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異世界に探偵は必要ですか?  作者: アイザック・ゴーマ
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3-5:タンテイⅤ

   3-5:タンテイⅤ




 広い広い研究室、その隅々にまでモンディの笑い声がこだました。

 凹太郎は耳に手を当てたい気持ちをやっとで抑え、動じていない風に笑顔で返した。

 ミゴはうるさそうにはしていないしなんとなしに楽しそうである。

 ひとしきり笑ったのちモンディは言った。

 


「はぁ、はぁ。

 滑稽もここまでくると芸の域だな!

 しかし、まぁ。

 ……オータロウ。

 貴様はすでにアルとの任命関係にあるからな。

 俺にすり寄ったところでどうにもならんがな!

 ガハハ!」



「モンディさんは真実にたどり着きたいのですか?

 それとも、事件さえ解決すればどのような方法でも良いとお考えですか?」



 凹太郎は物怖じせずにモンディに返す。

 その様子がどうにも癪な様子でモンディは答えた。



「オータロウ、貴様……。

 ……ふん、興のさめる。

 とりあえずはいい。

 一旦、俺は帰るぞ、ミゴ。

 オータロウよ。

 一応だ。

 一応言っておくが、俺はアルほどには魔女ルラの無罪を信じてはおらん。

 ただ、そうだな。

 真実にたどり着けるなら俺もアルもさほど捜査に違いはない。

 違うのは種族ぐらいなものだ。

 それが致命的なのだがな。

 ガハハ、どうした、笑うところだぞ?

 ……ふん!

 また会おう、オータロウ」



 ひとしきり言い終え、モンディはのっそと立ち上がり、出入り口から去っていった。

 凹太郎はふぅと息をひとつ。

 そんな凹太郎にミゴが再びソファに腰掛け、



「いや、なかなか面白いものをお見せいただきました。

 おっと、これは褒めてもいるし馬鹿にもしています」



「馬鹿にもしてるんかい」



「稀にみる滑稽さでした。

 まぁ、ついでです。

 事件の捜査の担当がどうなっているか話しましょうか」



「……おねがいします」



「先ほど、モン王子が言っていたように。

 捜査班はいくつもありますが、実は、一つにまとめてもいい。

 誰が犯人であれ、真実を調べるのが本来の仕事ですから。

 しかし、別れている。

 そこには種族の違いもあるでしょうし、何か思惑もあるかもしれません。

 表立っては種族や思想の差蔑は禁止されていますがね。

 思考し、思想を持つ生命である以上、ゼロにはなりにくいでしょう。

 オータロの世界でもそれは同じでは?」



「いちいちめんどくさい言い回しするなって言われません、ミゴさん?」



 ミゴは「はて?」と言った素振りをして話をつづけた。 



「現在、捜査班は4つ。

 第2王子主動捜査班。

 第4王子主動捜査班。

 第5王子主動捜査班。

 政府管轄の刑事事件捜査班。

 更にその中で、いくつか方向性によって捜査チームが分かれている場合もあります。

 多い?

 多いですね。

 まぁ、王が殺されたとう点から見れば妥当かなと私は思うところです」



 凹太郎はちょっと頭が混乱したので整理した。

 この国では王と政府があり、王は国民の信任で選ばれる。

 だが、一般的な王制と違い王子にあたるものは王の子供ではない。

 種族ごとに王子が選出され、また、その中から国民の信任を勝ち取ったものが次の王になる。

 ん?

 と、凹太郎は思った。

 そんな凹太郎をよそにミゴは続けた。

 


「ちなみに、この研究室は第2王子・アルディオの第3捜査チームです。

 ああ、研究機関としての情報は基本、公平にどの捜査班にも流します。

 どの捜査班もここを利用できます。

 じゃあ、何故、特定の捜査チームに入っているかというと、これはアル王子の監視的な役目を担っているからです。

 事件の重要参考人でもあるアル王子ですから、どこかで間違いがあると困るわけですね。

 王子会……ああ、王子たちが集まって会議する場でソレは決まりました。

 ただ、アル王子もそれを逆に利用して、オータロを私に放り投げたりとしてます。

 あ。

 オータロが異世界の人間であることはまだ流せませんね。

 それは私のこうやって話しながらの観察次第。

 いえ、それでも公に発表するはこの研究室の発言力を失いかねませんからないかもしれません」



「……ミゴさん、いいですか?」



「はい?」



「王の交代は何をもって行われるのですか?」



「言いませんでしたかね?

 10年おきの選挙ですね。

 王でいられるのは10年。

 王の間は国家のお金でほぼほぼ贅沢三昧が可能です。

 まあ、王に選ばれる人でそういった人はいないでしょうが。

 だいたい王でいる間も国のために尽くされることが多い。

 此度、殺害された王は国のための魔法研究に尽力なされてました。

 加えて。

 現在はすでに次の王に決まっている、元第3王子のハルタウ・ホルバ。

 彼女が代理として王になっています」



「すみません、確認のために。

 では、王を終えたら?」



「ただのヒトですね。

 まあ、腐っても元王ですが」



 王というだけでも、凹太郎の思っているあり方とはだいぶ違う世界だなと思った。

 そういえば、先ほど見たこの国の空撮画像のようなもの。

 アレはどちらかというと凹太郎の知るRPG感に近いというか、壁で囲われた見た目の国としての大きさは一つの大都市くらいに見えた。

 その壁の外側も国の領地でもっと大きいものなのだろうけど。


 凹太郎は自分の世界の王制について、いくつかミゴに話した。

 聞くと、凹太郎の世界に類似する国もあるらしい。

 その会話の中で凹太郎の認識とかけ離れていた事実は1種族のみの国はもうほぼ存在しないということだった。

 かつてはエルフの国であったり竜人族であったり、単一種族の国はあったらしい。

 戦争や大戦を繰り返し、いつしか多くの種族が共同で暮らすようになった。

 そんな話をそのまま信じることはできなかった。

 同じ人間で色が違うだけでも同じように共同で暮らすのが難しい元の世界と比べてのことだった。

 が、凹太郎はどうあれソレがこの世界の現在の形なのだろうと把握した。

 

 と、そこまで考え、凹太郎は少し思考を変える。

 事件のことだ。

 事件には必ず動機があり、事故にも原因はある。

 この国の仕組み上、王を殺す利点はあるのか。


 王への恨みを持つもの。

 現在代理をしている元第3王子。

 または第3王子を王に替えたかった者。

 あるいは……。

 まだ情報が少ない。

 それにだ。

 ただ殺すにしても少女ルラを仮に免罪としたとき、わざわざこの事件の構図を描く必要があったのか。

 凹太郎は考える。

 そこなのだ。

 ヒトを殺すことは決して物理の面だけを見れば難しくはない。

 モンディのような爬虫類の系統のヒトは正直わからない。

 だが、こと人間になれば話は別。

 ただの人間は構造上、わずかな衝撃でも、わずかな毒でも殺すのは実は容易い。

 更に、どんなに厳重に守られた要人であっても100%完璧に守られているヒトはそうそういない。

 いや、待てよ。

 情報が足りていない。

 凹太郎は聞いた。



「ミゴ、そういえば、殺害された王は私と同じ種族……人間種でいいか?

 おっと……で、よろしいですか?

 それとも、他の種族でしたか?」



「……オータロと同じですね。

 至って、平均的な人間種。

 男性。

 年齢は70でした。

 王になってからは魔法の研究、しかも国をよくするための魔法に没頭してましたね。

 例えば、非継続的な魔法の継続的な運用とかね。

 ああ、要は半永久的な水の生成とかです。

 生成の魔法は無限に生成できるわけではないので。

 例えば、生成した水は消えませんが、永遠に出し続ける方法はないということです。

 まぁ、ちょっと、事件の話をしましょうか。

 オータロ」



「ありがとう、ミゴさん。

 ここで、事件現場の画像をできるだけ見れますか?

 もしも、グロテスクな様子でしたら、そのまま見せてもらっても大丈夫です」



「いいでしょう」



 ミゴはさささっと机の上を指で撫で、タッチパネル状のソレを操作した。

 おそらく事件をまとめているであろうフォルダのようなBOX。

 それが開かれると、たくさんの画像が机いっぱいに展開された。



「では、探偵とやらの手腕、見せてもらいましょうか?」



 ミゴは、おそらく楽し気に言った。 

アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。

誤字、脱字は随時修正していくぜ。

特に見ても面白いことはやりませんが、Twitter、チャンネル登録もよろしくだぜ。

リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。

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