4-3:ノウレッジⅢ
4-3:ノウレッジⅢ
「あ、ちなみにね!
リリンと旧ベルレウン王国との争いはかなり一方的にリリンが勝利したらしいよ!
どんな兵器も効かないし破壊されるし!
奴隷を使った生物爆弾というかなり非人道的作戦も行われたけど、リリンには効かなかった上に爆弾に使用された奴隷たちも蘇生させられたりとか!
もうね、リリンは最強すぎでね!」
ポワポは言葉をはさむ暇もないくらいハイペースに喋る。
凹太郎も内容を覚えながらついていく。
ミゴはその様子を見守りつつ、立ち上がって、ポワポと同様に飲み物を取りに行った。
ポワポは続ける。
「900年前のことだから!
いくらか誇張はあるのかもしれないけど!
少なくとも私の見たことのあるリリンはそのくらいできたと思う!
でね!
イマルマ王の話に戻んね!
といってもその後は突然なんだよ?!
イマルマ王が任期を終える10年目のこと!
ある日!
突然!
魔女リリンに殺されちゃうの!!」
凹太郎はポワポの勢いにも乗って、相槌のように驚いた声を上げた。
「な!?
突然?!?」
凹太郎の反応に満足げにポワポは言う。
「そう!
突然!!
歴史上の記録では、それしか書いてないの!!
当時の騒動はすごかったらしいけれどもね!
そして、次の王に決まっていたエルフ族の【ダルク・モア】が早めに引き継ぐことになったの!
で!
その事件のことだけどね!
どのように殺されたかも、どういう状況だったかも記録が残ってないの!
何故かわかんないけど!
ただ、魔女リリンによってイマルマ王が殺されたってだけ!
当時の裁判などの資料も残ってなくて!
ただ、事実として歴史にそう刻まれているの!
不思議だよね!」
「何か歴史的な記録から王が殺されそうな原因みたいなのはなかったのかい?」
凹太郎の質問に答えたのはミゴだった。
その手にはプラスティックっぽいカップが握られており、昨日見たミゴ専用の飲み物のようだ。
「イマルマ王の行った施策などは流石にのこっています。
その全てが国民の生活をよくするためだと思われます。
いくらか失敗がなかったとは言いませんが、それは歴史という客観の中でだからこそ言えることですね。
それを踏まえて考えてみてもですが。
世界を統一させた魔女リリンの意向に沿わないものは認められませんね。
まったくの謎なんです。
記録がないので。
あっと、ポワポ、すみませんね。
どうぞ続けて」
「ぷん!
まったく、ヒトが話しているときに勝手に先を言ってはいけないんだよ!
ま、いっか!
でねでね!
絵本では魔女が王を殺して、それで終わり!
ものによっては、イマルマ王は奴隷から王になったけど、それでも国民の奴隷になってしまったという解釈でそこからリリンが救ってあげたんじゃないかとか!
色々な解釈が足されたものもあるけどね!
歴史では、王は殺され犯人は魔女リリンで!
なんだけど、処刑されたとかそういう記録は残ってないの!
ほかの国の記録では、世界を平和に変えた魔女リリンの処刑に反対する記録は残っているけど!
そういった記録でも魔女リリンのその後については残ってないね!
魔女リリンの記録はその事件のあと、歴史から消えてしまったんだよ!
んで、コレ!」
ポワポは凹太郎が持参してきた絵本から一冊を取り出し、
「今話した内容を、名前とか伏せたりマイルドに描写したものがコレね!」
ふー、とポワポは満足したのか、絵本を凹太郎に渡すと再び飲み物をゆっくり口にした。
凹太郎は考える。
ふと、疑問を口にした。
「そういえば、話の中で魔女が蘇生したっていうところがあったけど、それってどのくらいのレベルなんだ?
例えば、灰になったヒトでも再生したのか?
あと、そういった治癒魔法について聞かせてくれないか?
今回、王は蘇生はできなかったのか?」
ミゴは答えようとしたが、ポワポが先に話し出した。
「話してあげるけど!
その次は、オータロの世界の話聞かせてよね!!」
「お?
ああ。
いいよ、聞きたいことは何でも聞いていい」
「よっし!
えっとね、蘇生……一度亡くなったものを蘇らせる魔法は現在使えるヒトは確認されていないです!
使えるって言ってるヒトは何人かいるけども!
手術で心肺停止からなんとか復帰させるみたいな魔法以外はあるけどね!
でもでも、リリンは灰になったヒトでも元に戻せたらしいよ!
奴隷爆弾の時とかそういう記述がされてる!
魔法でいうと、この国が世界で1・2を争うくらい治癒魔法が優れているよ!
それでも、瀕死状態からならなんとか治癒できるレベルかな!
オータロはそのおかげでギリギリ治ったからね!
他の国とかだったらダメだったかも!」
運が良かったのか、運命だったのか、凹太郎は悩むところだった。
ポワポは続きを話す。
「今回の事件ね!
王様は発見時にはすでに絶命状態だったんだって!
だから、ダメだったみたい!」
「なるほど。
ありがとう、ポワポさん、よくわかった」
「へへーい!
じゃ、次はオータロの世界の話だからね!」
凹太郎はミゴに目線を送ると、ミゴはご自由にどうぞという意図だろう手のひらを見せた。
そこに、
「お、やってるな」
と、中年おっさんエルフっぽい感じのメパが現れた。
「休憩がてら少し、話を聞かせてくれ。
邪魔はしない」
ミゴがどうぞと言うと、メパは白いカップを手にミゴの隣に腰を掛けた。
すると、
「はぁ、はぁ、ちょっと頑張って仕事かたづけてきました!
私も混ぜてください!!」
現れたのは、ケモミミ少女で凹太郎の持ち物を完璧に分解して研究してくれたというテージ。
テージは違うブースから自分用に椅子を持ってきてテーブルの研究室出口側に座った。
2つあるソファーにはどちらも1人分ずつ空きはあるが、遠慮したらしい。
凹太郎は、
「では、順番に質問していく形で。
ポワポさん、メパさん、テージさんの順で」
そう言って、異世界人の質問に答え始めた。
……一つ、凹太郎がタイミングがつかめず聞き逃したことがあった。
それは、ポワポ……いや、ミゴも含め人間種以外の長寿であると思われる者。
彼らは年齢的に魔女リリンのいた時代を知っているはずだ。
ポワポに関しては先の話から面識もあったようだ。
そんな者たちがいても歴史上の記録が残らないことなどあるのだろうか。
いつから彼らはこの国に来たのだろう。
ただ、聞くタイミングがつかめなかったのはそれがナイーブな話でもあるからだ。
戦争時代の話はこちらから聞くタイミングが難しい。
精神的な傷を負っているかもしれないし、下手に心に壁を作られるのも今の段階では困る。
それは置いておいても、まったく歴史情報が消えるなんてことは『この世界』では不自然だ。
それは事件に関係することなのかどうなのか、もっと情報を集めなくてはいけない。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
誤字、脱字は随時修正していくぜ。
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リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。