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比較的最近更新した短編のまとめ場所

運び屋ジョシュア・グレイスの物語

作者: リィズ・ブランディシュカ




 ジョシュア・グレイスには、様々な才能が備わっている。

 その気になれば、世界を守る守護者にも、世界を混沌におとす破壊者にもなれるだろう。

 しかし、そんなジョシュアが選んだ将来の選択肢は、なぜか運び屋だった。


 ジョシュアは足を鍛えて、各地をまわって品物を届ける運び屋になる事にした。


 生活用品が必要な施設へ、食器や洗顔用品などを届け、


 医療器具が必要な施設へ、消毒液や包帯を届け、


 戦いの道具が必要な国へは、武器や防具を届けた。


 しかし、そんなジョシュアでも、運ばないものがあった。


 それは


「人間や動物はこちらではとりあつかっていませんので。ご遠慮ください」


 生きた存在だった。


 どんな盗賊や権力者に頼まれても、ジョシュアはそれらの物を運ぼうとはしなかった。


 力で脅される事があったとしても。






 ジョシュアは子供の時、奴隷として親から売られた子供だった。


 奴隷商の元、劣悪な環境の中で生活していた。


 しかし、そんなジョシュアを助けるものがいた。


 それは勇者と魔王だった。


「もう大丈夫だ。君達は今日から奴隷として生活せずにすむんだよ」

「我等の目の届く範囲で暴虐をつくすとは、こやつら命が惜しくないようだの」


 勇者は世界を救う存在で、魔王は世界の平穏を脅かす存在。


 そんな両者が一緒にいる事に疑問は感じたが、ジョシュアは二人に深く感謝していた。


 だから、二人の後をついてまわり、彼等の旅に何年か同行していた期間があった。


 ジョシュアは二人の弟子として様々な力をつけた。


 その気になれば、勇者の後も魔王の後も継ぐ事ができただろう。


 しかし、師匠である二人はそれを望まなかった。


「俺達の進む道はいばらの道だ。だから将来の道は、よく考えなさい」

「互いを力で滅ぼし合うだけの立場はむなしさしかないだろう。年端もゆかぬ子供に、そんな人生を歩ませるわけにはいかぬ」


 勇者と魔王は、互いを滅ぼし合う戦いに疑問を持っていたため、手を組んでいた。


 そして、自分達の代で和平交渉をとりつけ、戦を終わらせようと考えていたのだった。


 しかし、それはいばらの道。


 彼等はその厳しい道に、子供を引きずり込もうとは考えなかった。


 ジョシュアにとてつもない才能があったとしても。


「その力は本当にやりたい事の為に使いなさい。いいね?」

「やるべき事ではなく、やりたい事を探すのだぞ」






 やがて様々な事があって、茨の道に思われた和平はなされ、世界は平和になった。


 小さないざこざは起きつつも、数十年ほどで世界から、戦の影響が徐々に消えていくだろうと思われていた。


 だからジョシュアは、そんな平和になっていく世界で、立ち上がり、生きていく者達の手助けをする事にしたのだ。


 もう誰かが人を売ったりする事がないように、人を売るほど追い詰められたりしないように。


 物を売る事で、平和に貢献しようと考えた。







 だから運び屋としてジョシュアは毎日、各地を渡り歩く。


 様々な才能を持っていたとしても、


 誰かを守らなければならないせっぱつまった世界ではなくなったから、


 誰かを傷つけなければならないほど余裕のない世界ではなくなったから、


 必要なものを必要なところに届けるために、才能を使う。




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