2-3:魔捜研Ⅲ
2-3:魔捜研Ⅲ
思い出してみればアルディオさんもそんなことを言っていた。
事件をそも一般人に扱わせるのは道徳的に問題だとか、私の監視下での【探偵】としての行動を許すとか。
あれは、そういうことだったのか。
凹太郎はふむんと得心がいった。
まぁ、それで黙って引き下がるほど凹太郎は子供でもない。
そんな思惑すら読み取ってそうな目でミゴは凹太郎を見ていた。
「まぁ、どうあれ。
オータロ、まずは親睦を深めましょう。
どうです?
互いに知りたいことを質問しあいませんか?
まずはそちらからでかまいませんよ」
ワクワクしてるのだろうか表情からは読み取れないがミゴにはそんな気配があった。
このミゴという人物、表情は本当に微細ほどにしか動かない、そのわりに身振り手振りは大き。
人間と植物のハーフのようなことを言ってたが、その外面はヒトのハリボテなのかもしれない。
凹太郎は今は情報収集だなと思い、話に乗った。
「OK。
聞きたいことはたくさんありますが……。
そうだな。
魔法について、使い方ではなくその体系的なものというか、この世界の魔法のルールを教えてください。
ミゴさん」
ミゴは意外という風に首を傾げた。
「ほう?
いいでしょう。
まぁ、順番に意味があってもなくても……。
では、そうですね簡単に……。
①、魔法の分類。
②、魔法のルールと付随事象。
③、魔法と科学。
この3つを説明させてもらいましょう。
ただし、1個説明する度に一度、私の質問をさせてください。
どうです?
よい?
了承了承。
では、①から。
魔法はまず3つに分類されます。
基本の【発生】・【生成】・【変化】。
そこから応用と発展などでさらに増えたり、まだ分類されていないものもあります。
まず、【発生】。
因果を無視してエネルギーを発生させることです。
炎、電気、風、あと水を氷にしたり、物を動かしたり。
分子や電子の操作……。
……わかりやすくいうとそんな感じですね。
次に、【生成】。
何もないところに新たに物質を生み出す魔法はこの分類です。
水であるとか、木や石、金属などの質量のあるものですね。
原子の生成といったところです。
そして、【変化】。
すでにあるものを別のものや状態に変化させることですね。
わかりやすく言えば木を鉄にしたり、いまだ研究者の間で議論はありますが体の治癒もここに分類されています。
原子の置換、情報の置換、といったところですかね。
えーと。
オータロのところには魔法そのものが無かったんですね」
「はい。
魔法は存在していない。
ただし、物語の虚構としては存在していました。
その虚構の中だと、うーん……。
魔法はたいてい5大元素で火、水、木、金、土、とか光魔法とか闇魔法とかが一般的でしたね。
物語によって様々ありましたが」
「ほう?
ほうほうほうほう。
なるほど。
まず魔法が存在していないのに魔法という虚構が存在しているっというのは面白いですね。
あと、分類が面白い。
オータロ。
その分類であると、例えば私たちの世界で火を出すためには【発生】の魔法で何かを燃焼させる必要があるのですが、燃やすのに媒体は必要でなく突然に火だけを生み出したりするのでしょうか?」
「あくまで物語によるところはありますが、まぁ、そうですね。
私の世界ではエレメントとして火などを扱って、そこに燃焼させるための物は必要でないことが多いです。
または空気中の酸素を媒体にしたりとか」
「えれめんと?
いやあ、実に実にいいですね。
詳しい話はまた次の機会にして私の質問させてください」
ミゴは傍の壁面にある時計らしきものを見た。
それはデジタル表示で、棒と丸で数字を表しているようだ。
形態も仕組みも凹太郎の世界のものと違いはないように見える。
時間の感覚は同じなんだろう、ならば、一年の感覚もおおむね同じ風なのかもしれない。
ミゴは少し考える素振りをして、
「では、オータロ。
オータロがこの世界にいて今のところ一番不思議に感じていることはなんですか?」
「不思議?
……うーん。そうですね、まだここから出てないからなぁ」
「出れたらいいですね」
ミゴの含みのある言い方であった。
そういえば、当たり前のように異世界とか話してるけど大丈夫なんだろうか。
ここにはカメラのような監視媒体はないとは言われたが鵜呑みにしすぎていたな。
まぁ、ここまできたら今更ではある。
凹太郎はそんな思考を過らせ、ミゴからの質問の答えを自分に探した。
「……。
えー、じゃあ。
そうだ、言葉。
言葉が何故か通じてる!!」
「ほう?
ふむ……ほうほう。
つまり、なるほど。
オータロの世界では同じ言語を使わないと言葉は伝わらない。
言葉に関してはこの世界でも諸説あるところですが。
いやあ、面白い。
……そうですね。
面白い説というか、神話なんですけど。
この世界でもともと言葉は今のように通じ合うことはなかったそうです。
そんな世界で神の座に昇ろうとした種族がいたんです。
その種族は高く高く、神の座に至るべく、塔を造っていきました。
ですが、神への畏れからほかの種族が反対し、大きな戦争が起きました。
結果、その塔は崩れ、すべての人々は傷つき、疲れ果てました。
それを見た神が心苦しく思い、すべての人々がもっと意思の疎通を円滑にできればこのようなことは起きないと考えたそうです。
そうして、今日のように言語は違っても言葉が通じるようになったという話です。
まぁ、色々面白くはあるのですが、現在ではこの大地の外に神がいないことも立証されましたし、あくまでお話ですね。
つまり、私たちにも何故に言葉が通じているかはわかっていません」
オータロはその話を聞いて自分の世界の神話を話さずにはいられなかった。
ミゴはその話をおおいに喜んだ……ような雰囲気があった。
「ほうほうほうほうほうほう。
同じような話があっても不思議ではありませんが、よもや。
あ、加えてなんですが。
このように『誰が』ではなく『神』が行ったとしか考えられない事象。
名目上は【世界魔法】とされてますが、いまだに研究中です。
……では、②の魔法のルールと付随事象の話をさせていただきましょう。
魔法は……あえて、『この世界の魔法は』と前置きさせてもらいましょうか。
この『世界との交渉』とされています。
世界に対してこういう変更を行いますと交渉を行い、世界のプログラムを少しだけいじることが魔法です。
その際に契約の印として【魔紋】が刻まれます。
この魔紋。
基本的には術者の足元に現れ、一週間くらいまで消えません。
消えませんといっても、術時以外は特殊な液体をかけないと浮かび上がりません。
そして、指紋と同様に個々人でその文様が異なり、それでもって誰が魔法を行ったかもわかります。
仮に地面をえぐり取ってもその場から消えず、そういう場合は地面を埋めることなどで平面化した魔紋を採取します。
階層変化や、瞬間発生と継続発生は……今回はおいておきますか」
ふうと、聞こえないほどの息をつくミゴ。
話は続く、
「魔法の使用に際しては魔法力を使うとされています。
これは個々人で量が異なり、体を鍛えた人が使用しても量の変化がないことから体力とは別であることはわかっています。
魔法力は複数人で補うことが可能です。
複数人の魔法には使用者たちの魔紋に加えてそれらを囲うように大きな魔紋が生成されます。
あと、そうですね、2点間の魔法、例えば【転移】ですね。
その場合は2地点に、入り口と出口に魔紋が生成されます。
ああ、そうだ。
……魔紋から何の魔法が使われたかまではわかりません。
ん?
ルールと付随事象、前後してしまいましたね」
はっはっはと作ったような笑い声をあげるミゴ。
凹太郎は考え込む。
アルディオに聞いた事件の状態を思い返していた。
ミゴはそんな凹太郎の意識を戻すようなキリっとした声で言った。
「では、こちらの質問です。
オータロ。
あなた、魔法……いや、それに準じる何かが出来るのではないですか?」
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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