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領主好みの可愛い少女

もうすぐ昼の時間になる頃だったから、これから俺は少しだけ手が空いている。

グレーテルの服装はボロボロで汚れているが、怪我はしていないようだったから綺麗にしなくてはいけない。

屈んでから、抱き上げると本当に軽い。


「母様、湯殿へ行ってきます。グレーテルの汚れを落としてやらないと」

「え?!お、女の子なんだよ?大丈夫なの?」

「何を焦る必要があるんですか……昔は何かとカトレアの面倒を見ていたのは、僕ですが?」

「う、うーん、そうだけどさ……まぁ、いいか。ウィル、カトレアの部屋から子ども用のワンピースと下着を持ってきてくれる?」

「はい、では湯殿にお持ちいたします」


二人に断りを入れた後、俺は真っ直ぐに湯殿へと向かう。

屋敷の主人たち用に作られた小さめの場所だ。浴槽も浅いから、小さい子でも溺れることがない。

脱衣所で一旦グレーテルを下ろすと、上着を脱ぎ手袋を外す。その辺りにあった籠に放り込んだ後、屈んでグレーテルの目を見る。

少女、とは言っても恥じらいがあるようで困惑している。


「グレーテル、ばんざいしてごらん」

「……や……」

「身体を綺麗にするだけだよ。その洋服は汚れているから、着替えないといけないんだ」

「う……ん……」


グレーテルは渋々両腕を上にあげてくれた。

そのまま上から着ていたボロボロのワンピースを脱がせて、下着も脱がせる。

あわあわしていたが、ニッコリ笑って褒めておく。


「よし、いい子だ。さて、綺麗になろうな」


下着を脱がせる時に抱き上げていたので、そのまま抱っこをして湯殿へと入る。

お湯が張ってあるところの真横に、身体を洗うスペースがある。

専用の石鹸を手に取り、備え付けられているタオルに擦りつけて泡立ててグレーテルの身体を洗っていく。

時々くずぐったそうにしているが、大人しくしているのは偉い。

身体を洗い終えると、お湯を掬って流す。それから髪も汚れていたので、専用の洗浄液を使って洗っていく。


「あわあわ……」

「あぁ、あわあわだな。痒いところはないか?」

「……ない……」

「そうか、さて。頭のあわあわを流すぞ、目を閉じていてくれ」


ぎゅ、と強く目を瞑るところを確認した後、ざば、とお湯を流す。

二・三回同じように流すと、綺麗な銀髪だとわかった。てっきり黒髪だと思っていた。

一通り綺麗にし終えたので、また抱きあげて湯殿へとグレーテルを下ろす。

肩までちゃんと入れている。本当に偉い子だ。


「グレーテルは偉いな。小さい頃のカトレアに見習わせたいくらいだ」

「……かと、れあ……?」

「あぁ、僕の妹でね。今はルーセント中立国で補佐官をしているんだよ」

「……おにーちゃ、なまえ……」

「あ、ごめんごめん。僕の名前を教えてなかったな。リーガルって言うんだよ」

「りーが、る……にーちゃ……」

「言い慣れないなら、お兄ちゃんでもにーにでも、自由に呼んでくれ。今日からグレーテルは、僕らの家族だからね」


優しく頭を撫でると、小さく頷いてくれた。

心身共にズタボロだったこの子が、少しずつ癒されていくといいなと願っている。

ある程度入っていると、グレーテルがあつい、と言い出したのですぐに抱き上げて湯殿を後にする。

用意されいたバスタオルを手に取り、手早くグレーテルを拭いていく。

髪は長いようだから、頭を乾かすために使うタオルを手に取って軽く拭いた後にそのまま頭に被せる。

新しい下着とワンピースを着せて、綺麗になったと思って改めて見た時、心臓が飛び跳ねた。


(か、可愛い……!俺のすごい好みのタイプの可愛い子だった……!)


まだ少し困った顔はしているが、子猫のような丸く蜂蜜色の瞳。

少し長すぎるくらいの銀髪のロングヘア。

肌は白く、少女にしては痩せた体格。それに包まれる白いワンピースはとても最適だ。

俺が硬直したのを心配するように、手を取ってスリスリしている。可愛い。可愛いにも程がある。

なるほど、母親が心配していたのってこれのことか。俺好みの子だから理性は持つのかと心配されていたのか。

大丈夫だ。まだ理性は頑張ってくれている。まだ、大丈夫だ。


「おにーちゃん……」

「え、あ!だ、大丈夫だよ!ごめんね、可愛すぎて驚いただけだから」

「……そう、なの……?」

「うん、そうだよ。グレーテルはすごく可愛いよ」

「えへへ……」


ほんの少しだけ、ふにゃと笑う。天使かな。穢れなき大天使だろう、これは。

いかん、理性をフル稼働させていないと鼻血が出てきそうだ。危なすぎるな、この兄は。

脳内が大騒ぎする中、俺はグレーテルを抱っこしてカトレアの部屋へと向かう。

今は本人がこちらに帰って来れない状況だから、使わせてもらおう。このことは、カトレアにも連絡しておくつもりだ。

ベッドに降ろすと、部屋にメイド長が来てくれた。


「あらあら、随分と可愛らしい子が来ましたねぇ……初めまして、私はメイド長のハティーチェと言います。ハティばーば、とでも呼んで下さいな」

「ハティ……その、グレーテルを孫か何かと勘違いしていないか……?」

「あらやだわ、この子くらいの孫はいるんですよ?もう充分、ばぁばですから」

「あー……あの双子の執事見習いのことか……グレーテル、ハティは執事長のウィルヘルムの奥さんなんだ。そして、孫はグレーテルと同じくらいなんだよ」


優しそうで、のんびりとした性格のはフィリアの人間である典型的なタイプだ。

グレーテルは次から次へと新しい人が現れて戸惑っているが、ハティのことは興味深々で見つめている。

もう少し話していたかったが、ハティから部屋を追い出されてしまった。なんだか色々と申し訳ない。

執務室へと向かおうとした時、執事長に見つかって自室に戻された。

服が濡れているから、着替えて来いと。そういえばそうだった。

自室に戻り、替えの服に着替えると改めて執務室へと戻って、執務を再開させた。

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