7.
灰色の町。灰色の景観。灰色の活気。全てが全て、陰鬱な雰囲気すら灰色で言い表せてしまえそうな、都市から外れた郊外に位置する、そんな一軒の家屋。
いや、家屋と呼ぶのも、家屋には失礼に値するかのような、そんな一軒の建物。豆腐をまるで鼠色に塗り、申し訳程度に窓を付けたようなその建造物。
そこに、音も無く扉を開けて入り込む、一人の白い影。
白い影は、この家に住まう主と対面することを、ずっと待望していた。心の底より。否、刻み込まれた意志が、ただただひたすらにそれを求め、その身体をここまで動かしていた。
足を進める。足が速くなる。この先に、自分が求めていた人物がいるのだと、思わず足の動きが早くなる。
何故なら、それはそれにとって全てであったから。全てであるから、全てを持って、全てを賭けたくなる。全てがそこにあるから、全て、全て、全てが行動原理を支配する。
『自ら』の意思とは、全くの無関係に。
「ふふっ、待っていたよ。君が来るのを、ね」
霧仁 奏瑪は、自らの書斎の戸を開いたそれを、迎え入れる。
いたって普通――いや、少々線の細いその少年。彼は20にも満たない年齢でありながら、大きな机について、そして重厚な椅子に座る姿が様になっていた。
まさしく、この家の主――いや、このまま進み続ければ、世界の全てを知り得る、その可能性を持ちし人間。
とある人は、彼の身体の生まれと育ちから、排除を試みた。
とある人は、彼の高度な知能から、排除を試みた。
とある人は、彼の特異な行動から、排除を試みた。
世界の一部を紐解き、しかしそれを行った者が彼であることは一握りの存在しか知らず。
しかし知らしめることはせず、恐れられたがために他者を恐れ。
自らの内で、どくどくと渦巻く闇を、一人孤独に育て続けてきた。
少年。首に赤いリボンを首に巻いた、少年。
「久しぶりだね、『ロア』」
「ええ、お久しぶりですわ。奏瑪」
霧仁 奏瑪と『ロア』は、数年ぶりに及ぶ互いの再会に微笑んだ。




