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異世界の鳴く頃に  作者: ろくすけ
第1章 臥薪嘗胆
4/6

第3話 始まり

(僕にもっと力があればみんなを…)



常闇の空に浮かぶ月が僕らを照らす。



僕の心は怒りと脱力感に溢れていた。



こんなこと考えても何も変わらないのはわかっている。



でも考えずにはいられない。



それほど大きなものを失った。



「食べないとダメだよ」



「うん…」



僕が木でテントを建てる。



この世界に来る前に見たことのあるサバイバルテレビを思い出しながら建てた。



その間に伊織さんは川で釣りをしてくれていた

夜ご飯は魚の串焼き。



なんでだろう。



こんなにも押しつぶされそうな気分なのに

うまいと感じてしまう。



(本当だったら5人でたべてるはずなのに)



今日僕は3人を失った。



僕らを守って死んだ人がいた。



僕を助けるために死んだ人がいた。



誰よりも元の世界に戻りたいと願う人がいた。



そんな彼らを失ってまで生きる必要があるのだろうか。



今戦力となるのは神崎さんの魔法だけだ。



僕が気を失っている間に習得したらしい。



正直僕はいなくてもなんの問題も無い。



(もういっそのこと全部おわんないかな)



「何考えてんの?」



口数の少ない神崎さんが話しかけてきた。



「僕がここにいる意味ってなんなんだろうか、

 僕がここにいても実際何にもならない。

 だって魔法が使えるのは君だけだ、

 僕は君の足を引っ張るだけだし、

 それに僕がいなければ清水さんだって…」

 


溢れ出してしまった。



こんなことを言っても変わらないのに。



僕自身、自分がこんなにもネガティブで自虐的な発言をするとは思わなかった。



「そんなことないと思う、

 あなたがいなければ私も死んでたかもしれない、あなたが死んだみんなのことを思って落ち

 込むのは彼らが望んだことじゃないよ、

 彼らの分まで生き延びないと」

 


(そんなこと言われたら…)



何年ぶりだろうか。



僕は涙を流すなんて。



でもその時に頭に置かれた手はとても温かく大きく感じた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



どのくらい経っただろうか。



僕は寝落ちしてたらしい。



「起きた?」



「うん。ごめんね、色々と」



「うん、私寝るから見張りしといて」



と言うなり彼女は寝床に着いた。

余計な話をしないのは優しさだろうか。



(いや、人見知りか)



そんなことを言い、不覚にも微笑む。

俺は気付くことができなかった、彼女に潜むくらい過去に…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



僕たちはなんとか一夜を開けることができた。



朝食は昨日の夜と同じ魚だ。



朝は少し冷えるため、川の水を伊織さんの魔法で温めて白湯を飲む。



「今日はどうする?」



「え?」



「いや、あなたの方が戦略っていうかそういうの得意そうだから」



「そっか、じゃあ今日は街に行こう。この川を辿ればいつか着くはずだ」



「どうして?」



「こんなに綺麗な水なら街の飲み水とかで使われてるはずだからね」



「やっぱりあなたは賢いのね」



「そ、そんなことないよ…」



人に褒められることはなんともむず痒い。

そんなこんなで出発した。



15分くらい歩いただろうか



「ね、ねぇ」



「ん?」



「あのさ、その……」



どうしたんだろう。

目を合わせず、顔は薄く赤みを帯びている。



「お花摘みに行ってくる…」



「なんでこんな時にそんなことするの?」



「いいから行かして!」



「わ、分かった…ここで待ってるね」



女心というのはよくわからない。



こんなに状況でよくそんなことができるものだ。



3分くらいで戻ってきた。



やはり少し赤みを帯びてる。

が、また気に触るようなことをしたら嫌なのでスルーする。



どれくらい歩いただろうか。



目の前に街のような集落があった。



出入口には



"フィオレーネ"



と書いてあった。



どうやらこの世界の文字は読めるようだ。



そう言えば友達が言っていた。



異世界転生系の漫画はギルドに登録するのがセオリーだと。



そのときはそんなことが起こるわけないし、覚える必要はないと思っていだが、こういう状況になるとありがたく思う。



「な、なんなんだこれは…」



中に入るととても活気のある街だ。

だが、街にいるのはヒトだけではなかった。

耳の長いもの、背が小さくて鼻が大きいものもいれば耳と尻尾があるものもいる。



(あれは、エルフ、ドワーフ、獣人か?)



僕の知らないものばかりでとても圧倒されていたが、元の世界の漫画の知識が多少あるおかげである程度落ち着いていられる。

進んでいくと。



"ギルド"



と書かれた看板を見つけた。

神崎さんに今後の流れを大まかに話し、入る。



そこには木でできた机や椅子が数セットあり、ローブを着た人や、防具を身につけた人などがいる。



左手の壁には



"クエスト"



とかかれたボードがあった。

前方にはカウンターがある。



「あそこで登録できるんじゃないかな」



そこに向かい、受付嬢に話しかけた。



「ここらでみない服装ですね?今日はギルド登録でよろしいですか?」



「はい、お願いします」 



「では、こちらの紙に名前と年齢を書いてお待ちください」



言葉も通じるようだ



少しするとカウンターの奥から綺麗な女の人が出てきた。



「私は当ギルドで受付嬢をやらさせていただいてるシーリスです!」



ギルドの受付をやっているというその女の人は20歳辺りだろうか、僕達より少し歳上に見える。



「ヒムロ ジン様とカンザキ イオリ様でよろしいですね、随分と変わったお名前ですが冒険者登録は初めてということで問題ないでしょうか?」



「はい、大丈夫です」



「了解致しました。それでは、当ギルドについての説明をさせていただきますね。まず、ギルドにはランクというものがあり、ランクは上から順にS、A、B、C、D、Eとなっておりまして、特にSランクの冒険者様はこの世界でも数える程しか存在しません。それと、受けられるクエストの難易度は今いるランクによって変わってくるのでご注意ください」



なるほど、ランクを上げれば上げるほど、より高難易度のクエストを受けられるというわけか。



「当然、難易度が高いクエストはそれなりの危険が伴いますが、その分報酬も上がりますよ。それと、採取クエストなら採取した量によって、討伐クエストなら討伐した数によって、規定の数を超えていてもその分の報酬は上乗せされます」



「最後にクエスト達成の証明方法になりますが、魔物を倒すとその魔物の魔石が出てきます、一体につき一つの魔石がドロップするのでそれをギルドへ持ってきて初めて依頼達成となります。ジン様とイオリ様は今回の冒険者登録が初ということでEランクからスタートとなります、こちらが冒険者カードになります」



シーリスさんから貰った冒険者カードにはさっき書いた名前、年齢と横に大きく『E 』という文字があった、これがランクか。



「説明は以上となりますがギルド、街のことで何か質問はありますか?」



「えっと、じゃあ質問なんですけど、宿ってどこにありますかね?」



「はい、宿はギルドを出て右に行くと見つかると思います。食事は別料金となりますが、この初心者カードを掲示すれば、一泊銀貨1枚が1日宿泊無料になります。温泉入り放題なのでおすすめですよ!ちなみに銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚となります」



「分かりました、ありがとうございます」



冒険者カードを手に、僕達はギルドを出て早速宿に向かった。



「今日はとりあえず街を散策して、昼は森で採った木の実、午後はクエストに行ってみようと思う。と言ってもほとんど君の魔法頼りになるけどね」



「うん。わかった」



どれほど歩いただろうか。

もう日は真上に書くまで登っている。

とりあえず木陰に行き、木の実をかじる。

桃のような柔らかさで、みかんのような味がする



「おにーさん元気ないの?」



後ろから突然声をかけられた。

振り向くとそこには長い耳をもった白髪ロングのアニメやゲームでよく目にする種族、エルフだ。



「君は?」



「わたしはマリー」



とても小さい女の子だ。

10歳くらいだろうか。



「僕は氷榁 韌」



「じん?変わったお名前!」



「マリーちゃん、お母さんとはぐれちゃったのかな?」



「? お母さんならあの中だよ!」



彼女は右手の方にある店を指差す。



「そっか、じゃあ僕たちはもう行くね。ばいばいマリーちゃん」



「ばいばい!お兄ちゃんとお姉ちゃん!」



幼女(?)と別れギルドに行く。



今僕たちが受けられるのは。



薬草の採取 1つにつき銅貨4枚

ゴブリン(2匹)の討伐 銀貨1枚

ポーションの宅配 銅貨2枚



(どれにしようかなぁ)



夕食と明日の朝食分は確保しておきたい。

このギルドはだいたい一食に銅貨4枚あればお腹いっぱい食べれるだろうから、せめて8枚は貰いたい。



「神崎さんはどれがいい?」



「私はなんでもいいよ」



なんでもいいが一番困るとは口が裂けても言えない。



「じゃあ薬草採取にしよう」



薬草採取のクエストを受付に持って行き受注する

聞いた話では森の中にあるらしい。

イラストをもらい出発するその時、テーブルの上に置かれた一振りの剣に目が離せなくなった。



「どうしたの?」



「! あ、あぁ…なんでもないよ」



僕らが店を後にする時、もう一度あの剣のある方に目をやったがさっきまで剣があった場所にはもう何も無かった。

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