冬樹にひどいことをしようとしたわ。反省しなきゃ……」

 空の声は震えていた。


 空のお姉さんのヌード写真集は、どうしても隠さなくてはならないものなのだろうか。

 もしかしたらお姉さんは、なんらかの問題を抱えて、あの撮影をしたのかもしれない。

 それを空が知ることで、姉妹で助け合うことができるかもしれない。

 俺がいくら隠したところで、ひょんなことから、家族は知ってしまうかもしれない。

 すでに知っている可能性だってある。 


「どうしても知りたい?」

 俺がそう言うと、空は口をぽかんと開けて、ぼんやりと俺を見た。

「俺が秘密にしていること、そんなにも知りたい?」

 しばらく呆然としてから、彼女はこくんとうなずいた。

「知りたい……あなたの秘密……」

「わかった。教えるよ」

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