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「……なんで」
一抹の不安と盛大な混乱を胸の中に収めつつ、俺は努めて冷静に訊く。
「なんで俺は、こんな格好をしているのでしょうか?」
隣にはリシェルさんがいた。
俺の隣にはリシェルさんがいた。
その距離三十センチくらいのところに、俺のリシェルさんがいた。
うわーい!
いやっほうっ!
……と、普段の俺だったら、それこそ手放しに喜んだりしただろう。あるいは、緊張に潰されて盛大にうつむき、心臓をバクバク唸らせながら、彼女をチラ見しまくったに違いない。
けれど、いまはちょっと状況が悪い。
決まり悪そうな俺の問いに、しかし、リシェルさんは飄々とした具合に小首をかしげて見せる。
「あら? とてもよく似合ってると思うけど……」
似合ってる。
「可愛いわ」
可愛い。
「あなたのドレス姿――」
ドレス姿。
「……………………」
そう。
それが問題なのだ。
つまり言うと、俺はいま女装をしていた。
フリフリのスカートの短いドレスを着て、頭にリボンまで付けて。
まるで変態のように。
「…………うん」
状況が全く理解出来ないだろ?
安心してくれ。
俺もだ。
どうしてこうなった……って頭ん中いっぱいだもん。
だから現状確認の意味も含め、努めて冷静にこうなってしまった経緯を話そうと思う。




