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悪役令嬢はざまぁを夢見る  作者: チョコころね


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55/95

53.アラサー令嬢は把握する

…更新遅れて申し訳ない(_ _;)



 あとからサリーに指摘されました。


「お嬢様が『アマレット様を見習う』とかおっしゃられるから…」

「言ってません!」


 言ってない…そんな怖いこと。





 軽くぱにくってる二人をなだめつつ…


(とにかく、最近はほとんどのお茶会ブッチしているし…)


「そろそろ顔を出すくらいしないと、別の種類の心配されるんじゃないかと…」


 病気がちとか、社交もできないとか――まぁその辺りはすでに(じじい)公爵に言われてると思うけど。

 少し落ち着いたシリウスが、息をはーっと吐きながら言った。


「お茶会では、君は結構『謎の令嬢』扱いになってるから、顔を出さなくてもそれほど波風立ってないよ」

「なんですか、その『謎の令嬢』って…」


 悪役令嬢よりはマシだけど、黒幕とかラスボスっぽい。


「まぁ仕方ないね」


 余裕が出てきたのか、王子がふふっと笑う。


「銀の髪の子がいないんで、君がいるとすぐ分かるし」

「そうですか…。私、この髪だけでも、かなり目立っているのですね」


(そうか、髪か…)


 自分にとっては、すっかり当たり前になってるんで、意識から飛んでいた。

 勿論、珍しいのは知っていたが、髪色だけで特定されるほどとは思わなかった。


(金髪の人は普通にいるから、その中にいれば銀なんて地味かと思ってた)


 下町には金髪も少ないから、髪色を替える必要があったと思ってた自分である。

 今も肩に流れる、黒に染まった己の髪を見る。

 

(実際落ち着くしなー黒髪…)


「お茶会も、黒髪のまま出られればいいのに…」


 思わず、泣き言を言ってしまったら、シリウスがいたずらを思いついたような顔をした。


「…それいいかもね」


 小さい声だったので、王子と私以外に聞こえなかっただろう。


「…もしかして、コレで出られます?」


 私が肩に乗った髪を少しつまんで言うと、「やり方によっては…」との言葉が返る。

 いつもじゃ意味ないが、一度くらい周囲を気にしないでお茶会に出てみたい。

 王子も何か考えているようだ。

 お茶を一口飲んで、カップを下ろすタイミングで、シリウスに囁く。


「…お願いします」


 シリウスはさりげなく、指で丸を作った。


 店内では、紅茶や新しいクッキーの試食、今後の方針を話し合った。

 王子は『通いたくなって困る』とのこと。後ろの護衛の人が密かに頷いているのが見えた。

 シリウスからは『この紅茶は美味しすぎて下町だと浮くから、もうちょっと質を落とすかハーブティのみにしてもいいんじゃない?』との指摘をもらった。


(…うう、紅茶ホンと難しい。お店が町に馴染むまで、ハーブティにしぼったほうが良さそうだわ)





 その後、場所をウチの屋敷で移したあとの相談では、王子が自分も変装してお茶会に出たいと声を上げた。


「殿下は…難しいよ」


 シリウスが顎に手を当てて難色を示す。


「シャーロットは難しくないの?」

「シャーロットの髪の色は、皆知ってるけど、顔は知らない子が多いから何とかなると思うんだ」

「…皆が、知っているのですか」


 思わずどん引いた。

 出席率が2割以下の令嬢の髪色だぞー


「君を見たことのない子が多いんで、噂が独り歩きしてるんだ」

「興味のある子は多いだろうから、話題になるんだよ」


 そう言われれば当然か。

 高位令嬢で、何といっても王子様の婚約者(暫定)だもんね。


「それに比べると、殿下の顔を知らない子は殆どいない」 

 

 ですね。貴族の子弟の社交で、一番初めに覚えないといけない顔だわ。

 否定できない王子も「うーん」と唸ってる。


「分かった、諦めるよ。まぁ僕は、ただの好奇心だからね」

「『王子様』という立場以外から、皆と話したい気持ちは分かるよ」


 ぽんっとシリウスが王子の肩に軽く手を置いた。

 王子がその手を軽く叩く。


「まぁ、君が色々教えてくれるから、不満はないけどね」


 なるほど、王子様の目でもあるんだなぁ、シリウスは。


(ゲームでも思ったけど、この2人の信頼関係強いよね)


 そして今、目の前には、スチルにもなかった、ロイヤルな美少年2人の深い絆を思わせるシーンが繰り広げられていて…。


(…私でも目の保養だけど、前世の友人が見たら興奮しすぎて倒れるレベルだわ)


「…シャーロットは、何か目的があるの?」


 王子から声をかけられ、はっとして、緩んでるかもしれない口元に手を当てながら答える。


「申し訳ありません、崇高な目的とかはないんです…」


 うーん、恥ずかしい。

 まだ12の王子様が、『立場を離れて皆の声を聞きたい』なのに、アラサー入っている自分は…


「ただ、どこにいても誰かに見られている()()のお茶会以外に参加したいなぁ…と」


 身分的に、あちらからこちらへ話しかけるのは難しい。


(そして、私が話しかけると、キョドってどもって逃げられる…)


 王子とシリウスも、もちろんいいお茶会仲間なんだけど、やっぱり同年代の女子とちょっとした話がしたいなぁ、と思うのです。


(お姉様も、もちろん同年代女子なんだけど…話が…うん、合わない…)




 以前、アマレットお姉様に付いて、お姉様のお友達の、伯爵令嬢のお茶会に参加したことがあった。 

 子爵令嬢も、男爵令嬢もいたけど、皆節度を保ちながらもフレンドリーで、


(さすが!お姉様。お茶会クィーンなだけあるわ!)


 と感動したのも束の間。お菓子やお茶の話が一息ついたところで、始まったのだ…ロマンス小説談義が。


『「…涙の石」お読みになった? ヒロインを振り切った異国の魔法使い様、涙が止まりませんでしたわ!』

『「…の果て」の騎士様!あんな方がいらしたら私、どこまでも付いていきますわ!』

『「…もう一度」の伯爵様!あんなに悪い方なのに、私もう!もう!』


 …止まらないマシンガントークの渦に翻弄され、一言も発せず帰宅した。

 それ以降、お姉様とお茶会には行ってない。


 いや、分かります。趣味の話は楽しい。

 自分だって、大好きなゲームの話で夜通しトークしてました。


(でも、サリーがメイド仲間から借りてきて読ませてもらった、こちらのロマンス小説は合わなかった…) 


 大抵、貴族のご令嬢が、見知らぬ男性(最初から身分が高いか、実は身分が高い)に出会い、最初から最後まで翻弄されて終わるのだ。

 男には何らかの使命やら、暗い過去やらがあって、その辺が女性には受けるらしい。

 しかし自分には…


(ヒロインもっと疑えー! そんな男、簡単に信じるなよっ! 箱入り令嬢が外に出て暮らせる訳ないだろーが!)


 …等、ツッコミの嵐だった。

 あと、やたらめったら『運命』って言葉が出てきて、それを聞くと高確率で令嬢がコロッと落ちる。


(何でだーーーー!!!)


 本を閉じた後、脳内で絶叫した。

 シリウスが何かやらかした時の王子みたいに額を押さえていると、サリーが気遣わしげにお茶を淹れてくれた。

 紅茶を一口飲んで、つぶやいた。


「アマレットお姉様が、口癖のように『運命』、『運命』というのは…」

「おそらくは…」


 趣味はいい。趣味を持つことは素晴らしいけど…姉への影響の多大さに、サリーと目を合わせて、大きなため息をついた。








…この世界の『ロマンス小説』がすべてアレではなく、アマレット姉様の好みがアレです。

…宮廷魔法使いのキャリアウーマンが隣国の公子に見そめられて…とかだったらアラサー喜んで読んでたかも。

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