3-1:タンテイⅠ
3-1:タンテイⅠ
ポワポは凹太郎と話したがっていたようだった。
特に何をするでもなくあっち向いたりこっち向いたりとしながら、ちらちら凹太郎を見ていた。
だが、凹太郎は「ありがとう、今日は疲れたからさっさと寝ますね」と言ってさっさと用意してもらった簡易ベッドで横になった。
あまりにも処理しなければいけない情報が貯まりすぎていたからだ。
あと、今日1度能力を使ったこともある。
凹太郎は考えた。
まず、やはりここが異世界であることを前提として話を進めなければなるまい。
仮に気づいたらどこかの病院で目を覚ますにしても、これが死ぬ前の刹那の夢であったとしても、それは変わらない。
それはよし。
今の時点でわかっていない、これから真っ先に確認しなければならないことをまとめよう。
第一に魔法をまず視認する必要性。
この目で見ないことには凹太郎自身それを推理材料に加えられない。
次にこの世界の簡単な社会構造。
出来たら普通に暮らす人々の様子を直接見たいがそれは叶うだろうか。
そして、少女ルラとの直接会話。
とりあえずこの3つが最優先事項だ。
凹太郎はよしと思考を次に移した。
当面の目標は少女ルラを救う、無罪を勝ち取ること。
そして、ルラを解放してもらい、凹太郎を召還したという彼女の魔法で元の世界に戻る。
これがベスト。
……ベストだろうか。
まぁ、仮のベストとしておこう。
ワーストは凹太郎も関与していたとして実刑に処されること。
あと、仮にこの事件がルラ以外の何者かが画策したものだとしてその者たちに凹太郎の命が奪われること。
またはルラが犯人だと都合の良い者たちによって同じく……。
それにしても、だ。
異世界かぁ。
もう少し感慨深いものがありそうだがなぁ。
ふと、空腹に気付いた。
凹太郎は起き上がり、異世界のカップ麺にお湯を注いだ。
うーん、異世界感がない……。
フォークはある。
箸はないのかな。
用意はないな。
そういえば目を覚ましてから何も食べてなかったんだなぁ。
凹太郎は自分の思考が浅くなっているのを感じながら麺を噛み噛み食べた。
凹太郎も瀕死状態から助かったのなら、王様も助けることはできなかったのだろうか。
この世界のあの地図……太陽と月的なものはどうなっているのだろうか。
考えなければいけないことはたくさんあるものの、凹太郎の体が限界を告げている。
(力を1回使ったからな)
不健康と思いつつ、いつものようにカップ麺の汁まで飲み干し、ごみを捨てた。
異世界でもそれほど味って変わらないものだな。
なんて考えながら凹太郎は眠りに就いた。
*
確信があったわけじゃなかった。
初めは子供の遊び。
それこそ小学生の頃の話だ。
探し物が見つからないとき、瞳を閉じてみたら探し物の場所が光って見える。
……なんて、そんなわけはないのに子供だからそんなことができてしまう気になった。
瞳を閉じる。
脳裏に描いたのは探し物。
闇の中、探るように、潜るように。
見えたのは小さな光。
それはやがて自分につながる線をなした。
それは瞳を開いても見えていて、探し物まで続いていた。
それが、始まりだった。
*
凹太郎の目覚めはだいぶよかった。
簡易ベッドのくせに良い材質で、優しく包み込まれているような感覚であった。
それでも軽い疲労感はまだ残っている。
研究室が明るくなったこともあって目を覚ましたのだが、その明かりはあたかも日が昇って朝日が部屋中に満ちているかのような明かりだった。
しかし、研究室には窓がなく、ライトがそういった仕組みになっているんだと気づいた。
だから、昨夜はライトの感じで体が夜だと感じたのかもしれない。
ブースから出ると、人の声が聞こえてきた。
凹太郎は声の方、研究室入り口あたりの広い空間に向かった。
そこには、ミゴとポワポの他に4人ほど見知らぬ顔があった。
ミゴは凹太郎に気づくと、
「やぁ、オータロ。
良い朝ですね。
ああ、皆さん、こちらが今話していたオータロです。
オータロ……ポワポはいいですね。
こちらの4人もこの研究室の者です。
左から、ヂィギィ、メパ、ガムニ、テージです。
ヂィギィは私のメインアシスタント。
何か欲しいものがあったらとりあえず彼女に聞いてください。
あと3人は、そうですね。
メパは生物分析のエキスパート。
遺伝子情報とかで伝わりますかね。
ガムニは電子分析の。
情報や機器の修復などしたりするのが超得意です。
テージは無機物分析。
オータロの衣服とか持ち物は彼女が全部分解しちゃいました」
ヂィギィ。
名前の奇異さに反して見た目はまんま若い人間の女性である。
背の高い、モデルのような綺麗な女性で、しかし、性格の厳しそうな睨むような眼をしている。
髪はふわっとした金髪で腹くらいまでと長い。
ミゴと同じように白衣のようなものを着て、その下は紺のスーツのようなフォーマルな服を着ていた。
「はじめまして。
私はヂィギィ。
まぁ、おとなしくしているなら、いくらか贅沢を言ってもいい。
そのかわり、少しでもおかしなことしたら許しはしないわ。
そのつもりでいなさい」
メパ。
中年の男性で、耳がとがっている。
背は低く、ぱっと見は元の世界でもよく見かけるような腹の出ている普通のおじさんな感じだ。
髪は赤く、チリチリと癖のある短めのものだ。
やる気のなさそうな表情だ。
白衣のようなものの下はだいぶラフな服装をしていた。
「メパだ。
……まぁ、よろしくな」
ガムニ。
ポワポよろしく子供のような見た目で耳がとがっており、小学生低学年男児くらいだがきっと高齢なのだろう。
緑色の短い髪。
行動的な意思の感じる表情をしている。
白衣のようなものに、青いオーバーオールが特徴的だ。
「ガムニだ!
思ったより、冴えないやつだな!
異世界人ていっても人間まんまだし!
案外つまんねーのな!」
テージは一見は人間だが、暗い赤めの髪に、よくよく見たら獣のような耳が頭の上部についていた。
ケモミミだぁと凹太郎は心の中で思った。
身長は凹太郎より頭一つ小さいくらい、柔和な表情をしていた。
白衣のようなものの下には、かわいらしい桃色の洋服を着ていた。
「テージです。
あ、あの!
違いますよ!
ミゴさんの命令でしたんですからね!
……まぁ、確かに、見たことのない物質でちょっと興に乗ったのは否めませんけど」
挨拶の間にポワポが凹太郎に飲み物を持ってきてくれた。
香りはコーヒーのようだが、見た目は抹茶のようである。
「飲んだことない? ウェカポだよ」とポワポが名前を教えてくれた。
凹太郎はそれに口をつける。
苦みと旨みのセレナーデだった。
美味しいけれど、あまりの苦みにつぶれたような顔をする凹太郎であった。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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