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第61話 スオウと美佳と、ゲームの話

 意識を失ったスオウが次に目を覚ましたとき、なぜか体の自由がまったく利かなくなっていた。てっきり自分は空の上に連れていかれたのだと思った。


 実際のところは、まだ地上にいた。スオウは病室のベッドで寝かされていたのだ。体中いたるところに怪我をしており、それで四肢の自由がまったく利かなかったのである。


 怪我の種類は実に様々だった。骨折に始まって、打撲、打ち身、さらには切り傷や擦り傷など、大小様々な怪我を負っていた。その中には銃による傷も含まれていた。


 

 あれだけの大惨事の中で、よくこうして生き残れたもんだよな……。これって奇跡かもしれないな……。



 実際、奇跡としか思えなかった。なぜならば、スオウは遊園地の巨大な観覧車に押し潰されたはずなのだから――。



 そう、あの日、あの場所で――自らの命を懸けた死のゲームが開催されたのだ。



 そのゲームにスオウも参加しており、最終局面で転がってくる観覧車に巻き込まれてしまったのだった。


 にも関わらず、今こうして生きている現実を奇跡と呼ばずして、何と言うべきか。

 

 なんだかとても不思議な感じがした。一度失くした命を、再び生きているような感覚だった。



 ここからがおれの第二の人生のスタートってことかもしれないな……。



 そんなことを思った。


 そうこうしているうちに意識が再び混濁してきた。深い眠りに落ちていく。


 でも、その眠りは決して不快なものではなかった――。

 

 

 ――――――――――――――――



 三ヵ月後――。


 毎日の日課になっているリハビリが終わった。時間にして一時間弱、きっちりと歩行訓練を行った。左右の手で平行棒を掴みながら、一歩一歩前へ歩いていく練習。三ヶ月前までは歩くことすら困難だったが、今では自分ひとりの力でゆっくりとではあるが、なんとか歩けるくらいまでに回復していた。


「さあ、今日の訓練もこれで終わりだ」


 スオウは壁に取り付けられている手すりを伝ってリハビリ室を出ると、自分の病室に戻ることにした。途中の廊下で、何人かの看護師さんと擦れ違った。皆、スオウが頑張る姿を応援してくれている。


 足の状態を確かめながら、病室の前まで戻ってきた。病室は個室である。誰が用意してくれたのか定かではないが、入院費用はもちろんのこと、リハビリ費用やその他の細かい諸費用にいたるまで、すべて前払いで済んでいるとのことだった。こんなことが出来る人間で思い当たるのは、例の2人をおいて他にいない。



 その辺の事情を、ちゃんと2人の口から直接聞いてみたいんだけどな……。



 お金のことだけではない。2人には他にも聞きたいことが山ほどあるのだ。



 もっとも、もう会うことは二度とないかもしれないけどな……。



 だが、スオウの予想に反して、再会の瞬間は唐突にやってきた。


 スオウが個室のドアを開けて部屋の中に入ろうとしたところ、ひとりの女性の姿が目に入ってきたのだ。


 容姿端麗にして優美高妙なセーラー服姿の女性。


 その女性はベッドの脇に立っており、まさに今病室に入ろうとしていたスオウの顔に視線を向けてきた。


「――久しぶりの再会ね」


 玲瓏たる声が室内に響いた。あの夜は前髪が邪魔して一部分しか見えなかったが、今はしっかりと顔全体が見える。


 スオウはその美貌を初めて目にした。その美声も初めてしっかりと聞いた。


「――やあ、久しぶりだね。ちょうど今、君のことを考えていたところだったんだよ」


 一拍置いた後、スオウはその女性に声を掛けた。再会したときはもっと緊張するかもしれないと思っていたが、案外すんなりと言葉を発することが出来た。


「私のことを覚えていてくれたならば光栄だわ」


 スオウと一緒にあのゲームを最後まで戦い抜いた女性――美佳である。


「別に忘れても良かったんだけどな」


 スオウはわざと強がった風を装うと、ゆっくりと病室に入っていった。リハビリの後はいつもベッドで横になって体を休めることにしているのだが、どうやら今日はそういう訳にはいかないようだ。


「立ったまま話すっていうのも疲れるだろうから、そこのイスにでも掛けてくれよ。そもそも、ここの入院費用は君が払ってくれたんだろう? だったら遠慮することはないだろう」


 スオウは壁際に置いてあるイスを指差した。


「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうことにするわ」


 美佳は壁際のイスを掴んで、ベッドサイドまで運んできた。


「こんな本がイスの上に置いてあったんだけど、どこに置いたらいいかしら?」


 美佳がイスの座る部分に置いてあった雑誌をスオウの方に見せてきた。極端に面積の小さい服を身に付けた、魅惑的な身体つきの女性が表紙を飾っている。


「お、お、おい! そ、そ、それは、その……妹が妙な気を利かせて、持ってきた雑誌だからな! おれが自らの意思で望んで買ったわけじゃないからな!」


 スオウは美佳の手から大人向けの雑誌を奪い取ると、布団の下に強引に押し込んだ。いつの時代も、エロ本の隠し場所はここと決まっているのだ。


「妹さん、元気になったみたいで良かったわね」


「なんだか白々しい言い方だな。──君が妹を助けてくれたんだろう? 君以外に考えられないからな」


 スオウはストレートに問い掛けた。下手に回りくどい言い方をするよりも、はっきり訊いた方が早いと思ったのである。


「あなたの怪我の具合はどうなの? まだ万全というわけではないんでしょ?」


 美佳は露骨に話を逸らした。


「――上手く話をごまかしたな。だいたい、おれを助けたのだって君なんだろう? 君以外に考えられないからな」


「口の方は怪我をしなかったみたいね」


 美佳はまたも解答を保留した。


「──まったく、やれやれだな」


 どうやら、この調子だと話が長引きそうな感じである。仕方なく、スオウは美佳と話しやすいようにベッドに腰掛けた。


 ちょうどお互いの視線の高さが同じくらいの位置になる。改めて美佳の顔を至近距離で見ることになった。きりっとした眉毛に、涼やかで、しかし底知れない深さを秘めた瞳。顔に肌荒れの痕は一切無く、陶磁器のような真っ白で肌理細やかな肌をしている。あの日会った美佳とは別人のように見えるが、しかし間違いなくスオウのよく知る美佳と同一人物であった。


「随分と顔が違うように思えるけど、まさか整形でもしたのかい? それともおれが知らないだけで、死神は自由自在に顔を変えることが出来るのかな?」


 美佳の正体が死神だと気が付いたのは、つい最近のことである。


「生憎と、いくら死神でもそんな器用なマネは出来ないわ。ゲームのときは特殊なメイクを施していただけのことよ」


 美佳は自分が死神であることを否定しなかった。


「そんな面倒くさいマネをする必要なんかあったのか? 素顔のままでゲームに参加しても良かったと思うけどな」


 スオウは率直な疑問を口に出して訊いてみた。


「ゲームの最中に参加者から告白でもされたら、そっちの方が面倒でしょ?」


 いったいどこまでが本気なのか判別が出来ない美佳の口調である。


「まあ、君がそう言うのであれば、そういうことにしておこうか」


 これ以上聞いても埒が明かないと思ったので、この話題は早々に切りあげた。


「それで今日はどうしておれを訪ねて来たんだ? おれのリハビリ姿を見に来たわけじゃないだろう?」


「──本来ならば、ゲームが終わった後の対応はすべて紫人の仕事なのだけど、あなたとは私が直接話した方が早いと思って、今日はこうしてお見舞いがてらに来たといったところかしら」


 ようやくここから話の本題に入れそうである。


「それはちょうど良かった。おれも君にいろいろと聞きたいことがあったからな」


 スオウは美佳の顔を見返した。ずっと見つめていると、その美貌の虜になってしまいそうになるので、気持ちをぐっと引き締めて、話に集中する体勢をとる。


「どちらから話す? 死神にもレディーファーストって言葉は通用するのかな? それとも神様よりも前に、人間から話した方がいいかな?」


「そうね、たぶん私があなたに尋ねたいことと、あなたが私に訊きたがっていることは、表裏一対じゃないかと思うわ。だから2人同時に言ってみるのも悪くないんじゃないかしら?」


「なんだか随分と子供染みたやり方だな」


 スオウが死神らしからぬやり方を怪訝に思っている内に、美佳はさっさと話を先に進めていく。


「それじゃ、いっせいのせで言い合うわよ」


「――わ、わ、分かったから、そう焦らせないでくれよ」


「はい、いっせいのせ──」


 美佳が掛け声を出す。



「どうしておれを助けたんだ?」

「どうして私を助けてくれたの?」



 2人はほぼ同時に言葉を放った。奇しくも同じ意味合いの質問をお互いにしていた。


「どうやら、おれたちは同じことを訊きたがっているみたいだな。えーと、こういう場合はどうするんだ? やっぱりレディファーストになるのか?」


 スオウは仕方なく訊いてみた。


「そうね、せっかくだから、私の方から先に質問をさせてもらうことにするわ。その方が話も早いだろうからね」


 美佳は先の展開までお見通しといった感じである。


「分かった。何でも訊いてくれよ」


 スオウは背筋を伸ばして、美佳からの質問を待った。


「――あのとき、どうして私のことを助けてくれたの?」


 美佳の質問は簡潔にして分かりやすかった。


「――君はゲーム中におれのことを何度も助けてくれただろう? だからおれも君のことを助けたまでのことさ」


 スオウも簡潔にして分かりやすい返答をした。


「本当にそれだけなの?」


 美佳が重ねて訊いてきた。


「――あのときも、おれは君に言っただろう? ひとりの命を救う為に、ひとりの命を見捨てるなんてことは、絶対に出来ないってな。それ以上の理由はないよ」


 スオウはさらに言葉を付け加えた。その言葉にウソ偽りはない。


 妹の手術費用を集める為の街頭募金をしているときに思ったことがある。たったひとりの妹の為に、何千人という見ず知らずの人たちが募金をしてくれた。だからこそ、その人たちの気持ちを決して裏切ってはいけないと思ったのだ。もしもあのとき、妹の命を救う為とはいえ、自分のことを何度も助けてくれた美佳のことを見捨てたとしたら、それは募金をしてくれた人たちの気持ちを、さらには妹の気持ちを裏切る行為と同じだと思ったのである。だから、スオウは自分の命を懸けて美佳を助けたのだった。あの判断は決して間違ってはいなかったと、今でもそう確信している。


「あなたはあのとき私の正体に気付いていなかったの?」


 間髪入れずにさらに美佳が訊いてきた。


「おれは最後まで君の正体に気付くことはなかったよ。ゲームの最後で、春元さんが必死になって君のことでおれに何かを伝えようとしていたけど、声が聞きとりづらくて分からなかったからな。でも、今なら分かる。きっと春元さんは君の正体にいち早く気付いて、おれに教えてくれようとしていたんだろうな」


「それじゃ、もしも私の正体に気付いていたとしたら、果たしてあなたは同じ判断をしたかしら? 自分の命を懸けてまでして、『死神』である私の命を助けたかしら?」


 美佳が核心を突く質問をしてきた。おそらく美佳は最初からこれが訊きたかったのだろうと想像が付いた。


「それは……」


 返事に窮した。



 もしも、あのとき美佳の正体が死神だと分かっていたら──それでもおれは美佳を助けていただろうか? それとも美佳を見捨てていただろうか?



 声には出さずに、自分の心に問い掛けてみた。答えはすぐに出た。



 美佳が死神であろうとなかろうと――美佳には絶対に死んで欲しくなった……。それがおれの本心だよ……。


 

 心の中だけでそっとつぶやいた。


 スオウは妹の病気のことがあったので、人の死に対してとても敏感になっていた。美佳とは短時間の関係でしかなかったが、言葉もほとんど交わしていなかったが、それでも目の前で美佳が死ぬ姿は絶対に見たくなかったのだ。


 果たしてその気持ちの正体が、同じ命を懸けたゲームを戦った仲間に対する思いから生まれたものなのか、あるいは友情なのか、それとも愛──。



 いや、そんなことは今さら考えてもしかたがないよな。もうゲームは終わっているんだから……。



 スオウはそれ以上考えるのは止めにした。考えたところで、きっと延々と堂々巡りをするだけだと悟ったのである。


「そうだな――もしも君の正体が死神だと分かっていたとしても、それでもきっと君のことを助けていたと思う。なにせ、死神に恩を売る絶好のチャンスだからな」


 スオウは意図的に冗談混じりの返答をした。


「――それが答えなの?」


 美佳がスオウの目をじっと見つめてきた。スオウの心の底まで見通すような強い瞳の色。


「――ああ、それがおれの答えだよ」


 スオウはイツカの視線から顔をそらして、病室の白い壁を見ながらぼそっとつぶやいた。


「でも、とにかく君も元気みたいで良かったよ」


 さらに早口で、そう言い訳めいた言葉を付け足した。それ以上の言葉はもう言うつもりはなかった。


「――分かったわ」


 美佳は一度だけ小さく頷いて見せた。余り感情を表に出さない美佳の顔に、一瞬だけ人間味ある表情が浮かんだように見えたのは、果たしてスオウの見間違いだったのか、それともスオウの願望が幻覚を見させただけなのか──。


「最後にもうひとつだけ訊かせてもらえるかしら?」


 美佳の顔がまた元の感情の読み取りにくい表情に戻った。


「ああ、何なりとどうぞ」


「私の正体が『死神』だということには、いつ気が付いたの?」


「そのことか。さっきも言ったけど、ゲームの最中はまったく気が付かなかったよ。分かったのは、この病室で意識を取り戻してからさ──」


 スオウは死神の正体に気付くまでの流れを説明した。


「おれは巨大な観覧車の下敷きになったはずだから、死んでいてもおかしくないはずだった。にも関わらず、生きながらえた。だとしたら、おれを助けた人間が必ずいるはずなんだ。そのとき、すぐに頭にひとりの人間の顔が思い浮かんだよ。その人間はおれと同じ観覧車の事故現場にいたはずなのに、なぜか病院にはいなかった。どうしてなのか? もしかしたらあの程度の事故では死なない、特殊な力を持っているんじゃないかと想像することは簡単に出来たよ。では、そんな力を持っている人間とは、いったい何者なのか? 答えはおのずと限られてくる。つまり、その人間こそが死神だという結論に至ったんだよ。──おれの推理はどうかな? 間違っているかな?」


「その言い方だと、答えを導くまでに随分と時間がかかった感じね」


 美佳の言葉は遠回しに正解だと言っているのも同じである。


「入院中の暇つぶしにはちょうど良かったよ。考える時間だけはたくさんあったからな。──でも、どうしてわざわざ死神が自らゲームに参加したんだ? 参加する理由があるとは思えないけどな」


「私は現場でゲームの進行状況の確認をしていたのよ。ゲームが滞りなく進むように参加者たちを上手く誘導したり、反対に、参加者の誰かが勝手な行動をしないように看視したりと、これでも結構気を配っていたのよ」


「それじゃ、最初に君がヒカリたちのグループに加わったのも、その為だったっていうのか?」


 美佳はスオウたちグループとレストランに残らずに、ヒカリをリーダーとしたグループと一緒になって外へと出て行ったのだ。


「そうよ。レストラン内に残ったグループは動きが限られてくるから、看視の必要はなかった。反対に、外に出て行ったグループはどんな行動をするか分からないから、私も一緒に付いて行くことにした。もっとも、私がゲームの進行を手助けしたのは、ほんの少しだけよ。皆、上手い具合にゲームの流れに沿って行動をしてくれたお陰で、私が手を出す必要はほとんど無かったから」


「つまり、おれたちは最初から君の手のひらで転がされていたわけか?」


「いいえ。それは断じて違うわ」


 美佳の語気が少しだけ強くなった。


「場面場面で最終的な判断を下すのは、あくまでもゲーム参加者自身の意思に委ねられていたはずよ。その判断をこの目で見届けることこそが、『死神』である私の大事な仕事なのだから。『死神』が公平なジャッジをしないと、命を懸けたゲームがただの殺し合いになりかねないでしょ?」


「なるほどね。案外しっかりとした考えを持っているんだな。死神ってやつは簡単に人の命のやり取りをするような、もっと適当な存在だと思っていたよ」


「──偉そうに言ったけど、人の命をやり取りしていることに代わりはないわ」


 美佳の視線が何も無い病室の白い壁にさっと向けられた。きっと美佳にしか分からない景色を見つめているのだろう。今のスオウには美佳の視線に込められた真意を読み解くことは出来なかった。きっと人には理解出来ない苦労が死神にもあるんだろうなぐらいしか思い付かなかった。


「――君の質問が終わったならば、今度はこっちの質問に答えてくれるかい?」


 スオウは美佳に対する思いを断ち切って、自分の質問に移ることにした。


「どうぞ、何でも質問してくれて構わないわよ」


 美佳の視線が再びスオウの方に戻った。


「どうして観覧車の下敷きになったおれを助けたんだ?」


 それがスオウが一番訊きたかったことである。


「簡単な話よ。あなたにさっきした質問の答えを、直接あなたの口から聞きたかったから。だから観覧車の下敷きになって、生死の淵を彷徨っていたあなたのことを助けることにしたの。それ以上の深い理由は特にないわ」


 スオウでもそうと分かるくらい不自然な説明だった。ここまで理路整然とした話し方をしてきた美佳には似つかわしくなかった。


「本当にそれだけなのか?」


 今度はスオウが重ねて訊き返した。


「他にあなたを生かすことに、どんな理由があるっていうの?」


「――分かった。そういうことにしておくよ」


 美佳もまた本音を吐露しているようには到底思えなかったが、これ以上問い質したところで答えないことも分かりきっていた。なにせ相手は死神である。


「じゃあ、妹の手術のことはどう説明するんだ? そもそも、おれはゲームに負けたはずだろう? それなのにどうして妹は移植手術をすることが出来たんだ?」


「そうね、あなたはゲームの最中に、何度かわたしのことを助けてくれたでしょ? いつ爆発するかもしれないバスの中に残されていたわたしのことを助けてくれたし、ゲームの最終盤――観覧車が転がってくる場面でも、自らの命を投げ打ってまでして、私のことを助けてくれた。まあ、そのお礼といったところよ。あなたはゲームの勝者にこそなれなかったけれど、命を投げ出して他の参加者を助けたことによって、敢闘賞を獲得出来たっていえば分かりやすいかしら?」


「その敢闘賞の賞品が、妹の手術費用ってことなのか?」


「そんなところかしらね」


 美佳の話はひどくお座なりな説明に終始した感があった。その点についてさらに深く追求することは出来たが――。


「──それじゃ、ありがたく賞品を受け取らせてもらうことにするよ」


 でも、スオウはあえて詳細を訊くことはしなかった。


 すべてはもう終わったことなのだ。今さら蒸し返したところでどうなるものでもないのだから――。

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