公爵家第2話
重厚なテーブルに軽快に積まれていく書類は、ゲームの世界ならではの日本語を使用していた。
「閣下、こちらの書類にサインをお願いいたします」
金髪赤目の彼女に促されるまま、書類に目を通す。
整理をつけることが出来ないまま、通常なされると思われる業務を始めていく。現代と同じように紙でできた書類は、水分の吸着が弱く、手汗がにじむことはなかった。
書類のサイン欄は、空欄になっているため、どういったサインだったのか、はたまた、自分がどのような名前なのかさえ知り得ることはできない。
「これは、どういった書類ですか、あ、いや、だ?」
中途半端に敬語を残したために、土盛りが残ってしまった山田に、怪訝な視線を向ける金髪赤紙の女性。
「いかがいたしましたか?」
彼女は、山田の挙動不審な姿を首を傾げつつ見ていた。
「あ、いや、前の書類はどんなだったかと思って、な、なははは」
から笑いを浮かべた山田は、独り言を言うかのように、ごまかし再び書類を見つめた。
「申し訳ございません。先日ご挨拶した通り、本日が初の仕事でございますので、明確にご指示を頂きたく思います」
女性は、山田に頭を下げ、初出勤日にて戸惑っていることを明かしてくれた。
山田は、女性の告白に驚いていた。
既に業務を始める段階で、滞りなく物事を進めているように見えたためだ。
職務に忠実で、慣れた様子で書類にサインを求めるなどの必須な部分やチェックするべき場所などは非常に的を得てるように見えたからだ。
「そ、そうだったか。立て続けに申し訳ない。いや、前の書類を少し見たくてね」
女性は頷くと、書類を取りに部屋を出た。
一人になった山田は、書類に目を通しつつ、世界がどのようななっているのか気になっていた。
落ち着いて深呼吸をすれば、この場所に何か、見えない力があふれていることが感じられた。開いた窓から流れる空気は澄んでいるように感じるが、暖かい風のためか、少しばかり汗をかく。
窓の外を眺めてみると、はるか向こうに山脈がうかがえた。晴れた空の中、山脈に薄く雲がかかり、陽気の良さを感じていた。
山田は、ため息を吐いて、書類に目をやった。
「そういえば、さっきの女性、なんて名前だったんだろう」




