表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ビールジョッキ片手に笑顔ふりまく水着美女のポスターについて

作者: 京屋 月々

 令和になったというのに、私のバイト先の居酒屋は昭和の雰囲気が色濃く残っている。

 高架下の立地にひび割れたコンクリートの壁、きちんと掃除しているのに取れない古い油の匂い。天井近くに設置されたテレビからは野球中継が流れていて、一体これは誰が見ているんだ。


「お! 河原が打ったな!」


 あぁ、こういう人が見てるのか。


 家に近いからって理由だけで受けたバイト面接は、あっという間に合格し、面接の当日夜から「早速きてくれる?」と働き出した。

 今は私がいなければ、店が回らない状態になっている。


 毎日がバイトで忙殺ぼうさつされている日々。

 これは由々しき問題だ。

 私は小銭のためにバイト面接をうけたが、明確に夢がある。

 私は、こういった少々こ汚い居酒屋にありがちな、ビールジョッキ片手に笑顔をふりまくポスターのモデルになりたい。

 もちろん水着だ。体型に関してはダイエットすればなんとかなるだろう。


 しかし、夢を感じるのに近い場所とはいえるが、夢を叶えるのに適した場所とは思えない。


 小銭稼ぎもチリも積もればなんとやらで、それなりの額にはなった。

 夢を叶えるために次のステップにいこう。


「店長、わたし、バイトやめます」


 それからの店長の接待上司プレイはすごかった。


「君のおかげで店は回ってる!」

「時給50円アップ!」

「最近、すごく可愛くなったよね! 看板娘!」


 私はこういったわかりやすい物言いで浮かれるタイプなのである。

 いかに、承認欲求が満たされない人生を歩んできたかを思い悲しくなる。


 そして8年、この居酒屋で働き続けた。

 仕事が終われば、朝方までやってる別の居酒屋でお酒を飲み、天ぷらや唐揚げを食べた。

 そのライフスタイルがもたらしたものは、最早、ビールジョッキのポスターのモデルにはなれない、醜い姿だった。

 とっくの昔に諦めているから平気ですけどね。

 私はこのライフスタイルのまま生きていく。

 その時、店長が血相を変えてお店に入ってきた。


「た、たいへんなんだ! ビールジョッキのポスターのオファーがきた……!」


 はぁ……。誰にですか……。


「君だよ君! よかったね! 夢だったんでしょ!? すごいよ!」


 え……。

 だって、もう、こんなぷよぷよの体してるし、どこに何の需要がある起用なの。

 もしくはドッキリか。

 諦めて捨て去った夢だ。面倒な気持ちのたかぶりを起こすのは、本当に罪なことだ。


「ほら! 見てこれ! 「横綱 北の湖」の隣でビールを飲む健康ぽっちゃり美女のポスター企画だって!」


 なるほどね。

 私は失笑し、店長に伝えた。


「お受けします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ