6. キメラ
長い昼休み。俺は、いつものように屋上でゆっくりしていたところ昨日俺をつけていたあの三人に邪魔をされ、あまつには二年前のあの事件のことまで話す羽目になった。
彼女達が聞きたかった事はあらかた話したつもりだし、園条の手をやや大きな声で振り払ったことをきっかけにもう話すことはないだろうと思う。
唯一気掛かりなのは、俺の手を触って疑問に思うかもしれないって事だ。
紅の手はーーいや、紅の身体は、あの夢を見た時からずっと高熱のままだ。
この高熱はいっこうに下がる気配がなくむしろ段々と上がっている気もする。
この事は先生に何か言われたら面倒だなと毎日思っているのであまり他人に自分の肌を触れさせないようにしてきた。よく首根っこ掴まれているけれどもなかなか気づかないものだなと毎日ハラハラしている。
だが、今回は園条を通して先生に伝わるのかもしれないな……。
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昼休みが終わり、教室に戻っるとすぐに五限目の授業が始まる。たが、園条亜里沙は、この時間全く授業に集中出来ず暗い雰囲気に包まれながらも悶々としていた。
(やばい、怒られた……)
どうやら、手に一瞬触れた事が彼の機嫌を悪くしたようで、先生に任された身としてここで、失敗するのはいただけない。
(嗚呼、これからどうやって声かけたらいいんだろ……)
盛大に落ち込み、これからどうするべきか、紅の事を考えると彼がやるべき事について頭がよぎった。
(キメラを辿って人探し、だっけ……その前に、キメラって何??)
キメラ、これまで、いくつか話に出てきており、亜里沙自身も少し気になっている事だ。
今は、授業中……亜里沙はこっそり、スマホで、キメラの存在に関して検索する。
合成獣とは、生物学で、同一個体のなかに遺伝子型の異なる組織が互いに接触して存在する現象をいう。
(うーん……つまり、一つの身体に違う生物のが合わさったような生き物って事かな?この世界にも魔物みたいなのいるんだ。)
六年前、初キメラの死体が発見され世間は大騒ぎになった。
だか、死体が次々と出てくるため、何処かで動物実験をしているのではないかと噂されたが、名乗りをあげる人物は出てこなかった。
それから五年後死体では無い生きたキメラが次々と発見。
そのキメラは恐ろしく凶暴で、触れようと手を出した人もいたが、手を噛みちぎられたなんてことも酷い時には、命を落とした人物をいる。
同時期に、人の形をしたキメラも発見されるようになり、そのキメラは死体となって発見せれてはいたが、その人の部分DNAは、全て同じていることが分かっている。
(キメラの事は大体分かったけど、血辻さんとどう繋がっているんだろう?)
キメラの事も調べるだけ調べたが、血辻紅との接点は全くない。
深く、血辻とキメラの繋がりを考えているさなか遠い場所から私を呼ぶ声が発せられたが、私は、応える事ができなかった。
「園条さん、園条さん……」
「……………」
「園条さん!」
「は、はい!!」
調べ物に夢中になっていた私は、先生に当てられていた事に気付かず、最終的に声量大きめの声で呼ばれ、はっとなって返事をした。
「授業中は、携帯触ってはいけません。」
「は、はい……」
「ここ読んでくれる?」
恥ずかしながら、ずっとスマホを触っていたのでどこのところを読めばいいのか分からなかったが、血辻さんが、そっと教科書を見せ、読む場所を教えてくれた。
数分して、音読する内容分が終わるとそのままスムーズに授業が進む。
とりあえず、考えるのは授業終わってから寮に戻ってからにしようと思った。
そして
「あら、急に暗くなったわね?しかもなんで、こんな部分的に……なんかの影かしら……?」
それが現れたのは下から上へ、カーテン越しの前例の窓が何かの影で暗くなりクラス全体が疑問に満ち始めた時、先生は、カーテンを開けると何やら毛皮のようなものが窓いっぱいに広がっていた。
そして、上窓には、熊のような頭と顔がこのクラスを覗いていた。
「キャアアアアアアア」
「ブオオオオオオオオオオオオ」
熊の顔を見て、驚いたのか教室にいた生徒、先生は、教室の隅っこに避難していた。
おそらく熊も、生徒達の奇声に驚き雄叫びをあげてしまったのだろう。
そして、大熊は、窓枠を壊し教室へと入っていき生徒達が腰を抜かし固まっている教室の隅っこの方に奇声をあげ駆け寄ってきた。
その熊は、身体が不可解だった。
熊の顔と胴体たが、背中にサイのような鎧に手足は虎のような色と模様、尻尾は、腹にぐったりとした蛇が巻きついているこれは間違いなくーーー
「合成獣」
熊のキメラは、勢いよく生徒たちの元に駆け寄り、爪の尖った右手で、何かを叩き割るように振りかざし生徒達の方へ振りわました。
その瞬間誰もが、死を予感した。