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キルケゴールの呪いは一生かけても解けません  作者: ノンノア
序章 この世界で全てを終えて
7/19

血染めの夢 

 

 血辻紅は、二年前の事件以降同じ夢を見る。






同胞が斬られる夢    


身内がこの世から消える夢


人々が死ぬ夢

           

蹂躙される夢


快感を求め血が流れていく夢 

        

恨みと怨念が篭った夢  


約束を守れなかった後悔と、全てを託された重圧の夢


そして、絶望と復讐が取り巻く夢






 それら全ての夢がひとつに繋がり、全ての感情が(あか)の中に入り込み、夢と現実がわからなくなってしまうほど、リアルに描かれていた。

 事件後、心がまだ落ち着きを保てない状態に追い討ちをかけるよう見せられた夢は何日も、何日も同じ光景を見せられ、やがてその夢は鮮明に脳に魂に刻まれていく。


 こんな夢を見せても、やがて何も思わなくなり、次第に心がどんどんと壊れていく。


 いや、人を殺した時点で、心なんてものは、壊れているのかもしれない。





 そして、同じ夢を1週間見続けるとようやく新しい場面に切り替わる。



『ごめんなさい……母上、やはり私だけでは、この戦争を止める事は、出来ませんでした。村は焼け、父を失い。姉さんは、姉さんは……』



 場面は炎に包まれた屋敷、そこには、一人の少女と母親らしき人物が、()り。少女は、子供のように母親に抱きつき泣き喚いていた。



『私も謝らなければなりませんね。貴女(あなた)にビレルドの血筋の重荷を背負わせてしまって…』



『それは、言っちゃダメ。姉さんが消えてしまってから私が継ぐしかなかった。これはしょうがないことなの。その実力も、覚悟もできていた筈なのに…』



『そうね。ごめんなさい。』




 許せない。


 不条理に姉の命を奪った龍を


 理不尽に村を襲い、我ら一族の命を根こそぎ奪うあの軍を


 父の命を奪った強欲者()


 そして、キルケゴールを



『絶対殺してやる』



 でも、出来ない。私が弱いから、私は姉さんじゃないから、復讐心と自分の弱さに打ちのめされ、母親に泣いて謝ることしか出来ない私は、自分が嫌になり自分を否定してしまう。



『私は、許せない。ミラにこんな思いをさせてしまった自分に。夫の命を奪い、娘の命を奪い、吸血人一族を滅ぼすあの悪魔を』



 母上も同じ気持ちだった。母の悔しい紛れに出すその言葉に、何故か私の胸はそっとなった。

 そして、ミラの耳元で『よく聞いて』と囁き



『ビレルド流の血界術には、次元を超え血筋を通し、魂を運ぶ秘術がある。時間は掛かりますが、復讐できる機会は作れる。今度は、貴方に背負わせる訳には……』



  この秘術を使えば、魂が時間をこえる事ができる。たが、もちろんデメリットもある。それは、移動中の魂の時間停止。つまり、己の魂がそのまま変わる事がないという事だ。

 今のミラは、復讐心と絶望が取り巻いている。そんな状態で秘術を使えば、復讐心と絶望の権現(ごんげん)として、魂が壊れ、狂ってしまうかもしれない。


 たが、それは、母親も同じ。ならば、今度は、親として娘のために戦おうと決意したが、




『その役目、私がやります。』



『ですが……』



 これは、ビレルド家を継ぐものとして、吸血人一族の長として、私が、やらなくてはいけない。これ以上母上に辛い思いをさせたくない。


 今度こそ覚悟を決めよう。絶対後悔しないために


 彼女の真紅の瞳には曇りなく、涙を流していた瞳とは全く違った表情。彼女の覚悟に母親は、



『分かりました。貴女に全てを託します。』


 ここで、また場面が切り替わる。今度は、暗い暗い空間だ




『怒りを、憎しみを捨てろとは、言わない。でも、思い出して欲しいの、貴女の戦う意味を、私達、家族がいた事を』



『そして、血の誇りにかけて、鋼の心をもって挑みなさい』



 カーミラ・ヴァン・ビレルドに向けて








 最後のは、なんだったのだろう?


  手紙みたいだ。


 そして、何故か最後の言葉はどこかで聞いた覚えがあるが、

 どこだっただろうか。


 そんな事を思いつつ、目を開けば、朝日が部屋を(とも)し、紅は、自分の身体の熱が段々と熱くなっていくのを感じつつ洗面所の鏡で自分の顔を見ると涙を流している事に気付く。





次回は、『最後のお見舞い』の続きになります。

順番ごちゃごちゃですみませんm(_ _)m


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