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十代自選作品集「琥珀」

桜の木の下で。

作者: しゃーな

桜の木の下で。

僕らは出会った。

こんなに不思議な感情がこの世界にはあるのだと知った。

いつか忘れてしまうかもしれない。

でも、忘れたくない。

心から、この日を大切にしたいと思った。

だから。

写真で残すことにした。

「楽しみだね。」

4人でそう言って、笑いあった。

今でも覚えている。

また今年もその日が来る。


僕は、白井賢人しらいけんと

一緒に話しているのは、菊田麻里きくだまり桜川和さくらがわなごむ青樹翔あおきかけるだ。

小6の時、僕らは初めて同じクラスになった。

でも、もう親友だ。

僕らには、毎年恒例のイベントがある。

それは、「出会ってから、〇年」記念だ。

僕らが出会った桜の木の下で、写真を撮る。

その写真を印刷して、「出会ってから、〇年」という文字をかく。

その他は自由で、ほぼ落書き。

でも、そんなふざけあう時間が、僕にとって、最高の時間だ。


小6の3月。

「出会って1年」卒業式のあとにやった。とびっきりの笑顔が写真にうつっていた。

中1の3月。

「出会って2年」和だけ別の中学に行ってしまったから、休日に集まった。みんな大人っぽくなってたな。

中2の3月。

「出会って3年」もうすぐ中3ってことで、盛り上がったな。勉強が難しかったり、友達関係がうまくいかなかったり、マイナス発言をたくさんしちゃった。

中3の3月。

「出会って4年」卒業式がたまたま同じ日だったから、卒業式のあとにやった。いろいろ思い出しちゃって、みんなで泣いた。

高1の3月。

「出会って5年」もう英語もだいぶ話せるようになって、なぜか英会話やってた。僕と翔は、麻里と和に勉強を教えてもらってた。

高2の3月。

「出会って6年」テストの点数が悪くなってきて、会う機会がへった。だから、久しぶりだったな。中2の3月みたいに、もうすぐ高3って、盛り上がった。

高3の3月。

「出会って7年」もう卒業か、ってなったよな。いろいろあったから、卒業式で泣いた。

19歳の3月。

「出会って8年」みんなアルバイトの愚痴ばかりこぼしてたけど、いろいろ話せて楽しかった。

20歳の3月。

「出会って9年」もう付き合ったりして、麻里と和は恋バナとかやってたよなー。成人式でも会ったけど、着物が似合う立派な大人になったよな。


あなたには、大切な思い出はありますか?

いつまでも心の奥にしまっておきたい大切な何かはありますか。

楽しかったこと、悲しかったこと、いろいろあるかもしれません。

でも、残しておいて。

消してしまったら、取り戻せなくなる。

僕は死んだ。

20歳の4月に。

出かけるときにのったタクシーが事故にあった。

初めは、

(誰も悲しむことはないだろうから、別にいいか。)

そう思っていた。

でも。

僕のお葬式には、もちろんあの3人も来ていた。

その3人は泣いていた。

「もどってきて。」

そんな声が聞こえた気がした。

だから、僕も泣いた。

もう必要ないなんて思わない。

今を一生懸命生きていたかった。

その願いを。


あなたに託します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 亡くなった主人公の回想という形で描かれているのですね(^^♪ 淡々とした語りが、話の雰囲気を作っているように感じました。 執筆がんばってください(^^♪ [一言] 初めまして紫生サラと申…
[良い点] 文章が…綺麗すぎる… [気になる点] なんか順番ごっちゃじゃないかな? [一言] 大きな桜の木の下でー。
2015/03/13 18:17 退会済み
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