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フランケンシュタインの話は、ア―カード君。
もちろん、きみも知っているだろう?
研究所で目覚めたその存在は、実は名前を持たない。
後の世では『フランケン』・『フランケンシュタイン』の名のほうが、その存在を指し示すようにもなるが……まあ、それは今この場では、どうでもいい話だ。
その怪物を生み出したヴィクター・フランケンシュタインは、墓を荒らし、死体を寄せ集めて“不死身”の肉体を持つ『完成された人間』を作った。十一月のもの悲しい夜だったそうだよ。
だが、生み出された怪物は、その死肉をツギハギに縫いつけたおぞましき風貌――人間のそれとは程遠いカタチに、酷く絶望したそうだ。それは創り出したヴィクターが恐れを抱き、逃亡するほどに醜いそれだったらしいね。
生みの親に捨てられた怪物は、嘆き、そして苦しんだ。
当然だろう。
己れの醜さゆえ、人間たちからは忌み嫌われ、迫害されたのだからね。どれほどの孤独の中で、どれほどの絶望の中で、自己の存在に悩んだか……それは健常者である私たちには、到底理解出来ない領域だったに違いない。
やがて押しつけられた不条理は怒りへと形を変え、矛先はおのずとヴィクターへと向けられる。怪物は、せめて伴侶を――つまり、自分と同じ怪物の恋人の創造をヴィクターに要求するが、それを断られ復讐を決意する。
……創造主たる人間に絶望したんだろうね。
怪物は復讐のため、ヴィクターの友人や妻を次々と殺害し、そして姿を消した。




