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悪役令嬢はざまぁを夢見る  作者: チョコころね


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92.アラサー令嬢は口をつぐむ

 

 姉から目を逸らすように、馬車の窓から外を見ていると、すぐに魔法学園の長い塀が見えて来た。

 門の前での乗降は、混雑の元になるので禁じられているらしい。

 それでも馬車渋滞はそれなりにあったが、あまり待つこともなく昨日の場所に付く。


(やっぱり、場所が決まってるのか)


 ドアが開くと、私、お姉様の順番に降りた。

 馬車には短いステップが付いており、ひざ下丈の学園の制服なら、手を借りずとも乗降が可能だ。


(長いスカートや、ドレスの時は足元見えないから無理ね)


 あと礼儀として、男性が同乗している時は、女性が降りる際、手を貸すことになっている。

 王子やシリウスが一緒の時は、大抵手を貸してくれた。


「帰りは、おそらく別々ね。待っていなくてもいいわよ」

「はい、お姉様」


 帰りの時間は、授業の時間割通りにはいかないこともあるらしい。

 私たち二人が帰宅するまで、常にウイザーズ侯爵家の馬車が、一台はここにあるように調整してあると、朝、執事(ロイド)から通達された。

 

 心もち、姉の斜め後ろをついて行くように歩くと、学舎の入り口に続く広いエントランスに入った。

 ちらほら姉に挨拶する生徒が、こちらにも会釈してくれる。

 その中から、美しい黒い巻き毛の女生徒が、姉の前に立った。 


「ごきげんよう、アマレット様」

「ごきげんよう、グレイス様」


 優雅に挨拶を交わした後、姉が「妹を紹介しますね」と、こちらへ手を広げた。

 私はスカートを少し摘まみ、軽くかがんで挨拶した。


「初めまして、シャーロット・ウイザーズと申します」

「ご挨拶いただき光栄です。グレイス・ペニントンと申します。以後お見知りおきください」


(ペニントン伯爵家のお嬢様ですか)


 お姉様からお茶会仲間として何度か伺った名前だ。

 シリウスからも、ペニントン伯爵は『爺公爵の派閥に入ってない』と聞いていたから、安全だろう。


 グレイス嬢は、頬に手を当て、ほうっと息を吐いた。

 とても大人っぽいというか、艶っぽい動作で、こちらの方がため息をつきたい。


「昨日も思いましたが、本当にお可愛らしい妹君ですね…」

「自慢の妹ですもの」


 胸を張って、妹自慢をするお姉様はかわいかったが…


「皆様も思われた通り、シャーロットは、本当に私によく似た妹なのよ!」


 …自信満々に言い放つお姉様は、少し残念令嬢かもしれない。

 グレイス嬢は慣れているのか、微笑ましそうに姉を見ていた。


「今度は是非、シャーロット様もお茶会にいらしてください」


 と、伯爵令嬢は囁き、優雅な仕草でお姉様と立ち去った。

 残された私は、彼女らの後姿を眺めながら淡々と思う。


(これゲームで観たヤツだ…)


 生徒で賑わう学園のエントランスで、悪役令嬢(シャーロット)とその姉が、己の身分と美貌を自慢げに吹聴しているのを、少し離れた所からヒロインが見ているという…。


(きらびやかな様子に気圧(けお)され、『私は場違いなのかもしれない…』と思うヒロイン。そんなヒロインの側に…)


「おはよう、シャーロット」


(そう、王子が現れるのよねー…って)


 なんで王子(あなた)がここにいるんですか!!


「お、おはようございます、殿下」


 振り返りあわてて挨拶をすると、シリウスとジャックの姿もあった。

 その後ろを何気に見たが、キャロル(ヒロイン)の姿は見つけられなかった。


(あぁ、イベントが一つ消えた…)


 さりげに消沈する私に、王子はさわやかに笑いかける。


「アマレット嬢は、相変わらずだね」


 さっきのやり取りを見ていたのだろう…というか、お姉様が去るのを待っていたのであろう王子の口元は微妙に引きつっている。


「裏表ないのが、姉の良い所ですから…」


 とりあえずフォロー。


「確かにね…彼女は昔から、頭と口が直結している」


 シリウスも、朝から疲れたように笑っていた。

 ジャックは、不思議そうにつぶやいた。


「…あの方が、シャーロット様のお姉様ですか。言われていたほど、似ては…」

「あーそれは悩まないでいいよ、ジャック」

 

 諭すように王子。


「そうそう。彼女が視界の端にでも入ったら速やかに、僕らの進路を変えてくれればいい」


 冗談めかして言っているが、シリウスの目は決して笑っていない。

 ジャックは困惑したように私を見たが、私は目線を合わさず、ボソッと言った。


「お姉様は、独自の世界をお持ちなのです…」

「僕らは、その世界に入るのを好まないんだ」

「ジャックも、おそらく避けた方が無難だよ…」


 シリウスの懸念は当たっている。

 以前、お姉様の口から、『赤髪の騎士様』という言葉を聞いたことがあるので、ジャックに何らかの執着があるのは確かだったりする。


 ただ、アマレットは一応美女で、侯爵家の跡取り娘だ。


(お姉様、何気にハイスペックなんで、ジャックにその気があるなら、紹介するのもやぶさかではないけど…)


 ――ヒロインが、ジャックを選んだ場合がめっちゃ怖い。


(案外、悲劇のヒロイン役に酔いしれるかもしれないけど…逆もありうるし、そもそも何が起こるか分からない怖さがある)


 もしシャーロット(わたし)が断罪回避できても、アマレット(おねえさま)が悪役令嬢になってしまっては元も子もないので、口をつぐむ私だった


 首を捻るジャックを連れ、私達は教室に向かって歩き出した。




…ジャックとお姉様ルートは、案外面白いかもしれない(ぼそっ)

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