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悪役令嬢はざまぁを夢見る  作者: チョコころね


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25.アラサー令嬢の婚約状況


「お姉様、お綺麗なのに……」


 これは本当だ。

 シャーロットは銀髪菫瞳というカラーリングで特に目立つが、アマレットの土台も美女のお母様だ。

 平凡な容姿の訳がない(性格が残念なだけだ)。

 シリウスも不承不承頷いた。


「それは認める。装飾をもう少し控えめにして、口を閉じていればコロッと落ちる奴もいるだろう」


 ただ自分はもうダメだ、と付け加えるのは忘れないシリウスだった。


「はは、アマレット嬢の方が、シャーロットよりよっぽど色々やらかしているのに、ハーロゥ公爵は何も言わないんだよね」


 この3人の時は、相当くだけている王子様(そろそろ日常が心配だ)が楽しそうに笑った。


「そのじいさんは、最近機嫌もいいぞ。やらかすなら今がいいぞ、殿下、シャーロット」

「……あ、じゃあ噂は本当なんだ」


 王子はどことなく顔をしかめた。


「噂というと、ハーロゥ公にひ孫様が生まれるという、あのお話ですか?」


 少し前そんな話を聞いて、女の子だったら、じーさん公爵大喜びだろうなーとか思った。


 王子やシリウスによれば、どこでもシャーロット(わたし)の悪口ばかり言ってるらしいけど、ハーロゥ公と実際会ったのは、本当に一、二度だ。

 初めて会ったのは、王宮での婚約式の時。

 険しい目で凝視されたのを覚えている。


(蔑むとか、憎しみとか、そういうのなら分かるけど、驚愕?な感じだったのが謎だわ)


 シャーロットの顔は確かに綺麗だが、あんな風に驚かれるような美形ではないと思う。

 目があったのはそれきりで、以後は目をそらされた。

 お父様は『気にしなくていい』と言っていたが、お母様はさらっと怖いことを言っていた。

 

「あの御方には、私も嫌われてるのよ」


 だから大丈夫よシャーロット、って言われても何が大丈夫か分からない。


 ……何でも、お母様は今の王様の婚約者候補だったらしい。

 歳と家柄から考えれば成程なーと思ったけど、それを邪魔したのがハーロゥ公らしい。


「でも、おかげでシャーロットのお父様と結婚できたのよ!」


 頬を染めて、嬉しそうに娘に語るお母様は、年齢不詳のかわいらしさだった。

 お母様は、魔法学校入学前から気になっていたお父様に、在学中果敢にアタックしたそうだ。


「陛下とお父様が同い年のお友達で、私は一つ下だったの。最初は渋っていたラッセルのお父様も、陛下が口をきいてくれたおかげで、認めてもらえたのよ」


 当時のラッセル公爵としては、第一王子の婚約者にもなれるような娘を、侯爵家の嫁にやるのは抵抗があったのは想像できる。

 今のラッセル公爵は、母の兄に代替わりしているけど、シャーロット(わたし)が王子の婚約者になった時は、とても喜んでくれた。


『シャーロット、本当におめでとう。父上もあの世で、さぞかし…』


 感極まったのか、目に光るものを浮かべる公爵を見て、良心がチクチク痛んだのは言うまでもない。


(ごめんなさい、伯父様!でも、私が破滅したら、たぶん余波は伯父様の家にも行くから!)


 破滅しないように頑張るので、王妃になれなくても許して下さいと、心で手を合わせた。


「イヴリン様は3つ下だったので、学園ではご一緒できなかったけど、かわいらしい方よ」


 イヴリンというのは、スペンサー公爵家出の現王妃様だ。

 ハーロゥ公爵家は前王様のお妃様を出してたんで、自分とこの娘がいたのに、こっちを推したらしい。

 何でお母様じゃいけなかったのかは、公爵家同士の軋轢だろうか?

 本当のところは分からない。


 ……ただ、王妃(イヴリン)様は、お母様が王様の婚約者候補だったの知ってる、というかこだわってるんじゃないかと思わざるを得ない。

 両陛下との対面の時、キンキラキンに着飾った、麗しい金髪の王妃様(かわいらしい方じゃないの!?)は、大ぶりの羽の付いた扇で口元を隠しながら、


『本当にお綺麗なお嬢様だこと。エメラルドは幸せだわ…』


 と、口では褒めてくれたけど、こちらを見る、宝石のような硬質な青い目が怖かった。

 また、お母様がそれに気づいてないのか、もしくは気にならないのか(もしくは()()もかわいらしく見えているのか……)、ニコニコして


『まぁ、光栄ですわ! 有難う存じます』


 って、精霊がひらひら飛んでそうな、明るい笑顔ふりまいていらした。


(空気がピシッと、凍った気がしたんだけど……)


 王子によく似たイケメン王様は、同じようにニコニコしていた。

 お父様は何となく渋い顔してるし、伯父様公爵はうるうるしてるし、じじい公爵は怨念のようなオーラ垂れ流しだし……一言で言って、あの場はカオスだった。


『シャーロット。覚えている訳はないだろうけど、小さい頃一度会わせてもらっているんだよ』

『王子がよくそちらに行ってるみたいだけど、シャーロットも王宮に遊びに来ておくれ』

『花が好きだって聞いたよ。王宮の庭園には珍しい花もたくさん咲いているよ』


 ……親しげに話しかけてくる、好みのタイプの王様(声もとても良い)を、鑑賞する気力すらなくなった婚約式でした。


 後で王子とも話したけど、『生きた心地しなかった……』って言ってた。

 それが普通だよね……

 ……お貴族様、みんなタフだ。




タフでないと生き残れないなら、優しさも常備してほしいアラサー・シャーロットさんだった。

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