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天使から女神になった愛しい人と共に

軽いお茶会が終わり、そのまま自室でお昼ご飯になった。

料理を一通り食べ終わると、ずっと気になっていたことを聞くことにした。

グレーテルの年齢のことを聞いていなかったのだ。

ハティの孫と同じくらいとは言ったが、孫の年齢は確か十三歳だったはずだ。

それにしてはグレーテルが幼すぎる気がして、ずっと気になっていた。


「グレーテル、今まで聞きそびれていたけど……今は年齢いくつ?」

「え……?十歳だよ……?」

「そうか、十歳……十歳なのか?!」


俺も驚いたけど、グレーテルも驚いていた。

それは確かに幼いはずだ。十歳なら、この小ささも納得がいく。

もうひとつは絵本を知らず、読み書きが出来ないことについても少し前に分かったことがある。

隠れ里に住んでいると言われていたフェンリル一族なら読み書きが出来ない者がいてもおかしくない。

充分な教育が行き届いているわけがないのだ。


「ごめん、グレーテル……てっきり十三くらいかと……」

「う、ううん。わたしも、いうのがおそくなったから……」

「ふふ……お互い様かな。落ち着いたら、僕と一緒に探索しようか。傍に居た方が安心するだろう?」

「うん、おにーちゃんといっしょ……!」


つい先ほどまで怖い目にあったのに、好奇心旺盛で可愛い。

自分自身がフェンリルの生まれ変わりであることに、他者に対してとても怯えていたのだが意外と受け入れられて安心した表情だ。

こんな緩やかな日々が続けばいいな、と思いながらグレーテルの教育をしつつ領主としての仕事に精を出した。


時は流れ二年が経過した。

すくすく成長したグレーテルは、十二歳になった。

来た当初は身体を縮こませてボロボロだった少女は、ふわふわで愛らしい姿になっている。

使用人のみならず、領民たちとも仲良くなったようで毎日笑顔だ。

領主としての仕事も安定して理解できるようになり、新米から中堅領主へと変わった俺はグレーテルのことで頭を悩ませていた。


「グレーテルの愛らしさに気づかれてしまった……」

「何を今更おっしゃいますか、リーガル様」

「あんなに可愛いグレーテルなんだぞ?他の独身男が黙っているわけがないだろう?!」

「確かに愛らしいとは思いますが、それは妹などに向ける家族愛に留まるかと思います」

「男は時としてケダモノになるんだ。いつ手籠めにされてもおかしくないだろ」

「リーガル様、考えすぎです」


執事長からツッコミと宥めを受けながら、仕事を行う手は止めない。

隣にいる副官たちからは「よくしゃべりながら仕事ができるなぁ……」とたまに関心されていたりする。

仕事をしないと良くないことを考えてしまうから、手を止めないだけなんだ。すごいわけじゃない。

その日の仕事を終わらせると、酷く疲弊していたせいで湯殿には入らず寝間着に着替えてすぐにベッドに入った。

あっという間に夢の中へと落ちていく。


(お兄ちゃん……好き……)


グレーテルの声が聞こえる。十二歳になったばかりのグレーテルが、俺の素肌に触れてくる。

唇、首筋、胸部、腹部……小さな吐息が何かに反応した。

少女は初めて見るであろう男性の性器に触れている。小さな手で揉まれ、だんだん気持ち良くなってくる。

ダメだ。グレーテル、それ以上はやめてくれ。

限界に達し、そのまま射精した瞬間に目を覚ました。

ブランケットをはぎ取り、下腹部を見て大きくため息を吐いた。

まさかこの年齢になって夢精してしまうとは。まだ朝日が昇り始めたばかりではあるが、下着を取り換えようと起きた時。


「ん……お兄ちゃん……?」

「えっ、あ……ぐ、グレーテル?!」


一年前から別々の部屋で眠るようになっていたグレーテルが、何故か俺の服を掴んでいる。

真横にいるとは思わず、夢精した相手であるグレーテルを直視できない。

罪悪感と背徳感で頭がおかしくなりそうだ。


「どうしたの……?怖い夢、見た……?」

「い、いや、そういうわけじゃないんだ。大丈夫だよ……着替えてもいいかな?」

「うん。はふ……眠いからもうちょっと寝る……」


とても眠かったようで、あっさりと服から手を放してブランケットを羽織り直している。

そもそもどうしてここにグレーテルがいるのか、と聞きたいのだが今は着替えたい。主に下半身が危険だから。

ベッドを背にして、寝間着を脱ぐと下着も洗濯物用の籠に入れてしまう。

まだ濡れている部分を拭いたいところだが、後ろにグレーテルがいるのでできそうもない。

新しい下着を木製の引き出しから取り出して履いてしまうと、後ろから小さな手が触れた。


「え、あ。グレーテル?眠いんじゃないのか?」

「ん……お兄ちゃんの身体、傷がいっぱい……」


傷がいっぱいと聞いて、なんだったかなと少し考える。よく考えると、少し前までは騎士団の隊長をやっていたんだった。

領主の感覚が染みつきすぎているから忘れていた。


「あぁ……僕は三年前までブライト王国の騎士団で隊長をしていたんだよ。戦場には多く出ていたからその名残かな」

「痛く、ないの……?」

「痛みはないよ。完治しきれなかったのが、傷跡で残っているだけだ……しっ……?!」


背中の中心に小さい舌が這う感覚がする。

後ろから聞こえるぴちゃぴちゃ、という舐める音と時折吐かれる息遣いが、情事のことを感じさせる。


「ぐ、グレーテル?!痛くないよ、痛くないから!」

「んっ……でも、舐めた、方が……いいって……教わった、っん……から……」


夢精で見た光景と背後から感じるいやらしい情景が、下半身に熱が集中してくる。

いけない。これ以上は危険すぎる。間違いなくグレーテルの合意なしに犯してしまう。

半泣きになりながら振り返って、グレーテルの肩を押して止める。


「……ごめんね、グレーテル!お兄ちゃんの前に男だから……その、お願いだから無垢のままでいて……」

「え?え?あ、うん……ごめんなさい?」


なんだかもう情けない。言いながら、床に座り込んでしまった。

実の妹にはなんとも思わないのに、どうしてグレーテルに対しては性愛が沸いてしまうのだろう。

グレーテルに頭を撫でて貰い、しばらくしてようやく持ち直した俺は鍛練用の服に着替えると、

そのまま館の外を走り込み始めた。

鍛練から戻ってきた後に、グレーテルから嫌われたのかと困惑していたがそれは否定しておいた。

嫌うどころかその先の関係まで求めているなんて、どうやっても説明できない。

朝食が終わり、そのまま執務室へと向かったのは良かったが大きなため息が出る。


「……リーガル様、随分と戸惑っておられますね」

「グレーテルのことをひとりの女性として見るようになってから、理性がいつ崩壊してもおかしくない……」

「もういっそご結婚されてはいかがですか?」

「グレーテルは適正年齢になっていない。それに、僕が結婚したいと思ってもグレーテルはそうじゃない可能性があるだろう」

「おや、意外と堅実ですね。では結婚しなくても良いと?」

「結婚したいに決まっている!でも、あの天使を穢すのは、罪悪感が……」

「拗れていますね」


悶々と悩みながらも、俺はいつも通り執務をこなしていく。

俺がそんな風に悩んでいると、副官が扉の方に目線を向けていることに気が付かなかった。

どうやら、グレーテルがこの話を聞いていたらしい。

話を聞いたグレーテルは、ハティのところへ行き結婚できる年齢はいくつか聞いたようだ。

それぞれの思惑は、時の流れと共に進んでいく。


さらに二年が経過し、基礎的な学問を履修したグレーテルは俺も行ったことのあるルーセント中立国にある学園へと入学することになった。

十四歳での入学は騎士団長アレックスの娘であるセレネと同じ飛び級になるらしい。

セレネも頭がいい子なんだろうけど、グレーテルもすごい。

入学前に一通りの準備が終わったらしいグレーテルが、久しぶりに俺の部屋を訪ねてきた。

いつも通りの寝間着姿で迎えると、急に抱き着かれた。


「グレーテル?どうした、甘えたいのか?」

「……ううん、お兄ちゃんをいっぱい感じておきたいの」

「そんな今生の別れでもないのに……甘えん坊なところは変わらないな」


大きくなったけど、俺より小柄なその頭を撫でていると勢いよく顔を上げられた。


「お兄ちゃん、ううん、リーガル様!私が十七歳になったら、結婚して下さい!」

「ん……?えっと……結婚……?」

「リーガル様だって、私と結婚したいと思っているんでしょ?!なら、十七歳になったら結婚して!」


確かに結婚したいとは思っている。けれど、相手は兄と慕ってきた相手のはずだ。

いつもなら冷静なのに、こういう時だけ酷く動揺してしまう。混乱してしまう気持ちを必死に宥めながら、一呼吸置いて伝える。


「……条件がある。学園を卒業しても、結婚してもいいと思っているのなら僕を探してくれるかな?」

「卒業する頃には十七歳だもの……わかった!覚悟していてよね!」


なんだろうな。グレーテルの台詞が悪役の捨て台詞みたいに聞こえた気がした。

そんな風に啖呵を切って、館を出て学園へとグレーテルは旅立っていった。


それから三年後はあっという間だった。

もう二十七歳になった俺は、亡くなった父親の墓前に花を添えていた。

そこに歪みなく真っ直ぐにこちらに進む足音が聞こえてくる。


「リーガル様、ただいま戻りました」

「……おかえり、グレーテル」

「卒業したので、結婚してくれますよね?」

「……プロポーズするのは男からだと言われてきたけど……取られちゃったね。もちろん、愛しいグレーテル」


立派な淑女となったグレーテルは、学生服のまま俺に抱き着く。

父親の墓前で、一線を越えた俺たちは深くキスをする。

それから数か月後には、結婚式を挙げて無事に初夜も終えることができた。

執事長もメイド長も引退をする頃には、子どもに恵まれフィリアいちの年の差おしどり夫婦として有名になるのであった。

色々と書ききれていない部分がありますがこれで完結となります。

途中からどういった経緯があるのか、とか初夜とかどうなったのかに関しては

大改修版(R18)「本音を隠した領主は狼少女が愛おしい」の方で全て語り尽くす予定、です。

肝心なフェンリルどうなったんや、も抜けているのでね……ごめんなワンワン。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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