1-2:イ世界Ⅱ
1-2:イ世界Ⅱ
凹太郎が通された部屋。
入り口側と対面の壁側の2つの椅子。
その壁側の椅子に誘導された。
今、部屋にはもう一人、兵士が凹太郎の背後に立っている。
これから、恐らく誰か取り調べ役の人が来るのだろう。
あの青髪だろうか。
それまでの間と思い、凹太郎は思考を巡らせた。
(……少し先走りすぎたかもしれないな。
さすがに異世界転移なんてのはなぁ。
異常な状況のせいで脳が正常な判断をできていないんだろう。
……地球には俺の知らない、このような国が実はあるのかもしれない。
未だに中世のようなファンタジー文化を持ちつつ、現代のITを取り入れた国が……。
そうそう。
マンガやアニメに毒されすぎて、俺は少しロジカルな判断を欠いていたのだ。
異世界といえば、中世ファンタジーとかそういうさ。
電子機器なんてのはSFとかさ、なんつーか、違うだろ?
言葉が通じるのはさ、ほら、俺だって、少しくらい特殊な能力あるわけだし。
何か俺の知らない力があったって不思議じゃない。
……ふぅ、不毛だな)
凹太郎が一人でいくら考えても、現状は何もわからない。
ガチャ。
ドアの開く音に凹太郎は期待の視線を向けた。
青髪であった。
先ほどつけていた鎧は外し、文様の入った軽装に、腰には剣を備えている。
青髪は入り口側の席につき、落ち着いた風で言った。
「やぁ、どうやら体のほうは大丈夫なようだね。
瀕死の状態だったからな、よかったよかった。
さて、改めて。
私は、アルディオ・リグルース。
この度の『事件』を担当している」
健やかな、煌びやかな笑顔を見せる青髪ことアルディオ。
凹太郎は陰と陽、どちらかというと陰の人間であるからこの色男をはなはだ好かない。
凹太郎は青筋を浮かべつつも精いっぱいの笑顔と社交性で返した。
「俺、いや、私は『藤原 凹太郎』。
アルディオさん……でいいですか?
かまわない?
私は正直、今の状態に戸惑っています。
まず、ここは私の知らない国でしょう。
何処の国ですか?
どうして、どうやって、私はここにいるのか?
次に、私はどういう扱いでここにいるのか?
瀕死とおっしゃっていましたが、それを治してくださったのにまるで罪人のような扱いで、拘束もされていました。
最後に、……『事件』とは?」
「フフ、オ・ウ・タ・ロ・ウか。
……ふむ、オウタロウ。
よろしく。
まず、本来は私から質問をするのがココの常であるがそれはまあよい。
君の質問の前に、私がするはずだった質問を先に挙げた上で君の問いに対して答えるとしよう。
私の質問はまず、君は一体何者なのか。
次に、君と『魔女のルラ・ペンテミニアム』はどういう関係なのか。
最後に、『事件』について知っていることは?
……フフ、まぁ、オウタロウの様子を見てわかるよ。
大分、食い違いがあるな。
だが、私は君の謀りとは思いはしないよ」
そう言った後にアルディオは、凹太郎の背後の兵に世界地図を持ってくるよう指示した。
兵士は部屋にアルディオと凹太郎を二人きりにすることはできないと拒否したものの、アルディオがただ笑顔でいると、根負けしたように渋々と部屋を後にしてソレを取りに行ったようだ。
アルディオはさてと、言葉をつなげる。
「ムラズバナの『ミゴ』が言っていた。
オウタロウを調べた結果、その持ち物の分析からも君は特異がすぎると。
元々着ていた服の繊維すらもだ。
大地の端、そして、その大瀑布の先までも知られるようになった現代……においても知られていないものばかりだった。
……君はおそらく、特別な【知らないところ】来た」
特別な【知らないところ】……極めて婉曲的な表現は【異世界】を指していると凹太郎は理解した。
改めて他者から言われると、凹太郎の性格上、壮大なドッキリを仕込まれているんじゃないかという疑念のほうが強くなった。
周りの壁が突然はがれて、隠れていた撮影スタッフが出てくるほうがリアリティがあった。
「オウタロウ。
君の質問、私の質問、それぞれを解き明かすため今のこの状況の前提となる話をしなければならない。
『事件』の話だ。
おっと、早いな」
ドアが開き、鎧をガチャガチャ鳴らして入ってきた兵士が、息を切らしながら机の上に地図と思しきものを広げた。
まさに地図であったが、凹太郎の知る世界地図とは違った。
メルカトルでもモルワイデでもない。
それは、古くは、地球が平面であると信じられていた頃のものに近い。
大地があり、そこに細かく町や自然形状が描かれ、海があり、平面上の端のほうは滝のように海が流れ落ちている。
加えて、小さな略図が端っこにあり、その端から流れ落ちる滝はスクリューの形状をなしていき、黒い穴に吞み込まれている様子が描かれていた。
星の形状が円錐のようになっているのだ。
「オウタロウ……私たちの今いるのがココだ。
この国で『事件』は起きた。
世間ではその事件の構図から『王と伝説の魔女殺人事件』と呼ばれている」
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
誤字、脱字は随時修正していくぜ。
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リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。