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幼馴染たちの距離が近い②

阿久根と別れて教室に戻ろうとしたところで、また見知った顔が俺の前に立ちはだかる。今日は本当に運が悪いなぁと思いながらも俺は前の人物を見据える。



「大和、何か用か?」



宮本みやもと大和やまとはどんなスポーツでも多少やるだけである程度のところまで到達してしまう。競技によってはそれより上にまで行くのだ。

金髪で服の上からでも分かるぐらいの良い筋肉が付いている。身長も高く、ガタイもいいから高校生とは思えないというのが第一印象だろうな。性格は少しやんちゃなところもあるが、根は真面目な人間だ。



俺の情報は小学校まで止まっているがな。



「用がないと話しちゃいけないのか?」



「別にそうとは言わないが、俺は大和と話すことは何もない」



「俺にはあるからよ」



「そうか、手短に頼むぞ」


この時間にこの場所にいるということはサボっているのか。大和は授業をサボるようなタイプではないのは素直に珍しいと思ってしまうが、こいつも何か変わったのかもしれない。俺が知っている情報はもうかなり前のものだからな。



「…俺は優希のことが大切だ」



「そうか」



「付きまとって良いか?」



「…その問いに対して俺が好意的な返事をすると思っているのか」



「分からないな」



「絶対にNOだ」


今からストーカーしてもいいですか?


この質問に対して「いいですよ」と答える奴がいるだろうか。



「その考えは変わらないか?」



「変わらないな」



「それならまた明日聞く」


大和は本当に変わらなかった。

宮本大和を一言で言い表すんであれば『律儀なストーカー』だ。

だが、この問いに俺はそこまで驚きはしない。


なぜならば、俺はこの問いを小学校の頃にも言われたのだ。それに対して小学校の頃は何も考えずに「いいぞ」と言ってしまったのだ。そしてその日から本当に大和はどこにも付いて来るようになり、家の中にも上がり込むようになり、場合に寄っては俺と一緒に寝ようともした。今になって思えば、あれはストーカーというものなのだろう。



これが俺が知る、宮村大和という男だ。











そして大和は俺の教室とは逆方向に歩いて行った。その背中を見送ってから俺は教室に戻って授業受けた。適当な理由付けをしたものの、誤魔化せたのか分からないような感じだった。








昼休みになり、俺は机に突っ伏して、今までのことを考える。

今日だけで大晴に串宮、阿久根、大和と四人と話した。

こんなことは今まで一度もなかったのに、急に増えるのは少しおかしい。あいつらが何かを企んでいるのか、本当にただの偶然なのかは分からないが、これはかなりまずい状況にあるという間違いない。


このままクラスで注目を集めれば、もっと嫌われたり、憶測が飛んでいくのは別にそこまで問題ない。問題なのは幼馴染の奴らだ。あいつを遠ざけるために態々こんな風にやってきたのに、それが全て無駄になってしまう。


それだけはどうしても避けなければいけない。




今日はこれ以上、あいつらに関わらないように。



「優希くん」


急に名前を呼ばれ顔を上げると…すぐ目の目に顔があった。



「え…」



「あ、起きてくれました」



「…なんだ、星野か」



「はい、星野です。少しお邪魔させてもらいますね」


星野は俺の前の席に座っていて、その椅子の持ち主に対して謝罪をしてから俺の方に向き直る。



「これでコンプリートか…」



「コンプリート?」



「朝に大晴と串宮、休み時間に阿久根と大和、そして現状、星野と対面で話している。これでコンプリートだ」



「そういうことですか。四人共先に抜け駆けするとは…後で色々と言わなければなりませんね」



「俺としては星野が他の四人の暴走を止めてくれると嬉しいが」



「そうは難しいと思いますよ。他の四人が私の忠告を素直に従うとは思いませんし」


星野ほしの萌香もかの周りのイメージを一言で言い表すんであれば『優しい文学少女』だろう。


もちろん他の二人にも負けず劣らずの美少女ではある。眼鏡を掛けていることなども文学少女のイメージをさせてくるのだろう。それに加えて、優しさが彼女の魅力なのだろうな。



「まぁ…そうだよな。無理なことを言ってすまない」



「いいえ、優希くんが謝ることなんて何一つありませんよ」





「それよりも優希くん、お一つ尋ねてもいいですか?」



「なんだ」



「今、邪魔な人間はいますか?」


この問いを聞くのは本当に久しぶりだ。少し懐かしさを覚えるのと同時にまだ星野は変われていないのかと少し残念さもある。


問いに対する答えはいつも通りに―――



「いないな」



「そうですか。今日はお話できて楽しかったです、優希くん」


それだけ聞き終わると星野は教室から去っていった。その背中が昔と変わらな過ぎて、俺は少しだけ恐怖を覚えた。




星野萌香もかという女子生徒に初めて俺があった時に抱いたイメージは『優しい文学少女』というものだったが、会っていく度に変わっていった。


『優しい顔をしたサイコパス』に。



彼女は周りの人間には優しい。

小学校の頃で言えば幼馴染の6人《《だけ》》は優しかった。それ以外の人間にも優しく接していたが、例えば6人の誰かとそれ以外の人間が喧嘩でもしようものの、彼女は必要以上に相手を叩き潰していた。


その結果として相手が転校していくところを何度も見てきた。それも彼女は自分が追い詰めたことや、俺たちが疑われないように用意周到に全ての計画を練り上げている。なので、俺が今まで彼女が裏で起こした事件で疑われたことはない。



それが俺が知る、星野萌香という女だ。



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