第3話 消極少女の日常
「だだいま……」
家に帰り扉を開けても誰もいないと思っていた、両親は働いている時間だったのだからいるわけが無いと。
「今までどこに行っていたのよ!!あんたがやらなきゃ行けないこと終わってないじゃない!!この役立たず!!」
「……お母さん、今日仕事じゃ」
「早めに終わったのよ!それより今までどこほっつき歩いてたのよ!はやくやりなさい!」
「……はい」
鬼のように起こる母を横目に、クロエは料理や洗濯を黙々とやっていく。本来であるならもうやらなくていいと思ったものなのに、あのソルという男のせいでやることになってしまったと思いながら……
翌朝ー
「それじゃあ私は仕事に行くけど、あんたも学校から帰ったら家の事ちゃんとやりなさいよ。いじめに負けるなんて心が弱いからよ。ちゃんと行くのよ。」
「…………」
この人は本当に自分のことを何一つ理解しようとしてくれないんだと、その時改めて実感した。
このまま行かなければまた怒られるのだろうと、行きたくないと叫ぶ心を隠して思い足取りで学校へと向かった。
しばらく歩き、学校について自分の靴箱を開けてみた。上履きを履いて教室へと向かう。
「……クスクス」
「クロエまだ学校来れるんだー」
「キモイからこっち来んなよ」
「うわぁ、俺こいつの私物触っちゃった!きったねぇ、クロエ菌着いちまったわ!」
「え、ちょっ、お前僕になすりつけんなよ。きたないなぁ、女子なら同性だろ」
「ちょっと、こいつと一緒にしないでよ!」
また始まった……いつもこれだ。もう慣れてしまった光景を眺めながら静かに席についた。
本でも読もうと、机の中に入れているものに手を伸ばしたがない。ちゃんと入れて置いたはずなのに、キョロキョロと教室内を見渡ししばらくしてから見つけることが出来た。
ボロボロになってもはや読むことは出来ないだろう状態になっているそれを拾い上げようとすると
「うわぁ、あいつゴミ拾ってる」
「きったねぇ。」
コソコソと陰口を言う奴らを無視して、そのまま席をたちトイレに逃げ込み個室の鍵を閉めて嗚咽をこらえる。いつもの事だから大丈夫だと言い聞かせながら、しばらくして教室に戻って机の上を見ると壊された自分のペンがそこにあった。
「どうしたんだよクロエ。早く席つけよ。」
既に教壇に立っていた教師は、それを知っているのに見て見ぬふりをして、早く席につくことを促す。
このまま立ち尽くしたところで、自分が怒られるだけだと知っているので席について授業を受ける。
授業の時くらいは何もされないと、今まで安全だったから大丈夫と言い聞かせながら……
その認識は間違っていたことに気づいたのはしばらくしてからだった。
どこから飛んできているかは分からないが、紙を丸めたものが背中や腕に当たっている感覚がする。教師がみていない隙をみて、何人かに投げられているようだ。
ひとつを広げたところで、どうせ書かれているのはいいことでは無い。
そう分かっているのに、どうしても気になってしまい机の上に載っていた紙を手に取り広げてしまった。
【さっさと死ねよ】
期待なんてするんじゃなかった……誰かに言われなくてもそうするつもりだった。昨日あの男とさえ会わなければ、今頃は解放されていたのに。
もう会うことは無いだろうが……
その後も上履きを捨てられたり、教科書を破られたりするのを耐え忍びながら学校が終わるのを待ち、終わったと同時に外へでて誰とも目が合わぬように下を向きながら歩き続けていた。
「おぉ!やっと学校終わったの!待ちくたびれたよ!早く行こ!」
その声を誰か判断する前に手を引かれていた。




