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レッドライン・クロスオーバー  作者: /黒
《エピローグ》『悪夢から覚めた日』
31/33

1.

 曇天が覆う空の元、小田嶋はそこにいた。隣に、いつもの相棒の姿は無い。彼女は今彼が担当をしている事件にて、消えた。


 そう、文字通り消えた。跡形も無く、痕跡の一片も残すことなく。


「小田嶋さん、やっぱ外れたほうが――」

「ん、あァ? 何でだよ」

「その――あんまり、お顔が優れない、と言いますかぁ」


 若い新米刑事の男性は、小田嶋の様子をおっかなびっくり伺うような様子でそう言った。

 そんな彼の様子を見て、エプティ刑事に言われたことを、小田嶋は思い出す。あなたは、顔が怖い、と。


 だが、そうではない。自分は、おおらかで優しい男だ。小田嶋は、恐々した様子の刑事に、努めて明るい顔を作って応える。


「がははっ、大丈夫、俺は大丈夫だ」

「でも、その――美女と野獣コンビは。その、エプティ刑事は小田嶋さんの、こ、こここ、」

「こ?」

「恋人――」

「ちゃうわいっ!」

「ひぃ! し、しっつれいしましたぁ!」

「――ったく」


 エプティとは、そう言う関係でなかった。小田嶋は少なくとも、そう思っている。むしろあの女性刑事には、もっと良い男が隣にいたほうが絵になったろうと、思っているくらいだった。


 ――小田嶋は足元を見る。下はただの土。周囲にも、一切建物の類は無い。


 それもその筈。この場所はU思考媒体が破裂し、周囲の全てを消し去ってしまった後に出来上がったその跡なのだ。大きく抉れ、土の地面だけが残っている。

 およそ、半径200m。小田嶋が目を覚ました時には、辺り一帯がこのようになっていた。何もかもが消え、自分だけが何故だか残されていたのだ。


 座標的にはピンポイントと言うことで、先日に電波ジャックで割り込まれた中継映像とも、関連性が疑われている。

 謎の黒球。消滅した街。小田嶋は、唯一現場にいた証人という役柄を兼任しているのだ。


 小田嶋は、捜査本部に自分の見聞きしたこと全てを伝えた。しかし、結果は信じてもらえず、今は警官総出で、逃亡したヒトや関係各所へと話しを聞いている最中だ。


 ――何故、証言を信じてもらえない自分がここに居るか。それは、時が経てば明確に思い出してくれる、という期待が成されていることが理由、と考えるべきだろうか。普通、そんな錯乱状態の刑事は外すべきだろうに、案外上も適当であると小田嶋は思う。


 なお、本庁は現在、救済機関リ・アクティヴィティ崩壊事件にも大わらわだった。そう考えると、ただ単に人数が足りないだけなのかもしれない。やはり、適当のようだ。


 ちなみに、件の新興宗教団体の事件は、上はごく少数で行われた可能性を示唆し始めたところだった。先はまだまだ長そうだと、小田嶋は思った。


「――あいつらも、この場所と一緒に消し飛んじまったのか?」


 小田嶋は、空を見上げて考える。

 そして、すぐにそんな筈はないなと、鼻を鳴らした。自分が生きているのだ、あの殺しても死なないような二人に、そしてそれに守られる天才少年が消滅など、その可能性を頭に浮かべる方が、よっぽど信じがたかった。


「だったら、今度こそひっ捕まえてやらなきゃな」


 例えどんな理由があろうとも、霧仁 奏瑪は犯罪を行った。すなわち、彼は法の裁きを受けるべきであり、それから逃れてはならない。

 それに。彼が人生で受けた仕打ち。それは、世の中で知られるべきだとも、小田嶋は思った。

 少年が何であれ、犯罪に走ったのは、この世界にところどころささくれ立った障害のせいである。彼のような悲しみを生まないためには、その存在が世間に知られる必要があるのだ。


「じゃなきゃ、あいつも納得しねぇよな」


 小田嶋は、曇り空を見上げた。流れる風が雲を飛ばし、天から晴れ間がのぞきつつあった。


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