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悪役令嬢はざまぁを夢見る  作者: チョコころね


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20/95

20.幼女アラサーは納得する


 ようやく覚悟を決めたのか、シリウスが右手を胸の前にかざす。

 どこかで波がさざめくような音がした。

 すぐに集まりだした光の粒子は、白や薄青、緑がかったものもあった。


(そういえば、水の色って光が決めてるって聞いたことがある)


 いや、それ言ったらすべてのモノは、光が色を決めてるんじゃ……まーどっちにしても、目の前の光景はとても美しい。


「水の精霊様……」


 つぶやくと、パシャッと、体の中で水が弾ける音がした。


 実の所、人間の体は殆ど水で出来ている。

 生まれた時は90%が水で、どんどん減っていくのだ。


(歳を取ると50%くらいにまで落ちるらしいけど、まだ7歳の体だったらほぼ水だわね)


 弾けもするだろう……でも、これが水の精霊の能力だとするとすごすぎる。

 人、生き物の、体の中にある水を操れれば無敵だ。

 それとも自然反応的なものだろうか…… 


『どちらかと言えば反射だな。お前の中にある水が源泉に会えて喜んでいるんだ』


 無意識に尋ねていたらしく、闇の精霊が教えてくれた。

 この精霊様は、こちらの心を読むのも簡単に出来そうだけど、話しかけなければ勝手に口を挟むようなことはしない。


(紳士だ……性別あるかないか分からないけど)


「お初にお目にかかります。シャーロットと申します」


 胸に手をあて、心持ち頭を下げると、シャラシャラ歌うような水音に体を包まれた。

 とても心地よい。


「水の精霊は友好的だね!」


 嬉しそうにつぶやく王子の周囲には、水の線――細く小さな魚みたいなものが見える。


「いや、こんなの初めてだ。前に殿下に会った時だって、何も起こらなかっただろう?」


 シリウスが困惑気味に、王子に訴える。


「あぁ、それは……多分」


 王子は、こちらを見たが、私に心当たりはない。

 あるとすれば……


「私の、精霊様によるものでしょうか?」

「僕はそう思うし、僕の守護精霊も同意している」


 王子の胸元で、火の精霊の粒がキラッと光った。

 宝石のようで、こちらも、とてもキレイです。


「ちょっと待って、二人とも。シャーロットの守護精霊は…その…」


 声を掛けたはいいが、言ってよいのか戸惑っている様子のシリウスに、こちらから言ってしまう。


(少し迷うけど、今更だよね。君も道連れだ、シリウス!)


「『闇』です。シリウス様」


 シリウスの表情が分かりやすく固まって、ほどけた。


「……待って」

「うん」と王子。


「ウイザーズ家のシャーロット嬢の守護精霊は、『土』じゃなかったっけ……?」

「はい」と私。


「少しなら『土』の力も使えます」

「そういう意味では、シリウスや僕が聞いていた、『シャーロットの守護精霊は『土』で、彼女の精霊力は低い』も間違いじゃないんだよ」


「ね!」と、王子と私は顔を合わせ笑った。

 案外、ノリのいい王子様だ。


「間違いだろ! ぜんっぜん間違いじゃないか!」


 パニクるシリウスに、素早く頭を下げた。


「申し訳ありません。私を守るためだと、父が決めたのです」

「君を守るため? むしろ強い精霊を持っていると知らしめた方が、守られるんじゃ……」


 シリウスは、不意に言葉を途切れさせた。


「……いや、そうか。『闇』じゃ強すぎるのか」


 王子が、首を傾げて問いかける。


「強いっていうのは、精霊として?」

「あぁ……『光』や『闇』の精霊持ちが少ないのは知ってるよね?」


 王子と、私もうなずく。


「過去にもあまりいないし……」


 2、300年に1人くらいだったっけ、と王子。

 500年に2人から3人かな、とシリウス。


(ゲームでは千年に一人の設定だったっけ)と私。


「どちらも、現れるときは一人だけだ。そのことから『光』と『闇』の精霊は一つ……一体だけだと言われている」

「なるほど」


 軽い相槌を打った王子を、シリウスはぎろっとにらむ。


「それがどういうことか分かる?殿下」

「……説明してくれる?」

「私からもお願いします」


 シリウスは肩を落として、ふーっと息を吐いた。


「……僕の『水』や、殿下の『火』の精霊持ちは他にもいる。つまり他の精霊は、何体もいて、同じ精霊がずっと守護精霊になってるわけじゃない」


 陛下と、殿下の『火』は別々の精霊だろ?と言われて、王子はうなずいた。


「陛下の精霊が見える時に、僕の精霊もそばにいるのを感じたよ」

「うん。父上と僕の場合もそうだ。そして精霊っていうのは、この世界に長く存在していればいるほど力が強い、という説がある」


 私は思わず口を挟む。


「それはどなたかの研究ですか?」

「記述があるんだ。何代か前のご先祖様が、光の精霊持ちで、書き残したものが家に残ってる。だからこれは、その本からの受け売りなんだけど……」

「後で読ませてね」

「私もついでにお願い致します!」

「……家の外に持ち出し禁止だからなぁ。なんか手を考えるわ」


 話を戻すよ、とシリウス。


「本には、光や闇の精霊は、この国ができた時から、それぞれ一体しかいないって書いてあるんだ」

「……それって」

「長ければ長いほど力が強い……のが本当なら、この国ができた時から存在していれば、強さは相当なものだろう?」


 なるほど、そういうことか。

 光と闇が無双なわけだ。





ここまで、お読みいただいて大変有難く思います!


書き始めて2カ月たちました…あまり進んでないのが気になりますが、これ以上テンポあげると自滅するんで、この調子でのったくら行くと思います(-_-;)


たまに思い出したら、読んでやってください<(_ _)>

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