第10話:旅立ち
パタヤ村門の出入り口ではエンシェントドラゴンから村を救った私達の出発を見送る人たちで溢れていた、私は召喚したヴィヴィちゃんと卵から孵ったシェラちゃんを伴って魔王城に向けて出発する運びになりました。
「今までお世話になりましたみなさんお元気で」
「もう行くのか……寂しくなるな」
赤くなった鼻を擦るマードックさん
「マードックさんまた来ますから大丈夫ですよ」
「マオちゃんゴメンね」
私がドラゴンと戦う原因になったミシュルさん
「ミシュルさん大丈夫ですよおかげでヴィヴィちゃんやシェラちゃんに会うことができましたからね、災い転じて福と為すですよ」
なんの因果か召喚されてしまった前魔王ヴィルヴィンドさん
「マオよ一応妾はお主よりも年上なのじゃぞ、それをヴィヴィちゃんとは……」
一連の流れを作ったエンシェントドラゴンのシェラちゃん
「キュル〜〜♪」
「ヴィルヴィンドさんは魔力節約の為に小さくなってて、見た目幼女なんだからヴィヴィちゃんで良いじゃないですかとても可愛いですよ?」
「妾はもう魔王では無いし召喚主のお主には逆らわんが……勝手にせい」プイ
その他は宿屋の女将や雑貨屋のお姉さんや野次馬連中がにこやかに話しかけてきた、村の皆さんは私が魔王と知っても驚きはしたが対立する事は無かった。
実はマードックさんが裏から手をまわしてくれていたらしく、魔王本人から聞いた魔王と勇者の対立の真相を村人全員に話したそうだ。
村人は皆女神の暗躍に憤慨してくれ私を応援してくれた、ヴィヴィちゃんのギルドカードも作ってくれた、いずれこの村に何かしらの形で恩を返したいと思う。
ちなみにヒャッハーさんはヴィスさんを目にした途端五体投地していた。
ー6日前ー
時は遡り封印が解けた後のこと
封印を破壊したら大きなエンシェントドラゴンはいなくなり目の前には卵が置いてある、えっとどういうことだろう?
「ほぅ〜あれらの攻撃で消滅させる事なく守りきるとは流石は我が後継者よ」
「あ、アレはなんですか?」
「見たまんま卵じゃよ食べるか?」
「食べませんよってか食べれるんですか?」
「食べれるぞエンシェントドラゴンの卵は食べた者の寿命を延ばし若返らすと言われ、大昔は乱獲されておった……その様な効果なんぞ無いのにな」
……ひ、酷い⁉︎
「昔の権力者は他人よりも秀でていたい贅沢をしたいとかなり顕著だったからな、自分の欲望に忠実だったんじゃよそれよりも卵をどうする?」
「どうしたら良いですか?」
「このままほっとけばいずれ復活はしようが母親がおらんし死ぬ可能性が高いな、そのうち魔獣共も戻ってくるじゃろ」
「わ、私が育ててはダメですか? このままここに残していくよりはマシだと思います」
「かまわんじゃろただし責任を持って最後まで面倒はみんといかんぞ、古龍種とはいえただの魔獣とは文字通り桁が違うんじゃからな」
「はい分かりました、ちなみにどうやって運びましょうか?」
「普通に持って行くしかあるまい、殻自体は結構な強度があるから多少は乱暴に扱っても割れはせんが、後で卵に魔力を与えて揺さぶりを掛ければ早めに復活はするじゃろ」
「……2人とも元気なら回復を掛けてくれ……死にそうだ」
「ああ……お花畑が見える」
っあ⁉︎ お2人を忘れてました、お2人とも血塗れの虫の息ですよ。
「ふー助かったぜ」
「お手を煩わせてすみませんでした」
「こちらこそすみません、お陰で助かりました」
「妾が全盛期の状態なら妾1人でどうにかできたんじゃが流石に召喚直後じゃし、かりそめの身体じゃサポートが精一杯じゃ」
「流石は魔王様ですね私もいずれ同じようにならなきゃいけないんでしょうか?」
「いやそんな事はないじゃろ? ま、強くなるに越した事はないがな、それに妾は元魔王じゃ今はお主が魔王じゃろ?」
「そうなんですよね私って魔王なんですよね、人族と敵対者なんですよね、私も人殺ししなきゃいけないのかな?」
「ん? なんで人殺しをするんじゃ? 別に人族と敵対しなければいけないなんぞ無いわい」
「え? でもお城で魔族の所為で人族が窮地に陥ってるって……」
「そういや聞きたい事があったんだがどうして魔王は勇者に討たれたんだ? 特に魔族が攻めてきた事は無いんだが、まぁ魔獣の活動が活発化していたがそれだけだったぞ?」
「それは妾も詳しくは知らんのじゃ、突然勇者が攻めてきて魔獣の活発化は妾の所為だと難癖を付けて攻撃をしてきたんじゃ、その証拠に妾が討たれても以後さほど魔獣の活動は変わらんじゃろ?」
「確かに魔王が討たれて早150年、活動自体は緩やかになってはいるが討たれる前とさほど変わらねえな」
「妾は話し合いを設けようとしたんじゃが聞く耳を持たんし、仕方無しに勇者と対決して負けたという訳じゃ」
勇者ってなんなの⁉︎ 話し合いもしないで一方的に魔王を悪者にするなんて、ヒドイ! 許せない! これじゃいつか私と一緒に召喚された友達と対立する事になっちゃうわ
「恐らくじゃが勇者の背後には女神が暗躍していたと思うとるよ、あ奴は昔から自身になびかない奴は全て異端じゃと言っておったしな、たぶん勇者との戦闘の時に勇者に憑依して力を貸していたんじゃろ、全盛期の妾が人族如きに勝てぬわけよ」
「マジかよ……アルメイア様がそんな事を……」
「まぁこの事は言いふらしても構わんのじゃが……」
「言ったところで誰も信じねえよ、俺もこうして元魔王本人から聞かされなきゃ、今でも信じている気がしねえさ……」
「と、とりあえず村に帰りますか? 村までけっこうありますし」
「そうですねではお姉ちゃんたる私が馬車を探してきます、たぶんあの戦闘で逃げてると思いますし、逃げてなければ旅の足に欲しいくらいですけどね」
ー6日後 明朝ー
あとは行きと同じ様に馬車で5日掛けて村に戻り一泊して今に至る、エンシェントドラゴンのシェラちゃんは帰りの馬車で魔力を与えていたら復活した。
封印が解けた時に卵だったのは死ぬ一歩手前であったため若返る為に力を凝縮した為に卵状態になったんだろうとのヴィヴィちゃん談。
卵から孵ったシェラちゃんは私を見つけると側に寄り戯れてきた、封印から助け出した事は覚えていたらしく感謝している想いを感じた。
ちなみにちゃん付けなのは性別が雌だからだ、戦闘時の迫力からてっきり雄だと思ってたのに、名前を付ける時に君付けしたら微妙な顔をされました。
「さてそれではそろそろ行きましょうか?」
「そうじゃの道中でマオのレベル上げも兼ねておるしな、それでは魔王城に向けて出発じゃ!」
っえ! マジっすか⁉︎
「それじゃあ皆さん行ってきまーーす」
こうして私は村の皆さんに見送られつつ魔王城に向けて村を出発した出会いと別れは一期一会、別れは淋しいけどそれを糧に私は少しでも成長できていたらいいなぁと思うのであった……主に胸的に。




