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悪役令嬢はざまぁを夢見る  作者: チョコころね


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52/95

50.アラサー令嬢は運営する

運営=マネージメント


 ノックの音がして、この店で働くウェイトレスさんが、新しいお茶と焼き菓子を持って来た。

 ワゴンをテーブル近くまで押してきて、優雅に一礼をして下がる。

 サーブするのはサリーだ。


「入った時に見た男性用のもだけど、このお店の制服素敵だね」


 去っていったウェイトレスさんを見ていたシリウスが、興味深そうにつぶやいた。


「うふふふ、有難うございます。私と屋敷の皆の自信作です!」


 ねっ!とサリーを見ると、サリーも嬉しそうに頬を染めている。


「お屋敷勤めの者と違って、お店の従業員には『お仕着せ』がないとのことですが、お隣のパン屋と同じ店なのが分かるように、統一した服を作ってみました」

「うん。分かりやすいね」

「とてもかわいいと思うよ」


 ひらひらのエプロンリボンに癒されたのか、王子も少し気を取り直したようだ。


(フリルのついたエプロンと、長めのリボンがひらひらしてかわいいよね~)


 そのエプロンには、三日月っぽいマークとお店の名前の刺繍も入っている。

 貴族邸(ウチ)の侍女服とは布地も縫製も違うが、その分デザインは趣味に走った。


(お屋敷の服もかわいいんだけど、首はしっかり絞めてるし、スカートも足首が見えるくらいの長さだ)


 お店のお仕着せ(ユニフォーム)は襟を大きめにしフリルを付け、首にゆとりを入れた。


(スカートの丈もひざ下で動きやすいように、まぁこの辺は他の店の女性を参考にしたんだけど…)


 試作品を屋敷で作って、後はサイモンに任せて町の工房で作ってもらった。

 この服は工房の女性達にも好評だったが、このお店で店員を見た人達からも問い合わせが入ってきた。


『どうしましょうか?』

『そうねぇ…エプロンだけならいいでしょう。マークと店名はもちろん抜いてね』

『分かりました。今回の場合、デザイン料が発生しますが…?』


 まともに取れば高額になる、とサイモンが匂わせた。


(そうだよね、デザイナーさんのお仕事を軽く見ちゃダメだ…ただ)


『この先、あの形に色々アレンジしたものが出回ると思うのよね』


 服や、ましてやエプロンの飾りは、素人でも簡単に手を加えることができる。

 

(だからこそ、屋敷のみんなと作れたわけだし)


『そういったものすべてに、料金を取るわけにもいかないし』

『…お望みなら、できなくはありませんが』


 ぼそっと言われて、やり方は色々あるんだろうなーと遠い目になる。

 ただそれには、余計な労力や軋轢がかかるだろう。


『そこまで望まないわ。工房で作るものにだけ、サイモンが適当と思うくらいのデザイン料でお願いします』

『かしこまりました』


 パンより先に、お仕着せ(ユニフォーム)に利権(少し)が出来てしまったが、パンにも、もちろん問い合わせは殺到している。

 現在、料理長とサイモンが面接で選んだ()()のパン職人さんを、契約書を交わした上で、『結び目パン』の工法を学んでもらっているところだ。

 あとひと月もすれば、この街と港の方に『結び目パン』を売る店が1つづつ増える予定だ。

 

(地方にも広げたいよね。まずウイザーズ侯爵領地で出店かな)


 理想は、この国のどこにいても食べられることと…


(できれば外国にも…『悪役令嬢シャーロット』が追放されたのって、隣国ってだけで国名出てなかったんだよね)


 いざという時には、工法を書き留めて持ち出すつもりだ。


(着の身着のままで放り出される前に、逃げる準備はしておかなきゃ)


 王子ともシリウスとも上手くやっていると思うし、自分にかなり甘い王様がそこまでするかとは思うけど、()()()()()()()()()()()()()()


 今自分がいるのは、これだけあのゲームの設定で満ちている世界なのだ。

 ヒロインが出てこなかったり、ゲームの強制力が何も発揮されないとは、残念ながら思いづらかった。




「服もそうだけど、このお店で働いている人って、普通に貴族の屋敷で働いていそうだよね」

「あ、僕もそう思った。皆侯爵邸の人?」


 私は軽く首を振った。


「忙しい時は家からも出しますが、殆どがこのお店のために雇い入れました」


 さすがに侯爵邸だけでは、人員不足だ。

 ただ、ここの店員さんには、お茶をきちんと淹れられる事が条件なので、結局貴族邸御用達の斡旋所に頼むことになった。


(守秘義務とかもバッチリあるし、多少経費かかってもその方が安心なのよね)


「見習いとして、侯爵邸でしっかり訓練してから勤めてもらいましたので、私も違和感ないです」

「なるほどね」


 王城はもちろん公爵邸なんかは、平民だけでなく、下級貴族の子弟が侍女侍従として入っていることもある。


(だから王様が…いやダメ!忘れた方がいい!)


 頭に浮かんだ、第二王子様の誕生秘話をあわてて打ち消した。


 あの話を聞いてから、王妃様への見方が変わったが、あちらは相変わらずである。

 そろそろ王妃教育を受けに、お城に通わないといけないのだが…


『妃殿下には、急な来客が…』

『妃殿下は、最近お加減が少し…』


 など理由がある場合もあるのだが、何の理由もなく中止になったりしていた。


 今の王妃様は学園在学中に決まり、それから王妃教育をしたことになっている(実際はその前から色々あったみたいだけど)。


『だから、そんなに焦る必要もない』


 ――というのが『シャーロット排斥派』にとっても、王妃やその周囲を信用できない『ウイザーズ侯爵家』にとっても、『商品開発や経営で時間が足りない』シャーロット本人にとっても都合のいい話なので、なし崩しになくなっている。


 同情はするが、嫌われている王妃様と顔を合わせず済むし、

 無駄になる可能性の高い王妃教育を省略できるし、

 何より、登城する為のドレスやら化粧やらの時間(相手が王妃なら手抜きは許されない!)が本当に無駄だと思うので…

 色々、


(助かった…)


 としみじみ思っている。



ブクマ、評価有難うございます(´▽`)!

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