9. 恐怖たる絶望
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場面は変わり体育館
多くのキメラに囲まれてなおそこに立ち大剣を腰に携えこの国とは文化が違うようだが、人目見て武人のような姿をした人物がそこに立ち前へ歩いてきた。
そして、入ってきた途端、血辻紅とここにいる誰も名を知らない姫のような名前が飛び出た。
姫の名は、ともかく紅の名前が出たのは教師達にも驚きを隠せず動揺してしまう。
そして、その武士の後ろ影から十数名、傭兵のような人物が現れ、教師達を拘束する。
「あなた達は一体何者なんですか」
「俺は、グレゴリオ王国強欲軍軍隊一番隊隊長のロルバートだ。そして、後ろにいる奴は俺の部下だ。俺達の目的はさっきも言ったが、イーディアス王国の姫君のアリア・L・イーディアス王女と血辻紅っていうガキを連れていく事だ。」
「その姫君はともかく、なぜ血辻君を狙うんですか!?」
「そんなの依頼主に直接聞きな。この魔獣……いや、こっちの世界じゃあキメラだったか。このキメラを譲ってくれたのもそいつだからさ」
「じゃあ、」
「おい、そもそも誰が、発言を許した?おい、女!!。お前今の立場分かってんのか!?お前らは俺達の有益な情報のみ提示すれば良いんだよ!!」
「……」
この学園の理事長である夜桜律子の首にロルバートの大剣がかかり、その脅しで理事長の発言は強制的に終了させられた。
後ろにいる生徒達も教師達が拘束されると同時に足を止めるよう命じられた。だが、このパニックとザワつきだけは止まらなかった。
「さてと、お前らや後ろのガキの表情と雰囲気からして、アリア王女は全く知らないが、血辻紅ってガキは、どうやら知っているようだな。おい、まずはそこのお前血辻ってガキは、どこだ?」
ロバートは、自分の部下たちが教師を枷で拘束したのを確認し、拘束している間辺りを観察し、ここにいる人達の小さな話し声などに聞き耳をたてて状況を把握した。そして、近くに拘束しておいた男性体育教員を前に出させ質問を飛ばした。
「し、知りませ……」
全ての言葉を吐き出させる前に彼の発言が止まった。
応えを言う前にロルバートによって首をはねられたのだ。
「「「「「「「きゃあああああああああああ」」」」」」」
「知らないなんて回答は求めていない。言ったはずだ。有益な情報のみ提示するようにと」
交渉の余地なしと後ろに居る生徒や教師達誰もが悟った。今度また下手なことを言えば今みたく首をはねられる。紅の居場所を応えると言うことは紅を売り、裏切る行為に等しい。それだけは教師にとっては避けたい。だが、かといえ無言を貫き通すのも危険だ。
「次は、お前だ。さぁ、知っていることを吐け」
「ひぃぃ、む向かえの建物の中にい、います……」
「なッ…玉井先生、あなた……」
指名された教師はあっさりと血辻紅の居場所を吐き、その対応に他の教師陣は言葉を失っていた。
「ほう、なら案内してもらおうか。」
「は、はい……」
「ロルバート隊長。こいつら、どうしやいやしょうか」
「殺さねえ程度で好きにしろ。あいつも人体実験のストックが欲しいようだからな。土産は持っていかねえとな。ま、向こうの世界で半分は奴隷商にでも売るか。この数だ。高く売れるだろうよ。」
「へへへ、了解」
彼らはニヤニヤと生徒たちを見て、質問に答えた玉井先生の足の拘束を解き、彼女に案内をさせようと体育館を後にしようと思ったが……後ろに待機させていたキメラの様子がおかしい。明らかに後ろに控えていたキメラが大人しいのだ。
「どういうことだ。魔獣共が怯えてやがる。」
「お主たちの探し人は、"血辻紅"か?無駄じゃ。もう死んでおるぞ。生きていたとしても瀕死だろうがな。」
「誰だ貴様。」
「キルケゴール。お前の世界ではこの名くらい聞いたことがあるであろう?」
「なッ、貴方様が、キルケゴール様……」
「本物か?」「いや、おかしいだろ国のトップだぜ。」
彼女は体育館の入り口からキメラの中心へ現れた。
紅いドレスを着た少女の姿は、妖艶で豊満で暴虐なまでに美しい。
ここにいる誰もが心を奪われた。(キメラを除いて)
「フン、キルケゴール様は、我らの国の国王。故に男だ。嘘をつくのも大概にせんか、愚か者め。」
「ほう、そちらの世界では、我は男なのか。それに国王ときたか、随分成功しとるようじゃのぅ」
「フン、茶番はいい。貴様がキルケゴール様の名を語ったことに関しては聞かなかった事にしよう。
ところで貴様、血辻紅が死んだと言うのはどういうことだ。」
「どうもこうも我が殺したのだから仕方なかろう」
「なッ………」
紅が『死んだ』と言う発言も『殺した』と言う発言も、教師達や生徒、ここを襲撃したロルバート達には衝撃の事実だった。
ロルバートは、このキメラの持ち主に血辻紅を連れてくるよう依頼されていた。キメラを貸して貰った恩は返しておくべきだと考えたロルバートだが、もうそれは叶わない話だ。
そして、紅のクラス担任の夜桜愛華にとっては自分を責める事しか出来なかった。
クラスメートを死なせてしまった事もあるが、自分が彼を置いていく判断をしてしまった故に彼を殺してしまった。
どうして、彼を残してしまったのか
どうして、私が立ち向かわなかったのか
どうして、死なないと思ってしまったのか
今となっては悔やんでいても致し方ない。なら……
「ほう、良い絶望じゃな。彼が死んだ事を悔やんでおるのか?」
「えッ……」
夜桜愛華の目の前にキルケゴールが立ち。誰の知らぬ間に、目が離せない対象物が一瞬にして彼女の前に現れたのだ。愛華は勿論、ロルバートやその部下も驚きを隠せなかった。
「それじゃあ。いただこう。」
「ッ……ッ………」
キルケゴールは、ご馳走を食べる子供のように自分の唇を愛華の唇に押し込んだ。濃厚なキスだ。
「おい!!」
だが、そんなに時間は長く無い。持って五秒くらいだ。
ロルバートは、大剣を抜き二人の首目掛けて剣を振るうが飛んだ首は玉井先生のものだった。愛華は、その場に転がり悲鳴が上がった。そして、キルケゴールの立ち位置は玉井先生がいた位置におり、すぐに元いた位置に戻った。
「おい、我の食事の邪魔をするなどいい度胸じゃな。」
まるで楽しみを奪われた子供のようにお怒りだ。
先程までの雰囲気とはまるで違う。彼女の美しさには冷酷で傲慢な感情が彩っており、そこにいる全ての人々に恐怖を与えた。それ故、動く事も話す事も難しい。
もしかしたら、キメラ達は彼女の恐ろしさに気づいていたのかもしれない。
そして、キルケゴールは、右手を前に出し指を鳴らすと、彼女を囲い怯えていた半径1メートルのキメラが四散した。
「なにを……」
「なーに、我の呪い"恐怖たる絶望"を行使したまでよ。」
「きさま、"呪い持ち"だったのか……」
「違うな。我は『絶望』の呪いにして全ての呪いの原点にして頂点に立つ"始元の呪い"貴様如きが気楽に話していい相手では無い。」
キルケゴールは、ロルバートの前まで歩き、手を胸に当て、ロルバートの胸の中に手を沈めた。
「カハッ……」
数秒で手を抜き、小さな玉のようなものを彼から抜き出す。ロルバートは、血を吐きそのまま倒れてしまった。
「ほう、"強欲の呪い"、マモンの呪いの一端か。まぁ、貰っておくとしよう。」
キルケゴールは、その玉を口に運び、それを飲み込んだ。
そして今度は、生徒や教師達の元へ駆け寄る。
「さてと、暇になった。とりあえず、今この場にはご馳走が並んでいることだしの。これ以上の深き絶望の味でも作ってみるか。」
彼女の美しい面は、どんどん歪み。人を人とは思わないような目で彼らを見渡す。ここにいる彼らは全員死を予感した。たが、その歪んだ表情からひとつの笑みが浮かんだ。
「フッ、ようやく来たか、どうだ。応えを見つけて来たか?血辻紅、いや、ルージュ」
「もう、応えた。」
キルケゴールの背後に死んだと彼女の口から出た彼が、血辻紅が立っていた。
次回はDreamstory編になるので是非読んでください!!
当分Dreamstory編になりそうです……。




