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『忘れた恋から始まる覚醒』恋能覚醒者(ラバー)×恋能覚醒者(ラバー)  作者: 葉月


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仮初の充足感

黒い衝撃波は、五右衛門の前で止まっていた。


完全に消えたわけじゃない。


ただ――進まない。


まるで、見えない壁に“均されている”ように、

黒が形を保てず、揺らいでいる。


「……っ」


五右衛門の喉が鳴った。


(長くは……もたない)


自分でも分かる。


これは攻撃でも、勝利でもない。

――時間を作っているだけだ。


背後で、一条が素早く周囲を見回した。


「今だな」


短く、はっきりした声。


「五右衛門、そのまま維持できるか?」


「……たぶん、少しだけなら」


「十分だ」


一条は即座に判断した。


「澪、前に出て。意識を引きつけて」

「三谷さん、恋拒絶ラブ・リジェクトで道を作ってくれ。直撃だけ止めればいい」


「……頑張る」


三谷の声は震えていたが、迷いはなかった。


「無理はしないで。時間を稼ぐだけでいい」


一条の言葉に、三谷が小さく頷く。


澪は、一歩前に出た。


「……先生」


まどかが、楽しそうに首を傾げる。


「なあに?」


「……もう、食べなくていいでしょ」


澪の恋纏オーラが、再び輪郭を強める。


完璧じゃない。

それでも――前に出る力。


「わたしたち、逃げない」


「へえ……」


まどかの瞳が、わずかに細まる。


「いいわね。そういうの。」


「食べちゃいたいくらい」


次の瞬間。


黒い衝撃波が、澪を狙ってうねった。


「――っ!」


三谷の恋拒絶ラブ・リジェクトが展開される。


直線的な“壁”じゃない。


角度をつけ、逃げ道を作るような拒絶。


「……くっ!」


衝撃波が、拒絶を削りながら進む。


完全には止まらない。


「防ぎきれない……!」


「それでいい!」


一条が叫ぶ。


「遅らせろ!」


澪は、あえて一歩踏み込んだ。


衝撃波の“中心”を外し、

視線と意識だけを引きつける。


「ほら!」


恋纏オーラが、衝撃を弾き、流す。


「こっちだよ!」


まどかが、くすりと笑った。


「元気ねえ……」


だが、その一瞬。


五右衛門は、動いていた。


止めていた“圧”を、少しだけ前に押し出す。


黒い衝撃波が、わずかに歪む。


(今だ……!)


五右衛門は、地面を蹴った。


澪と三谷が作った“隙間”を縫う。


距離が、縮まる。


「……っ!」


まどかが、初めて一歩下がった。


「へえ……」


「近づいてくるのね」


黒い衝撃が、再び膨れ上がろうとする。


だが――


「もう、食べさせない!」


三谷の拒絶が、最後の力で噛み合う。


完全じゃない。


それでも――一瞬、止まる。


五右衛門は、手を伸ばした。


「……先生」


指先が、まどかの手首に触れる。


その瞬間。


音もなく、黒が――萎んだ。


爆ぜない。


砕けない。


ただ、空腹を忘れたみたいに、力を失っていく。


「……あれ?」


まどかが、きょとんとした顔をする。


「お腹……空いてたの、なくなったわあ」


周囲を覆っていた黒が、


霧が晴れるように消えていく。


「……不思議ねえ」


まどかは、紙袋を覗き込んだ。


「さっきまで、足りなかったのに」


その場に、静寂が落ちた。


五右衛門は、膝に手をついた。


息が、荒い。


「……終わったの?」


澪が、恐る恐る声を出す。


「……たぶん⋯」


その時。


カッカッカ、と急ぐヒールの音が響いた。


「⋯みんな、無事なようね⋯」


変わり果てた体育館裏の光景を見て安心しながら呟く。


振り返ると、黒川園美が立っていた。


「一条くんから連絡をもらっておいて正解だったわ」


園美は、まどかの背後に立つ。


「藍澤まどか。堕恋者予備――いえ」


少しだけ言葉を選んでから、告げる。


恋暴食ラブ・グーラ、制圧します」


「……あら」


まどかは、素直に両手を上げた。


「捕まっちゃった?」


「ええ」


「そっかあ」


どこか、残念そうで。


でも、どこか――ほっとしたような声だった。


園美は、ちらりと四人を見る。


「……あなた達、よくやったわ⋯」


「ほんとに⋯」


その言葉に、

澪と三谷は、力が抜けたように座り込む。


一条は、静かに息を吐いた。


(……前より、ちゃんと使えたな)


(欲を言えば⋯もう少し)


五右衛門は、澪の方を振り返った。


「……大丈夫か」


澪は、少し遅れて頷いた。


「うん……」


そして、そっと笑った。


「……ありがとう」


その言葉が、胸に残る。


五右衛門は、まだ知らない。


この“守れた”という感覚が、

彼の中で、何かを大きく変え始めていることを。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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