Afternoon tea 50音順小説Part~あ~
初投稿です。小説に何か不備があっても気にしないでください。お願いします。
暖かい陽光が窓から差し込み部屋の中はおひさまのにおいで満ちていた。
部屋に家具と呼べるものは大きな古ぼけた柱時計にアンティークであろうテーブルとイスが2脚だけで、
テーブルにはレースの付いた白いテーブルクロスが敷かれてある。
クロス上には小花模様が縁どられた皿の上にチョコチップ・バニラ・ナッツの
クッキーやクリームがたっぷりつまったシュークリームなど美味しそうなお菓子が
あふれている。
そこにティーポットとティーカップ一式を運んでくる1人の少女があらわれた。
少女の名はアリス。
名前はいかにも西洋人を思わせる名前だが、外見は黒髪・黒い瞳のれっきとした日本人だ。
ふとアリスが時計の文字盤を見上げると長針が12という数字に届きかけていた。
時計はいつ止まってもおかしくないほど古ぼけているが、まだまだ現役のようだ。
「嫌だわ、もう3時になりますの。早く準備しませんと。」
アリスが急いでキッチンにある戸棚の一番高い場所に置いてあるアールグレイの茶葉が
詰まった缶を取ろうとしたが、背が低いため手を伸ばしてもなかなか届かなかった。
そうこうしているうちに、コンコンと玄関のドアを叩く音がした。
玄関ドアはこれまた木製で最近塗り直したのか、一見真新しく見えるが、よく見ると
小さい傷がいくつかあり長い年月が経っているのを感じられる。
ドアの上部には真鍮製のドアノッカーが取り付けられており、今にも飛びかかってきそうな
ライオンがあしらわれている。ライオンはまるで来るものを拒んでいるようにみえる。
玄関の前には背の高い少女が立っていた。手には何やらおみやげらしきものを提げている。
そしてひとりつぶやく。
「遅いな、アリス・・・。何してんだ。」
数分後、パタパタとこちらに近づいている足音がしてガチャリとドアが開いた。
目線を20㎝ほど下げると、そこには少し息を切らしたアリスが立っていた。
「菜摘さん、いらっしゃい。お待たせしてごめんなさいね。」
長身の女性――――――くせっ毛のある栗色の髪に瞳は深い緑色、東洋人にしては白すぎる肌のためよく外国人に間違われる――――――もとい菜摘は少し言葉を交わし、おみやげをアリスに渡し家の中に入っていった。
案内されたのはお菓子やお茶の用意がされた部屋ではなくてキッチンだった。
イスが1つ引っ張り出されていて、アリスがさっきまで悪戦苦闘していた戸棚にイスがぴったりくっついていた。どうやらイスに登って試したがダメだったようだ。
「もしかしてとってほしいの?」
アリスはただ黙ってニコッと微笑んだ。
菜摘は軽くハァとため息をつき、戸棚に近づいていくと
イスをどけてひょいと茶葉の缶を掴んでアリスの手のひらに乗せた。
「ありがとうございます。」
「まったく・・・。届かないんだったら最初から置かなきゃいいのに。」
「とっておきのですから、できるだけ使わないようにわざと高いところに置いてるんですのよ。
特別なお客さまが来たときにだけ。」
そんなことを言われてしまうと強く言えなくなってしまう。
いつもこんな風にアリスは菜摘を丸め込んでしまうので困ってしまう。
「さぁさぁ、お茶の支度も整いましたことですし、お茶会始めましょう。」
今度こそお茶会の準備がされている部屋に案内された。
席に着席しアリスが菜摘の前にスッと淹れたばかりのアールグレイの紅茶を出した。
アリスの完璧な温度で淹れた紅茶は本来の風味を損なっていない。
「お味はいかがですか。」
答えはすでに分かっているのに毎回笑顔で感想を聞いてくるアリスに、
菜摘は決まり文句よろしく言った。
「完璧。美味しいよ。」