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序章 1/


   序章  1/



 この世には、ルールというものがある。

 それは法律だったり、規則だったり、校則だったり。守ることを前提とした――破らないことを前提としたものだ。しかしそれはあくまで破らないことを前提としたものであって――破れないわけじゃない。そんなもの、いつでも壊せる。木っ端微塵に、雲散し霧消することが出来る。


 まあ、ルールの全てが破れるわけじゃないのもルールなわけだけれども。

 それは例えば人間の身体だったり、物理法則だったり、時間だったり。守ることが前提じゃなく、破らないことが前提じゃなく――圧倒的な絶対。人間として、破ってはいけないもの。人間の身体だったり、物理法則だったり、時間だったりは――そういうものだ。

 つまり、ルールというものは大きく分けて二つ。


 やろうとしたらできるもの。


 絶対にできないもの。


 ……けど。

 絶対に破れないものを破れる者がいるのも、確かなわけで。

 それが、

 魔具使い。


 悪魔に魅せられ天使に魅せられ、悪魔に憑かれ天使に憑かれた魔具使い。

 〝大統合ギルド〟が〝絶対法律ルール〟にのみ従い、〝抗争〟を繰る魔具使い。



      ◆



 漆黒から純白に。

 漆黒から真紅に。

 その様相を変える。

 視覚はより鮮明に、聴覚はより敏感に、嗅覚はより正確に。肌が空気に触れているのを感じる。流れ落ちた汗が唇に触れた。


 ぺろり、と舐めてみた。


 夜の帳が降りた森林の中――雑草と木々に囲まれた状態で、僕は直立していた。

 無音だ。風が無い日なのか、木々も草々もざわめかない。そして――どこかに潜んでいるはずの五人も、動かない。

 ……僕の心臓はばっくばっく言ってるけど。

 動かない現状に、若干いらつきながらも、注意は怠らない。周囲に目を光らせ、草のざわめき一つも見逃さない。


 ――クローザーズ。

 それが、今の僕の肩書きだ。断罪者と呼ばれる、裏の世界の――暴力の世界での役割。

 そして、僕は今、断罪の最中だ。五人組……ギルド間の〝抗争〟において彼らが反則を犯したため、今回僕が出張ることになった。

 相手は大したことない、平凡な魔具使いだ。ただ力にかまけて、調子にのりすぎただけの。


 奴らは、ルールには記されていないが破ってはいけない暗黙の了解を破ったのだ。

 ――一般人を攻撃してはいけない。

 という、暗黙の了解を。

 スポーツなんかと一緒だ。例えばボクシングなら、その拳で傷害でもさせれば試合出場停止になることだってある――そういう類の。

 しかし、それは暗黙の了解であって、魔具使いが守るべきただ一つのルールには記されていなかった。処罰には至れなかったわけだが。――自分達でわざわざ深みにはまった。

 やっと、罰せられる時がきた、というわけだ。


 三秒経過。やっと魔具解放の変化に身体が慣れる。事態を硬直させるのは、終わり。


「……さて、狩りだ」


 左太腿にくくりつけた革の鞘から得物の大型ナイフを抜き出し、跳躍する。

 木の幹を蹴って、方向を転換。敵がいると見当した地点に肉薄。着地。

 音は無くとも、気は確かに存在する。今の僕から完全に逃れられるのは、忍者くらいだろう。それも、存在しているとしたら、の話になるが。

 相手の顔が驚愕に見開かれる。無視して、その喉を掻っ捌く。絶命したそいつを壁代わりに蹴って、別の敵に接近。


 ナイフを口に挟んで、木に四肢を掴ませる。重力に任せて落下し、もう一人の目の前に現れる。五寸釘にも似たナイフを二本。腰の後ろから抜き出して右手の指の間に挟み、それを相手の顔面に突き刺す。両目にナイフが深く突き刺さる。

 引き抜くと同時に悲鳴が上がった。僕という存在を、今やっと認識したのだ。

 左手で相手の首を掴み、そのまま持ち上げる。


「…………」


 一瞬だけ。全力で首を握りつぶす。ぼきり、と音がして、力が抜けていった。

 それを投げ捨てて、右手のナイフを一振りした。


「死んでいる」


 死んでいる。

 しかしそれは、死んでいるだけだ。

 冷めた心のままで、ぼそりと呟いた。


「――さあ、〝断罪〟を始めよう」


 ホワイト・ラピッド・ライトニング、序章です。タイトル長いので適当に略してください。

 えーと……これからよろしくお願いします(何

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