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『忘れた恋から始まる覚醒』恋能覚醒者(ラバー)×恋能覚醒者(ラバー)  作者: 葉月


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10/25

羨ましいだけの放課後、何も起きない日。

放課後の校舎は、昼間よりも少しだけ空気が軽い。


「ねえ」


昇降口を出たところで、澪が唐突に口を開いた。


「なんかさ、2人共昨日より仲良くなってなーい?」


そう言って視線を向けた先には、ごえもんと一条がいる。


「……そうか?」


ごえもんは靴ひもを結び直しながら、そっけなく返した。


「別に、普通だろ」


「普通に一緒に帰って、普通に話してる時点で普通じゃない気がするけど」


澪はくすっと笑う。


「ね、一条くん?」


「まあ、否定はしないかな」


一条はあっさりと言った。


「話しやすいし、考え方も近いし」


「ほらー」


澪が楽しそうに言う。


ごえもんは少しだけ視線を逸らした。


(……そんなつもり、なかったんだけどな)


でも、嫌ではなかった。


むしろ——


(気づいたら、隣にいるのが当たり前になってる)


そんな感覚がある。


「ごえもんくん、顔に出てるわよ」


少し後ろから、黒川さんの声がした気がした。


(出てませんよ…たぶん)


心の中で答えると、その時だった。


「亘ー!」


軽やかな声と一緒に、こちらへ駆け寄ってくる女子がいる。


肩までの髪を揺らしながら、迷いなく一条の隣に並んだ。


「遅くなってごめん。先生に捕まってた」


「お疲れ。大丈夫?」


一条が自然に言う。


そのやり取りを見て、澪が目を瞬かせた。


「あ、もしかして……」


「彼女」


一条がさらっと言った。


「佐倉ひより」


「はじめまして!」


ひよりはにこっと笑って、軽く頭を下げた。


「亘のクラスメイトさんですよね?」


「うん。日向澪です」


澪もすぐに笑顔で返す。


「こっちは、前崎五右衛門くん」


「どうも」


ごえもんが短く言うと、ひよりは少しだけ目を丸くした。


「……あ、噂の」


「噂?」


「モテるのに自覚ない人」


「ちが……」


言いかけて、ごえもんは言葉を飲み込んだ。


「……そうでもない」


ひよりは楽しそうに笑った。


「でも、雰囲気でわかります。優しい人だなって」


「……どうも」


居心地の悪さは、不思議とない。


むしろ——


一条とひよりが並んでいるのを見て、胸の奥が少しだけざわついた。


(……いいな)


特別な理由があるわけじゃない。


ただ自然で、無理がなくて、 お互いをちゃんと見ている感じがした。


(彼女、か……)


ごえもんは、無意識に視線を逸らした。


一条は、そんな空気にも気づかず、ひよりに言う。


「このあと少し寄り道するけど、いい?」


「うん。大丈夫」


ひよりは迷いなく頷いた。


そのやり取りを、澪は少しだけ眺めてから、ぽつりと言う。


「……いいね」


「なにが?」


ごえもんが聞くと、澪は前を向いたまま答えた。


「ちゃんとしてる感じ」


ごえもんは一条とひよりをもう一度見て、心の中で小さく息を吐く。


(……正直、羨ましい)


彼女が欲しい。


特別なことはいらない。 ただ、隣にいて、自然に笑える相手が。


(俺も……いつか、そうなれんのかな)


その考えに、少しだけ胸が温かくなる。


「じゃ、また明日ね」


ひよりが手を振る。


「また」


澪も手を振り返した。


一条は軽く会釈してから、ごえもんを見る。


「またな」


「ああ」


2人が離れていく背中を見送りながら、澪がごえもんの横に並んだ。


「……ごえもんくん」


「ん?」


「今、ちょっと羨ましそうな顔してた」


「……気のせいだ」


「そっか」


澪はそれ以上何も言わず、歩き出した。


夕暮れの校門を抜けながら、ごえもんは思う。


(いいな、ああいうの)


でも同時に、胸のどこかで小さな違和感もあった。


理由は、まだわからない。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

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