4. 最後の見舞い
今回は、紅視点です。
なんかつけられているな。
時は放課後の下校時、ちょうど園条亜里沙達が紅を尾行している時間に遡る。
紅は、帰りのホームルームが終わり、いつものようにすぐ学校出ていき病院に向かっている途中、誰かにつけられている気配を瞬時に察知した。本人達は気づいていないようだが、ちらっと見たとこ学校が同じ人なので、特に害なしと判断し、そのまま気にせず歩いていたが、
何故、紅の後をついて行くのかが疑問に残り、そのまま、病院に着いた。
そしたら、病院にまで入ってくるので、流石に驚いたが、結局近くに居たナースさんに捕まっていた。
そして、今日一番驚いたことといえば、その三人の中から「高崎時雨」という名前が発せられた事だ。
俺の見舞い相手にして、その人の存在は世に知らせていない、例え家族であろうとだ。
もし知っているとしたらそれは、随分前に跡をつけていた担任の先生くらいだろう。
(もしかしたらあの人の娘さんなのかな)
もし、あの人が先生からお父さんの事を聞いたとすれば多少なりとも、俺をつけていた説明はできる。
(そろそろ交代どきかな)
そんな事を思いながらまっすぐ病室に向かう。
『だ、れ、だ、』
「血辻だ。また来たぞ」
『ま、い、ど、す、ま、な、い、な』
「気にすんなよ」
高崎時雨の容態は脳に大きなダメージを負い治療法は現在一切なく自然回復を試みるしかないとの事。
だが、脳と魂は別だ。
現在2029年の科学は大いに進歩し、脳にダメージを負った患者でも、治すことは難しいがこうして会話が出来るというところまで進歩した。
会話と言ってもこちらから声が伝わるわけではなく、音がデータ化し、魂に直接伝わり、魂が、いや、彼が思っている事がデータ化しモニターに文字として会話できるという事だ。
「最近は、ここら辺を中心に奇妙な動物が出現って世間じゃ騒いでいるよ、まるで、物語に出てくるキメラみたいだって」
俺が、この病室に入ってする事は、新聞でのニュースや、世間の状況とかだ、そんな事を話す理由としては、特に話す内容が見つからなかったからだ、それももう習慣づいてしまったが、それも今日で終わりだ。
「悪いな、あんたの約束破ってしまって……」
『ど、う、し、た』
「あんたの娘が来ている」
『…………』
『な、ぜ?』
「勝手に跡をつけていたみたいだ」
『そ、う、か』
「何も言わないのか?」
『確かに、家族に知らせないよう頼んだのは私だが、娘は、自分の意思でここに来たんだろ?』
そう、彼が家族に自分の状態を教えていないのは彼の本意であり、本人の希望だ、世間的に死んだことになっているのは彼の本意では無いが、おかげで、家族にはこのような状態を知られてはいない。
『こんな姿娘には見せたくはなかったが、もう、潮時だろう。それに君は、やらないといけないことがあるんだろう?』
「なに?」
『何となく声がいつもと違うような気がしたからかな?』
彼の音声がそのまま伝わっるというシステムはないはずだが、どういう訳か、彼には何か言葉では無い違うものが伝わったのだろう。
「そうか、実は俺、来週学校辞める事にしたんだ。」
『な、ぜ?』
「そのやらないといけない事をするためだ。」
『そ、う、か』
「だからもう、見舞いには来れない。一人が寂しいならあんたの愛娘でも呼んでくれ」
『そうだな、いろいろと世話になった。感謝する。』
「良いんだよ、それに世話になったのはこっちだ。もし、治ったら父さんの墓に線香でも上げといてくれ。それじゃぁ、さよならだ」
そのまま、紅は患者のそばにあるモニターに映し出された文字を見ずにその場を去る。
ドアを開ける際、跡をつけていた三人が案の定居たが、俺は声を掛けることなくその場を去った。
その表情は、とこか寂しく、悲しく切ないようなそんな気がした。
高崎時雨さんは、モニターに文字が映し出された言葉が高崎時雨さんの思っている事なこで、1文字づつ『、』を打っていましたが、長文は打っていません。