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異世界の鳴く頃に  作者: ろくすけ
一期数会
6/6

第5話 出会い

あれから色々あり、半年が経過した。


時折、共にこの世界にやって来た仲間たちが死んでしまったのに僕はこうして普通に暮らしていて良いのだろうかと思う。


「ジン君、またそんな暗い顔してる」


あれから僕たちは互いに打ち解け合い、下の名前で呼び合うようになった。


「あぁ、伊織ちゃん……ごめん。 少し考え事してた」


「別に謝ることはないんだけど……ただ少し心配になっただけ」


何だか照れくさくなって、思わず笑みがこぼれた


「フフッありがとう、伊織ちゃん。ところで今日一日の予定なんだけど…」


今日こなすクエストの内容を伊織ちゃんに説明しながら僕らはギルドへと向かった。


マリーちゃんの事件以来、あの時僕の元に現れた日本刀はそのまま消えずに僕の手元に残っていた。


「今日はC級クエストのオーガの群れの討伐に行こうと思うんだけど…いいかな?」


「うん、いいよ」


そう、この日本刀と伊織ちゃんの魔法のおかげで僕達のランクはEから一気にCまで上がったのだ。


「じゃあ早速ギルドで受注してくるね」


ーーーーーーー




僕らはしばらく森の奥深くへと歩いていった。


「討伐対象のオーガの生息地はこの森の辺りのはず……あっ!見つけた、あの赤色の角の生えた大きいモンスターのことじゃないかな」


「うん…きっとそうだと思う、依頼書のイラストともよく似てるけど……」


「ん……?? あそこに誰か………人??」


いや、人とは少し違う、あの特徴的な獣耳にフサフサした尻尾……獣人族だ。


「伊織ちゃん!!! あそこにいる獣人族の女

の子……!!!」


「分かってる……!!!」


伊織ちゃんは獣人の女の子に襲い掛かろうとしているオーガに向かって魔法を唱えようとした。


しかしーーー


「ハァ!!!!!!」


獣人の女の子の勇ましい掛け声と共に凄まじい蹴りがオーガの腹に大きな風穴を空けた。


「えぇぇぇぇぇ!?」


「ん?」


ーーーーーーー


「初めまして、私は獣人族のミーナ・ミクリア!ミーナでいいわよ」


「ミーナさんっていうんだね、僕は氷榁 韌。

ジンでいいよ。こっちは、一緒に旅をしている仲間の神崎 伊織さん」


「………初めまして」


僕以外の人にはどうしてこんなに素っ気

ないんだろうか。


「ジンにイオリかぁ、変わった名前ね。旅をしてるってことは随分遠くから来たのかしら?」


「まぁそんなとこかな」


嘘ではない。

本当のことを言っても信じて貰えないだろうし。


「ミーナはこんな所でなにしてるの?」


「呼び捨て…?」


後ろでなにか聞こえたような気がした。


「私は探し物をしているの、私たち獣人族が代々受け継いできた首飾りなんだけど、それを私としたことが途中で無くしてしまって…… それで探してる間にあのオーガに出くわしたの」


「なるほど」


探し物か、どうやらとても大事なものを無くしてしまっているらしいし、このまま無視して依頼達成しにいくっていうのもな…


「ねぇミーナ、余計なお世話かもしれないんだけど…その探し物、僕たちも手伝っていいかな?」


「え、ホントに!?ありがとう!ぜひお願いするわ♪」


フサフサの尻尾をパタパタ振りながらミーナはそう言った。


ーーーーーーー


もう2時間は探しただろう、しかし首飾りが見つかる気配は一向にない。


「中々見つからないなぁ…もう諦めた方がいいのかな…」


「ダメだよ、大切なものなんでしょ?だったら何としてでも見つけないと!」


ニーナは少し驚いているようだった。


「さっき出会ったばかりなのに、ジンは優しいんだね。よし、もう少し頑張ってみよう!」


後ろで一緒に探している伊織ちゃんがいきなりふてくされた顔になった。


やっぱり疲れてるんだ、早いところ見つけてあげないとな。


と、その時だった。


(グルァァァァァ!!!!!!)


近くでいきなりモンスターの叫び声がした。


「この鳴き声は……オーガだ!すぐ近くにいる、来るぞ!」


ニーナの言う通りそこらの茂みからオーガが姿を現した。しかも1体では無い、見た限り10体はいる、オーガの群れだ。

そしてそのオーガの群れの中には一体、他とは違い異彩を放っているオーガがいた。


「あの緑色のオーガ……あんなの見たことないよ⁉︎」


「あれは亜種だ!」


ニーナが言った。


「あれを見て、ニーナ! あいつが手に持ってるのってもしかして……」


「私が探してた首飾りだ!やっと見つけた!」


だが今はそんなこと言っている場合ではない。まずこの襲いかかってくるオーガの群れを何とかしなければ。


「伊織ちゃん、魔法の準備を!」


「うん……!」


僕も腰に納刀していた日本刀に手を掛けた。


「亜種は僕が相手をするから、伊織ちゃんとニーナは周りのオーガを頼む!」


各々が戦闘態勢に着く。

僕は深く深呼吸をした。


「フゥー………今だ……!!!」


伊織ちゃんの手から火の玉が打ち出された、その火の玉は広い範囲に燃え広がりそこに固まっていた複数体のオーガを全て焼き尽くした。


ニーナも再び掛け声とともにオーガを一撃で葬り去っていく。


僕も鞘から刀を抜く……そして抜ききらない間にまた鞘に刀身を戻した。


すでに亜種と、その周りにいたオーガの首は切れていた。


「え……?? 何、今の…… は、速すぎる……まるで見えなかった…!」


ニーナが驚いている。


ーーーーーーーーー


「じゃあ、またどこかで!」


「ああ、今日は探すのを手伝ってくれて助かったわ、ありがとう。 ジン、イオリ」


そう言って僕らは日が沈む中別れて行った。


「今日は勝手に話を進めて、探し物まで手伝ってもらっちゃってごめんね、伊織ちゃん」


「いいの、そういうところだから」


「そういうところって、何が?」


「いや……なんでもない」


? 一体どういうことだろう…………


「とりあえず明日朝早くにでもギルドへ行って今回の依頼達成報告をして来ようと思ってるんだけど」


「じゃあ、私も一緒に行くわ」


「伊織ちゃんも?どうして?寝てていいのに…」


「いいから、一緒に行くの」

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