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異世界に探偵は必要ですか?  作者: アイザック・ゴーマ
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2-4:魔捜研Ⅳ

   2-4:魔捜研Ⅳ




 まずいと凹太郎は思った。

 ミゴの質問に対して即座に否定することができなかった。

 凹太郎はそれまでの会話と異世界という特異な環境のせいで心理的な防御をおろそかにしていた。

 ミゴはその様子を見て、



「いやね、私が仮に異世界に転移した場合、そんなすぐに納得できるものではない。

 圧倒的な非現実を前にして、ああ、ここは異世界なんだ……とはあまりならない。

 それは異世界に転移してない場合にも言えます。

 例えば突然手が一本増えて、自分は何か別の生き物になってしまったんだとすぐにはならない。

 その前に疑う。

 夢か。

 幻覚か。

 それらが違うとして混乱し、パニックになり、やっとで落ち着いて、考え始める……何故かと。

 オータロはそれが少し一足飛びで違和感がある。

 ……物分かりが良すぎる。

 私の見立てだとオータロは頭は悪いほうではないが良いほうでもないだろう。

 ならば、異世界という違和感に対して何かしらとっかかりというか、親和させうるような何かがあると私は考えた。

 どうでしょうか?」



 真っすぐにミゴは自分の推察を述べた。

 凹太郎は考えた。

 教えるべきか、せざるべきか。

 その【能力ちから】のことを誰にも教えたことはなかった。

 元の世界でも……家族にも、信頼できる仲間にもだ。

 胡麻化すことは簡単だ。

 凹太郎の世界ではそんな異世界の物語が氾濫していて、普通より理解しやすいとでも答えればよい。

 もちろん、このミゴはそんなことを信じないだろう。

 即座に否定しなかった時点で、ミゴはほのかな確信を得た気配がある。

 それでも、適当な理由でその場をなんとなく誤魔化すことはできる。

 能力を使わない限りはあるもないも立証できないのだから。

 1秒にも満たない沈黙。

 ミゴが腕を大きく開いて、



「いや!

 もうしわけない。

 少し踏み込みすぎましたね。

 私としたことが親睦を深めるつもりが警戒心を招いてしまった。

 異世界からの訪問者と思しき相手に珍しく興奮してしまいまして。

 この話はまた今度続きをしましょう」



 凹太郎は、どんな相手でも疑う。

 人を信用しないわけではなく、信用している相手でも疑う。

 自分の考えうる全ての可能性を排除しないのである。

 今でも86%くらいは己が異世界にいるとしつつも、14%くらいは他の可能性があるだろう余地を心理の内に残していた。

 それが凹太郎の自分の守り方であった。

 今、巻き込まれている事件。

 その真犯人がミゴの可能性だってある。

 凹太郎は少し息を吸って、



「ミゴさん。

 じゃあ、こうしましょう。

 これから私は【何か】をします。

 それを魔法かどうか鑑定してくれませんか?

 今はそれで勘弁してください」



 凹太郎は自分の疑いうる全ての可能性を考慮するが、時おり何の勝算もなく賭けに出ることがあった。

 ミゴは真犯人ではなく、自分の味方である方に74%ほど割り振った。

 ミゴは意外そうに「ほう」と言った後、ちょっと待っててくださいと研究室の奥のほうに行ってしまった。

 すぐに形状から霧吹きと思われるものを持ってきた。



「どうぞ、オータロ、いつでも」



 ミゴは余程に楽しいのか無表情のような顔にも必死さがうかがい知れた。

 オータロはよしと、周りを見渡し、



「それ、貸してくれますか?」



「これですか? どうぞ」



 オータロはミゴの持つ霧吹きを借りた。

 対象はなんでもよかった。

 一瞬、凹太郎が視線を泳がせるような様子が見て取れた。

 ミゴが今か今かと見ていると、何もしないままオータロは霧吹きをミゴに返した。

 ミゴは、ほうと、



「今、やったのですか?」



「はい。

 とりあえずは」



 なるほどと、ミゴはすぐにオータロの足元に霧吹きで何かの水を撒き始めた。

 何も変化は現れなかった。

 ミゴはふむと、



「オータロ、通常、魔法を使用すると使用時に魔法陣が現れます。

 それは魔法の使用後すぐに消えるのですが、一週間はこの専用液をかけると浮き出てきて確認することができます。

 最初に魔法陣が出てないこと、この液体に反応しないことからもこれは魔法ではないですね」



「……疑わないんですか?

 実は何もしていないとか」



「2%くらいはそうかもしれませんね。

 でも、オータロはきっとそんな無駄なことはしないでしょうよ」



 はははと凹太郎。

 内心、凹太郎はショックだった。

 自分の能力が魔法ではなかった。

 元の世界においても異端である凹太郎の能力。

 そのことにコンプレックスがあり、人間の世界にいるのにも関わらず己は何か化け物の類なのではないかと疎外感を感じていた。

 だから、異世界に来たことでわずかに救われる想いがあったのだった。

 もしかしたら、凹太郎の本来いるべき世界がこちらなのではないかという願望があったのだった。

 では、この能力は何なのか。

 凹太郎は軽くめまいがした。

 いけない、不用意に能力を使ったな。



「ミゴさん、この世界に魔法以外の力は?」



「魔法陣を発生させない、それに類する能力ですか。

 【世界魔法】……こうやって言葉が通じるというようなものはあります。

 しかし、個人単位では……いまだ、立証できていませんね。

 世界にはそう言った事例がないわけではないのです。

 ただ、そうですね。

 私個人がその中で本当に調べるに値すると思う事例は、3件ぐらいでそれも再現性から言ってどうか……というくらいですね。

 だから……」



 ミゴはおそらく、本人ができる最大の笑顔で(といっても口角が2ミリぐらい上がった程度だが)、



「オータロとは仲良くできたら良いなと思っていますよ。

 まあ、その能力はおいおいにでも教えてもらうとして。

 ……では、③の魔法と科学について」

 


 凹太郎は、おいおいね……と心の中でつぶやいた。

 同時に自分に能力があることを初めて暴露したことによる妙な解放感に喜びも感じていた。

 ミゴは椅子に座り直し、



「魔法と科学でいうと、この世界では圧倒的に科学が強いですね。

 強いというか、効率がよい。

 もちろん、魔法の、物理法則を覆す超能力の有用性は大きい。

 だが、全ての人が同様に使えるわけではないし、そのエネルギーも個人差があるとなると、同じ作業をするなら科学に頼ったほうが断然効率がいいのです。

 当然ですが。

 科学で魔法を行うという研究もなされていますが今のところ成果と呼べるものはないそうです。

 まぁ、それでも魔法はやはり無視できないです。

 逆に個人で科学以上の結果も出せるのでね。

 あと……。

 事件が起こった時など、特に無視するわけにはいかない」



 そこまで聞いて、凹太郎はふと思った疑問を口にした。



「そういえば、魔法は……この世界の魔法は術者がいないと使えないんですか?

 例えば、呪文の書かれた札とかで時間差で魔法が発生するとか?」



「ほーう。

 ほうほう。

 凹太郎の世界の……虚構ではそういうのもアリなのですか。

 時間差ねぇ……いや、ないといっていいでしょう。

 あくまで魔法は術者が使ったときに即時的に行われます。

 ただ、科学の応用で時間差に見せられないこともないでしょう」



 ふむ、凹太郎は頷き、次に知るべきことを模索した。

 容疑者とされる少女ルラにできれば会いたい。

 凹太郎は自分の目で一度、ルラがどのくらい犯人でないのかを確信したかった。

 流石にそれはすぐには難しいかもしれない。

 ミゴがおもむろに時計を見る。

 凹太郎にこの世界の数字は読めないが、なんとなく18時くらいなのだろうかと思った。

 ミゴはそろそろですかねと呟いたと同時くらい。

 研究室の扉が勢いよく開かれたのだった。

アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。

誤字、脱字は随時修正していくぜ。

特に見ても面白いことはやりませんが、Twitter、チャンネル登録もよろしくだぜ。

リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。

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