表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猛女リエナの野望  作者: 天羽音彦
第一章
8/18

第七話 名誉と剣と

いま、グラハムはヴェンツェルとリューネさんからお説教を食らっている。

当然だ。”名前の言えないあの人”みたいな扱いだったのに、いきなりバラすんだもんな。相変わらず空気が読めない男だ。

まあ、そのおかげで俺は昨日、洗面所で出会った綺麗な紫の髪の美少女の名前を知る事が出来たわけだから、それだけは感謝しておこう。


しかし、グラハムの言葉の中にあった不穏な言葉のせいで俺の頭は少し混乱していた。

なんで貴族の、それも領主の縁者がリエナの侍女をしていたんだろう。でも、それならば今までの侍女1号の態度も行動も腑に落ちる。

そもそも侍女を扱う側の人間だったんだから、侍女?なにそれ美味しいの?ってやつが仕事なんて出来るわけない。それに、あの真面目なリューネさんが理由もなく部下の不行き届きを見て見ぬふりをするわけがないしな。

極めつけは“元伯”だ。当然、そんな言い方はないし、普通はしない。


この世界の伯爵号には、伯爵と宮中伯の二つがある。

前者は地方に所領を持っている領主様のことで、普通は独立国家の君主として扱われる。つまり、オラが村では伯爵は“王様”であり、伯爵領は“伯国”というわけで、領民からは“陛下”と呼ばれることすらある。

後者は皇帝直属の伯爵様のことで、文字通り帝都や皇帝宮に住まいを与えられて給料で生活しており、特定の所領は基本的には持っていない。領地は持っていないが、帝国内において大臣相当の権限を持っており、帝国以外の諸外国に対しても顔が利く。

じゃあ、元伯ってなに?言葉通りなら元伯爵様がいらっしゃった、ということになる。

そんな爵位をいきなり貰っても大丈夫か?大丈夫じゃない。問題だ。

リエナの胃がキリキリと痛み、いま、俺はその苦痛を共有している。


ひとしきり説教が終わったところでヴェンツェルから深いため息が漏れる。

「フロイライン、事ここに至ってしまっては致し方あるまい。姫殿下に全てをお話した方がいい」

ヴェンツェルの言葉にリューネさんは小さくうなずく。物凄く言いにくそうにしている。うん、分かるよ。出来れば俺も聞きたくないから。

「フロイライン……」

ヴェンツェルに促されて、リューネさんの可憐な唇が重々しく動いた。


掻い摘んで説明すると、まず、マグナブルク大公国は現在、他国と戦争中だ。その数ざっと6カ国で、おまけに敵勢力はさらに増えつつある状況だ。

相手は全てヴェストリア帝国を構成している諸邦領主たちで、つまり帝国内の内輪もめで荒れに荒れている。

その原因は……すべてマグナブルクの猛女に端を発していた。

「大公殿下はアントーニア様を“猛女”と揶揄した諸侯とことごとく断交して戦争をお始めになりました。その第一の矛先に挙がったのがヴェンデン伯領だったのです」

Oh……

ヴェンデンはマグナブルクから見てダレアス大公国を挟んで北東の地にある。東の軍ヲタ国家ガルマニア王国と国境を接する要衝の地であり、バンディアル要塞を擁する帝国にとっての最前線にあたる。


「殿下の怒りはただ事ではございませんでした。宣戦布告の特使を送った翌日には周囲のお諌めも聞かずに一軍を率いて首府を発し、途中、何度も特使を追い抜いたそうです」

「ファッ!?」

宣戦布告前に相手を攻撃するのってご法度中のご法度ではないだろうか。ニイタカヤマ登りすぎだろ殿下。

結局、この抜きつ抜かれつのデッドヒートは外交特使を務めたリーデハルト男爵が、紙一重の差でヴェンデンに着いてどうにか面目を保った形だ。

今度はヴェンツェルが苦い顔をする。

「それを間に合ったと言うかは実に微妙だ。他国の目から見れば宣戦布告の使者が軍勢を率いてやってきたようなものだからな」


ごもっとも。事実、帝国内ではこの行為が問題視され、事態を憂慮した皇帝がナーハウ宮中伯(帝国外相)をわざわざマグナブルク、ヴェンデン両国に派遣したほどだという。

しかし、昼夜を分かたず駆けつけたナーハウ宮中伯がヴェンデンの地で見たものは……

「バンディアル要塞に翻る鷲の大旗だったというわけだ」

ヴェンツェルが僅かに天を仰ぐような素振りを見せる。

陥落までわずか4日だったそうだ。いかに国力が8倍違うとはいえ、相手は帝国屈指の要害を持っていた筈だ。きっと怒りに任せて味方の被害を厭わず連日連夜の総攻撃をかけ続けたに違いない。

あのオッサン……リエナのことになるとどんだけ見境ないんだよ……

これはもはやモンペというレベルをはるかに超越している。キモオヤジではあるが、愛娘を大切にする優しい父親、という俺の認識は音を立てて崩れていく。


ナーハウ宮中伯は青ざめた顔でヴェンデンの州都メサを目指したが、その道中は目を覆いたくなるような惨状だったという。

「女、子供とて容赦がなかった、と聞いている……」

ヴェンツェルによると、しばしば怨恨が原因の紛争では徹底的に相手を痛めつけるのだという。俺は二人の話を聞きながら背筋が凍る思いだった。

この世界の文化・技術水準は、俺の元いた世界における中世ヨーロッパに酷似している。兵糧は現地調達という名の略奪で賄われたことは想像に難くないが、相手は異教徒でもなければ外国勢力でもない。

諍いがあるにせよ、仮にも同じ帝国諸侯だ。殊更に殿下が猟奇的というわけではないが、明らかにやりすぎた感は否定できない。


戦後処理は更に苛烈を極める。

ようやくの思いで両軍に追いついたナーハウ宮中伯は、メサを攻囲するマグナブルクの軍陣で殿下と会見するも仲裁交渉はあえなく決裂。

ほどなくヴェンデン伯ヨアヒム2世は烈火の如きマグナブルク勢の攻勢の前に降伏、ヴェンデンはマグナブルクに即日併合され、ヨアヒム2世はヴェンデン伯号の譲渡宣言をさせられた挙句、王族に連なるもの全員が修道院送りになった。

「本当はヴェンデン伯を始めとして全員処刑されるところだったのですが、シエル・フローラ・ヴィ・ヴェンデンが満座の前で贖罪の礼を殿下に取って赦しを請い、人質になることを誓われたのです……」

し、し、贖罪の礼だって……

もう俺はふらっと貧血を起こしそうになる。思わずよろめいて勉強机にもたれかかった。


贖罪の礼は俺も一応、貴族の常識として習うことは習っている。滅多に使う機会がないため、礼作法の教授の間ではさらっと触れるに留める程度なのだとリューネさんから聞いている。

実際、俺もこれだけは実地ではなく座学で触りを習う程度に留まっている。なぜかって?あまりにも屈辱的で見るに耐えないからだ。

両膝を付くのは男女共通だが、男の場合は両手を後ろ手に組んだ状態で顔を直接地面につけなければならない。この体勢のときに首を鉞で落とされても文句は言えない、ていうか半分以上そのまま刑死することが前提だ。

女性の場合は、残酷で野蛮なこの世界においても殺される事が少ないため、男と異なってどちらかというと恥辱を与えることに重きが置かれている。

両手を自分の前で組んだ後、相手に向かってゆっくりと平伏し、その体制のまま相手の足元まで体を引きずっていって靴に接吻すること強いられる。

人によってはこれに加えて全裸にひん剥いた状態でさせるらしいが、さすがに殿下もそこまでは求めなかったそうだ。


「さしもの殿下もそれでようやく正気に戻ったようだ。親を想う健気な少女の姿を見て、おそらくその姿に姫殿下の姿を重ねたのかも知れん」

ヴェンツェルの顔が苦りきっていた。大公家に忠節無比の男であるが故に非道と忠義の狭間で苦悩する表情だ。

それにしてもあまりにも過酷な話だ。まだ17歳の少女が一族の身代りになって悲壮な決意の基にそれを成し遂げたのかと思うと胸が張り裂けそうだ。しかも薄雪が残る3月、ヴェンデンの石畳の上でだ。

聞くだけでこんなにも胸が締め付けられるのだから、その場に居合わせた人々の涙を誘ったに違いない。


「で、その人質となったヴェンデンの姫をうつけの侍女に据えたというわけだ。まったくいい趣味だな。心底腐ってやがる」

不敬すれすれか、多分、アウトなグラハムの言葉を聞いて、じろっとヴェンツェルが目を鋭くする。この場で咎める気はないが、配慮を促すような視線だ。

グラハムは頭が悪いが、その分だけ正直な男だ。その一点だけは好感が持てる。初めてこいつと俺の意見が一致した。


「そして、もう一方、アントーニア様の下にいる侍女は、先日、マグナブルクに併合されたアルトワルト公家のアリナ・ヴィルヘミーナ・ヴィ・アルトワルト様です」

ああ、あの英国ヴィッカース社生まれの帰国子女っぽい人ね。時と場を弁えればお触りにも寛大なお姉様的な雰囲気がもう堪らないネー。

お、おほん……


ようやく理解が追いついた。そりゃ自分たちの実家が猛女の父親にめちゃくちゃにされた挙句、戦争の原因である“猛女”のところに送り込まれたんだから、さぞ二人とも生きた心地はしなかっただろう。

リエナを恐れるあまり極力視界にも入らないようにしていたのも全て頷ける。


全員の視線が俺に集まっている。俺がどういう反応をするか、はらはらしながら見ている感じが伝わってくる。

はあ……

もう、泣きたいような心境だった。


今までの俺なら他人事の一言で現実逃避出来たかもしれないが、この世界で過ごす時間が増えれば増えるほど、そんなご都合主義がどんどん通用しくなることを認めるしかない。

俺はリエナがどういう人間なのかは知らんし、過去にこいつが何をやらかしたかも知らん。俺は今日までずっと大過なく日々を送ることだけを考え続けていた。


なぜなら、このままリエナとして生きていかないといけない、という事態を想定して中身がまったくの別人だと疑われないようにするためだ。

姫の昏睡前後で人が変わったといわれるのを俺は一番恐れていた。だから、少々疑問に思うようなことであってもリューネさんや周囲の言うことに必死に従ってきた。でも……

それはまるでひたすら両親の顔色を見て言うことを忠実に守ってきた昔の俺と同じじゃないか。


俺は事故に遭う前に、学校でもらった進路調査のプリントを前にしてぼんやり考えた。このままでいいのかと。俺はずっと親の言いなりなのかと。だから、俺は生き方を変えることにしたんだ。普通の四大ではなくて、あえて音大にしたのもそれが大半の理由だった。

でも、それは半分以下の正解で、半分以上の不正解だった。


俺が死ぬ前に父さんが言っていた。将来設計は自分の身をまず立てることを考えることだと。言い換えれば“自分ひとりでもどうにかなる方法を考えろ”とあの人は言ってくれていたんだ。

あの言葉は、この先ずっと俺をコントロールする気なんて全然なかったってことじゃないか。


頭のいい悪い以前に、絶望的に社会経験が足りなかったが故に、経験豊富な大人から見ればバカ丸出しの答えしか俺は出せなかった。いや、自分でも何を書いていいのか分からない状態なのに無理やり思いついたことを書いただけだった。

それを自分の進路だって?今考えても空恐ろしいことだ。

「あの……アントーニア様……?」

あ、リューネさん、もうちょっとだけ待ってください。俺、今すっごくいいこと言ってるんで。ただし、俺ん中ではですけど。


俺があの時すべきことは、俺より経験を持っている人に素直に助言を求めて、そして自分の答えを導びくことだったんだ。

この世界にきた今までの俺はリエナ・アントーニアであり続けることに拘りすぎた。だが、俺は俺として、この世界でしっかりと根を張って生きることを、今まさに真剣に考えるべきなんだ。

すとーんと全てが腑に落ちた感じだった。

あ、あれ?


それと同時に、今まで俺を散々苦しめてきた、サイズが合わないぶかぶかの靴と手袋をしていたような、あのすっぽ抜ける感覚が体中から消えていく。

こ、これは!!もしかして……


俺の魂とリエナの体が完全融合したのか!?まさかくるのか!!ここで覚醒が!!

じゃ、じゃあ声も……

ごくり……


ヴェンツェル以下、リューネさん、そしてグラハムがずっと押し黙ったままのリエナ・アントーニア姫を心配そうに見ている。

そうだ。俺は言う。言ってやる。俺は自分の声で自分の意見を言う。

力強く!!

緊張の瞬間だ。


「ぼへぇ!!」


駄目だった……





結局、俺は勉強机の上にあった黒板を引っ手繰ると筆談で俺の意思を伝えることにした。もちろん、姫の芸術が爆発したような文字はリューネさんが心眼で解読してくれた。

俺が書いた内容はこうだ。


一、シエル・フローラとアリナ・ヴィルヘミーナの侍女待遇をただちにやめ、今後はリエナ・アントーニアの“客”として両名を遇すること。

二、シエル・フローラがヴェンデンの宝剣を持っている可能性が高いので、身柄を速やかに確保すること。ただし、くれぐれも丁重に。

三、“奥の間”の捜索を無条件に許可する。私物に触れるのに断りを入れる必要一切なし。

四、身柄を確保した後の処置は、リエア・アントーニアの直裁とする。


いきなりグラハムが俺の前まで駆け寄ると、俺の額に手を当ててきた。

な、なんだよ……おまえは……

「一体どうしたというのだ、うつけ。お前がまともなことを言うなんて、今日は嵐になるんじゃないか?」

深刻そうな表情で俺の顔を覗き込む。いや、それお前だけには言われたくないから。


ヴェンツェルは目を閉じて黙って聞いていたが、全てを聞き終わったあとで俺の方を見る。しかし、その目に今までのような険しさはなかった。

「理に適っている。仔細承知した」

そのまま踵を返すとヴェンツェルは部屋を後にする。どこまでもクールな男だ。


リューネさんはといえば、さっきから俺の顔と黒板を交互に見ている。呆気に取られたような表情だ。今までの姫様の素行を考えるとまあこれも当然の当然か。

でも、俺も後にはもう引けない。

怨嗟が渦巻く超アウェーの地に征服者として赴かねばならないのだ。不幸な偶然が重なったとはいえ、この事態を招いたのはリエナじゃない。俺自身なのだから。

責任は取らないといけない。

幸い、リエナの周りには数こそは少ないが信頼できる人たちがいる。バカで頼りないがグラハムだって一応、その中に入れてやってもいい。

「どうやら僕はやる事が特にないみたいだから部屋に戻って一眠りする。何かあったら知らせろ」

前言撤回だ……






ヴェンツェルは最初から男子禁制の奥の間に目星をつけていたようだ。俺から言質を取り付けるや否や、「表」の家捜しはすべて打ち切られて、全員が奥の間に差し向けられた。

この選択と集中。さすがだ。多分、三国志だったら趙雲とか郭昭とか全ステータス80後半越えの武将っぽい感じがする。

なんでこんなやつがしがない田舎の小城で副城主(城代)をやってるんだろう、て思うじゃん?

これ、全部猛女のせいなんだぜ?まあ、その話はおいおい。


俺の方はといえば、特にやることがない。この大騒ぎのせいで今日の姫様の授業は全てキャンセルになってしまった。

いやー、まじでざんねんだわ。ほんとざんねんだわ。がんばろうとおもっていたのに。


というわけで、ブランチを美味しくいただいた後、ゆったりと中庭を眺めながらテラスでアフタヌーンティーを楽しんでいるというわけだ。それにしても授業が自習になったりするとなんであんな嬉しくなるんだろうね。

しかも、今朝からリエナの体と馴染みが急によくなった。驚くべきことにもうヒールを履いても足を挫かなくなった。あの苦痛からの開放、それだけで俺はもう舞い上がりそうだ。

今なら空も飛べるはず。


「姫殿下!!」

おや、こんな時間に伝令が。


ふと見ると、今朝、俺たちにホットショコラを持ってきた将来のイケメンが息せき切って、白亜のガーデンチェアに優雅に座っている俺の方へとやってくる。

「副城主様より姫殿下へのご伝言です!」

あらあら、そんなに慌てなくてもよろしくてよ?それにしても意外に早く見つかりましたわね。おほほほ!

将来のイケメンこと、ヴェルテンブルク出身のウォルフガング・ヴィンター・ヴィ・メッサーシュミット少年が俺の前にひざまずく。


俺の腹時計は午後4時をさしていた。これなら尋問を終えてもディナーには軽く間に合うな。俺はミルクティーのカップをゆっくりとエレガントに煽る。

もちろん小指は立っている。


「さきほど、奥の間の姫殿下のクローゼット室(30平米)に潜んでおられたシエル・フローラ・ヴィ・ヴェンデン様をみつけました!」

ああ、キングサイズの姫様専用ウォーキング・イン・クローゼットにいたのか。なるほど考えたな。あそこには姫様の下着からおしめのような生理用ショーツに至るまで、プライベートの全てが集まっている。

気位の高そうなリエナ・アントーニアがあの部屋まで男どもの入室許可を与えないだろうと踏んだのか。

だが、甘かったな。いま、捜索の総司令官はこの俺なのだ。姫の恥ずかしい私物のことなど、どうでもよいのだよ。


「姫殿下のおっしゃるとおり、ヴェンデン家の家宝はシエル・フローラ様が所持しておりました」

そりゃそうだ。成り行きとはいえ、形の上では俺がヴェンデン伯号を簒奪したも同然だ。せめて憎き相手に一太刀浴びせて実家の名誉を回復しようとしたわけだからな。

城館に犯人がいないと早合点した男どもがこぞって城外に出て行って、手薄になったところを見計らってブスリとやるつもりだったのだろう。

この期に及んでまさか「姫殿下に宝剣を献上するため、曇りを拭っておりました」などと、どこぞの孟徳みたいなことは言うまいよ。

小娘のわりに知恵が回るじゃないか。しかし、歴史シミュレーションゲームで無双を誇るこの俺が相手というのが不運だったな。


「しかし、シエル・フローラ様は意外にも手錬で、囲みを突破されてヴァーリーリエの尖閣に立て篭もった由!!急ぎ、姫殿下にこのことをお伝えして、最悪の事態をお覚悟あれとのナイトハルト卿のお言葉でございます」

「ぶー!!!!!!!」

は?何いってんのおまえ……


この館の両サイドには左右対称の尖閣が建っている。メッサーシュミット少年の話によると、シエル・フローラはそこを剣一つで駆け上って行ったらしい。群がる青白い細腕の貴族の子弟を蹴散らしながら。

それにしても、まるで二時間ドラマの中で追い詰められた犯人が最期を遂げるのにうってつけのシチュエーションじゃない。


まさか……あいつ死ぬ気か……!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ