紙切れ物語 ー錆びた鋼鉄ー
機械とは、なんでしょうか。
消耗品?それともひとつの生命?
いえ、もっと違う何かだと思います。
私は、人を守るために作られた。
私は、人を集めるために作られた。
私は、人を癒すために作られた。
私は、人の全てとして作られた。
そう思っていた。
『AI』という特別な脳を与えてくれて、私はすごく嬉しかった。今まで以上に、私を作ってくれた人間たちの力なになれると。
あるときは、警備に。
あるときは、チラシやパンフレットを配り。
あるときは、マッサージを。
あるときは、誰かの家に1日家政婦として赴いた。
たくさんの人に、私は愛された。
でも、長くはなかった。
私の体は結局は部品の集合体なのだ。
命は永遠でも、動かなくなってしまう。
動かなくなってしまえば、捨てられる。
残念なことに、修理は人の手がなければ行けない。私の手では届かない部分もあるし、そもそも自己修理する機能が私のモデルにはなかった。
皮肉にも人の命を救う知識はあっても、自分を救う術はなかった。
結局、私は最新モデルの導入増加に伴い捨てられた。
あんなにも、慕われていたというのに。
あんなにも、助けてきたというのに。
あんなにも、そばに居たというのに。
最後に聞いた言葉は「時代遅れの欠陥品」
私は初めて、流せる涙が欲しいと思った。
私はもう、動くことは愚か喋ることも出来ない。
電源が入らないから。
身体中は錆びて、部品が露出しているところもある。所々にコケや蜘蛛の巣も張っている。
周りには、様々なスクラップ品が転がっていた。
皆、もう機能することが不可能なものたちばかり。ちょっと前まで、機械同士で会話もできたが今はそれさえもできない。
私の目の前にある遊具は、何を今思っているのだろうか。
滅びることも知らず、ただ錆びれた自分を見つめながら。
近い将来、僕らは見つめ直さなければならないのかもしれない。
消耗品という言葉を。