表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

抑えられないチカラ

どれほど走り、歩いただろう。

気づけば人通りの少ないような裏道を一人歩いていた。

脇に抱えていたヘルメットを両手で持ち向きを変える。

ヘルメットの正面とハヤカワの顔が向き合う。

ハヤカワが震えながらいう。

「なぜ俺は同僚を殺してなお、平気で息をしているんだ。」

あまりの震えにヘルメットを落とす。

ヘルメットが地面に当たるゴツッ。という音と共にハヤカワも膝から崩れ落ちる。

頭を抱え、顔をくしゃくしゃにしながら地面に俯く。

その時だった。

「やめ、やめて。助けて。誰か。」

少年のような声が大きな声で助けを求めている。

ハヤカワはすぐに顔を上げ、声のする方を確認する。

脇に落ちていたヘルメットを素早く拾い上げ、流れるように声のする方へ駆けて行く。

少し走ってすぐのT字路を曲がると、そこには防衛隊の装甲機動車が止まっていた。

しかしそれよりも驚きの光景が目に入ってきた。

カメラを首からかけている中学生ほどの少年を隊員5名ほどが無理やりに車両に連れ込もうとしている。

必死に抵抗する少年。ハヤカワは何かに勘付く。

すぐに駆け寄り、一人の隊員の腕をものすごい握力でぐっと掴み上げる。

驚いた隊員たちの隙を突き、もう片方の腕で少年を抱きこむ。

「痛い。痛い。」

ハヤカワの力の入った握力に痛がる少年。

「すまない。自分でも力の加減がわからないんだ。」

そう言って優しく少年を下すとすぐに自分より後方に立たせ、庇うように腕を横にする。

隊員達がすぐに小銃をハヤカワの方へ向ける。

「お前たちは防衛隊の隊員だな。この少年に何の用があって誘拐まがいの事をするんだ。」

ハヤカワが隊員達をまっすぐに睨みつけ、問いかける。

「いいからその少年を我々に引き渡せ。公務の妨害になるぞ。」

5人の隊員がさらに強く小銃を握り、ハヤカワの方へ向ける。

ハヤカワがニヤリと微笑む。

「日本の未来を担う宝ともある少年の誘拐が、公務か。」

1人の隊員がハヤカワの抱えるヘルメットをちらりと見る。

「隊長、あのヘルメットは」

「お前、防衛隊の関係者か。」

ハヤカワがスッとヘルメットをかぶり、隊員の方へゆっくりと歩き出す。

「まさかこいつ、例の」

「なんだと」

驚いたような声で隊長が言う。

「こいつには射殺命令が出ています。すぐに」

その瞬間、ハヤカワが空中へと飛び上がる。

「間違いない」

そういう間に、ハヤカワは空中から隊員の一名の頭部を地面に叩きつける。

見事に鮮血と、頭部を構築するソレらが付近に飛び散る。

「殺せ」

隊長が大きな声で隊員達へ指示を出す。

しかしサイボーグメンテナンスで得た肉体装甲と着用している防護スーツは弾丸を通さなかった。

一人の隊員が車の裏側へ回りこむ。扉を開き、無線通信を行う。

「非常。非常。非常。世田谷区巡視中に被験者5号と遭遇、現在交戦中。近くにいる少年は」

ハヤカワはしゃがんだまま車両の方を確認し、車両を飛び越え裏側へ回りこみ、通信中の隊員の首をつかんで車内から引きずり出す。

地面へ倒れこんだ隊員の腹部を何度も踏み込む。

すぐ後方から射撃をしていた隊員を、流れるように蹴り飛ばす。

隊員は壁に叩きつけられ、動かなくなる。

ハヤカワはふと少年の方を振り向く。

パシャッ。

少年はカメラを向けていた。

少年はカメラを下すとハヤカワをじっと見つめる。

その瞬間ハヤカワは自分が再び同僚を殺害していることに気づき我に返る。

改めて正面を向き残る二人の隊員の方をそれぞれ繰り返し睨む。

隊員も恐怖からすでに戦意を喪失していた。

それを見たハヤカワは少年の元へ駆け寄り、

「逃げよう。君の身が危ない。」

そう声をかける。

少年はコクリと頷き、ハヤカワに抱き上げられる。

「うっ」

と声の漏れる少年を見てハヤカワは手の力を抜き切る。

そしてハヤカワは少年を抱いたまま、再び走り出すのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ