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悪役令嬢はざまぁを夢見る  作者: チョコころね


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19/95

19.幼女アラサーは手の内を見せる



「なにより問題なのは、スペンサーは今、『ハーロゥ』と仲がいいってことだ」

「ハーロゥ公爵様……」


 思わずつぶやくと、シリウスがゆっくりとうなずく。


「ハーロゥは完全に敵です。脅すわけではありませんが、絶対に近づいたらダメですよ」


 ……『絶対』の言葉が重い。

 何をされるか分からない怖さがある。

 王子も物憂げにこちらを向いた。


「陛下に、僕の婚約を伸ばすように進言したのが、ハーロゥ公爵だよ」

「ハーロゥ公爵は、僕の母方の祖父なんだけど、自分の家から次の王妃を出すこと、全然あきらめてないんだ」


 現在形で王子と歳の合う娘がいないのに、その自信はどこから来るんだろうか。


「そこまで固い決意をして、()()はあるのですか?」


 思わず聞いてしまった。

 シリウスはうーんと唸る。


「……あるとすれば、公爵の息子の娘。僕の従姉にあたる女性が、一昨年結婚したんだ。そこを当てにしてるんじゃないかな、って思ってる」

「その従姉って、どこに嫁いだんだっけ?」

「リンデン候爵家」


 私も、うーんと首を傾げる。


「侯爵家なら私と同じですね」


 同じ侯爵家なら、おそらくウチが家格で負けることはない筈だ。


「うん。いや、はい。だからおそらく、じじ…公爵は自分の養女にするつもりだと思います」


 なるほど。そういうのはアリなんだ。

 それにしても……


「あの、シリウス様。私にも、普通に話してくださいますか? 私も話し方がなってないと、まだまだ注意される身ですが」


 王子にはくだけてて、こっちに敬語というのは、さすがに気になってくる。

 話しづらそうだしね、と王子が笑った。

 シリウスはバツが悪そうに頭を掻く。


「あんまりくだけすぎると、表でうっかり出た時が怖いんだよね」

「それは怖いだろうね、君の場合」


(エメラルド王子と、シリウス様が、悪役令嬢(シャーロット)の目の前で、軽口をたたき合ってる)


 シュールだ……それとも、そういう設定があったのだろうか。

 幼少期は、この三人は仲が良かったと。

 だったらこの先、シャーロット(わたし)が嫌われるイベントでも起こるんだろうか。





『シリウス・クレイフォードは、シャーロット・ウイザーズを告発する!』


 とてもキレイで、とても冷たい声がゲーム機から響く。


(断罪シーンは、スチルの力の入り方も違ってたなぁ。色もキレイで、ヒロインはかわいく可憐に頼りなく、イケメンはもっとイケメンに……)


『ウイザーズ嬢は、王太子の婚約者という立場を利用して、キャロル・グレーテル嬢に対して日頃から嫌がらせを繰り返し、ついには…』

『シリウス様!誤解です!私はそんな…』

『シャーロット嬢。殿下は、もう君の顔も見たくないと…』

『いやあああー…!』





「シャーロット?」


 一瞬ゲームの世界に行きかけた思考を、王子の声がこちらに引き戻した。


「も、申し訳ございません!」

「無理しないでいいからね。いきなり『敵』だなんて言われれば怖いよね」

「ごめん…! 君に直接何かするってことは、ないと思うから!」


 温かい言葉に、自然に笑みが浮かんできた。


「大丈夫です。いざとなれば精霊様が守ってくださいます」


 シリウスが、同情に満ちた顔になる。

 シャーロットの精霊力は、たいしたことないと、()()()()()知っているのだろう。


(王子だけでなく、シャーロットの個人情報もダダ洩れだわ)


 まー、わざと流している分もあるだろうけど。


「シャーロット、王宮に来るときは殿下と、あと僕もいたら君を守れるから、あまり気を落とさないで」

「ありがとうございます、シリウス様」


 心配されているのだと思うと、自然と頭が下がった。


「……でも、私の守護精霊様は頼りになるんですよ。殿下もご存知です」


 シリウスと二人して王子を見ると、彼は少し引きつった笑いを浮かべていた。


「うん、とても……シャーロット、今日は?」


 後の方は小声だ。


「特には、お呼びしてませんが……」


 私は目を閉じて、頭の中で守護精霊に呼びかける。

 もちろん『闇』の方だ。


『呼んだか。愛し子』


 何度聞いても慣れない。

 魅惑の低音ボイスに、思わず腰が砕けそうになる。


「……いらっしゃるようです」

「そうか……」


 どこか遠い目になった王子は、右手をふわっと広げた。


「僕の守護精霊も来ているらしい」


 王子の手の上に、一度見た赤い粒がキラキラと集まってきた。


「相変わらずキレイですね」


 思わずうっとりと言うと、赤いキラキラが瞬いたようだった。


「君にも見えるんだ……?」


 呆然とした、シリウスのつぶやきが聞こえる。

 能力が低ければ、精霊なんて見られない。

 それも超ド級の、王族の守護精霊なんて。


 とりあえずそちらは無視して、私も両手を向かい合わせて、胸の前で広げる。

 ほどなくして、手の間には柔らかい綿のように黒い線がくるくる回り始める。


「前の時より、大きくない?」

「糸を思い浮かべると、このような感じになりました」


 前は、砂のような粒を思い浮かべた。


「……待って、色……え、は?『土』じゃない……?」


 ブツブツつぶやいているシリウスに、王子が知らん顔してうながす。


「シリウスも、守護精霊が来ているなら呼べば?」

「私も、水の精霊様を見てみたいです!」


 無邪気を装い、そんなことを言ってみる。

 いや見たいのは本心ですが。



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