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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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22  嫌です

 アデルバート様と別れたあとにレイガス伯爵夫人に連絡を入れたところ、手紙をもらえました。

 そこにはミドルレイ子爵令嬢が養女であると書かれていました。ただ、彼女がどこの家から養女に出されたのかはわからないとのことでした。

 私を養女にするという話で思い出したそうで、アデルバート様のことや、どこの家からかわからないということが普通ではないため、気になって話をしておこうと思ったと書かれていました。

 そして、その時に思い出したのです。私がミドルレイ子爵家のことを覚えていたのは、お姉様の婚約者であるロウト伯爵令息と愛し合っているのではないかという噂を聞いたからでした。

 私が十八歳の時ですので、アデルバート様は亡くなっていました。ですから、ミドルレイ子爵令嬢がアデルバート様を忘れて、新しい恋を始めていてもおかしくありません。

 結局、本当のことがわからない間に私は殺されています。もしかして、お姉様がロウト伯爵令息に捨てられて、八つ当たりでエイン様を誘惑したのでしょうか。


*******


 私とアデルバート様の婚約の話を進めていくと同時に、秘密の特訓も始めることにしました。秘密といってもアデルバート様に秘密なだけで、レイガス伯爵夫妻の許可は得ています。

 私の先生になってくれるのは、レイガス伯爵家の護衛騎士のリーダーで、爽やかな好青年といった見た目ですが、特訓中は厳しい先生です。

 学園が終わったあとは、用事のある日以外はレイガス伯爵家に行き、護身術や剣の扱い方などを教えてもらっています。

 アデルバート様が心配していたように、骨は折れないにしても、私には力が無く、剣を持つことも最初は難しかったです。そんな私を見て呆れた先生から、諦めて守られたほうが良いと言われてしまいました。でも、私は諦めずに頑張り、今は両手ではありますが剣を持てるようになりました。養子縁組についても話が進みました。最初は両親は私の親権を渡すことを拒否していました。そして、6年も会えていないのだから、話し合いの場を設けてくれと言うのです。

 どうしても会いたくなかったため、会うことを拒否すると、私の機嫌を取ることにしたのか、両親からプレゼントが届くようになりました

 私のように年を重ねていなくとも、十三歳ともなれば、今までのことを考えれば、プレゼントで絆されることはないはずです。それに私は何があっても絶対に両親を許すつもりはありません。

 そのことをレイガス伯爵夫妻や公爵閣下に伝えると、現在の親代わりである公爵閣下は裁判に持ち込みたいのかと両親に尋ね、レイガス伯爵夫妻は戦う意思を見せました。両親は今回の戦いに負けて裁判費用などを払うことが嫌だったようで、お金で手を打とうとしました。

 すると、レイガス伯爵夫人はお母様にこう言ったそうです。


『可哀想に。娘を売らないといけないほどに困っているのね』


 そう言われたお母様は『違うわ! あんな子、私はいらないから! 好きにしなさいよ! お金なんていらないわ!』と答えたそうです。お父様はすぐにそれがレイガス伯爵夫人の挑発だと気づいて止めましたが、時すでに遅しでした。


『あんな子を娘にほしいだなんて、あんたは馬鹿ね!』


 私を養女に出すかわりに、お金をもらおうとしていた、お父様は、お母様の発言を聞いて頭を抱えたそうです。

 私から送り返されたものは店に返品はしていましたが、ディストリー伯爵家の財政は苦しいものでした。私を売って、少しでも楽な暮らしをと思っていた、お父様にとっては最悪な展開だったでしょう。

 そして、それから数日後、私はディストリーからレイガスの姓に変更となったのでした。レイガス姓に変わってから、私は施設を出てレイガス伯爵家で暮らすことになりました。

 実家を出るまでは私服は姉のお下がりでしたし、施設に入ってからは寄付された服を着ていました。でも、レイガス伯爵家に来てからは違います。誰も袖を通していない服を着せてもらえるようになったのです。

 ボス公爵家から、卒業するまでに必要な学費や経費などの小切手をいただいたため、レイガス伯爵家の私にかかる費用はかなり少なくなりました。予定していたよりも余ったお金で、レイガス伯爵夫妻は私の服や化粧、習い事など、お二人が自分たちの子供にしたかったことをしたいのだと言いました。

 私は私で、両親になってもらうのですから、犯罪や余程嫌なことでない限り、二人の望む通りにしようと思い、いただいたプレゼントは素直に喜ぶことに決めました。

 アデルバート様との婚約も決まり、今までの人生で最高の時を過ごしていました。ですが、そう簡単に上手くいくのであれば、人生を何度もやり直す必要はないのでしょう。

 レイガス家での生活に慣れ始めてきた頃の、学園での昼休みのことです。食堂でニーニャたちと昼食をとりながら話をしていると、エイン様が近づいてきたのです。


「アンナ、君と話がしたい」

「……何の話でしょうか」

「二人きりで話がしたいんだけど」

「それは無理です。どうしても話したいなら、今、この場でどうぞ」

「……わかったよ。アンナ、僕はやっぱり……、やっぱり……」


 エイン様は目に涙を浮かべて、突然、大きな声で叫びます。


「僕はアンナが好きなんだ! 僕はアンナと結婚したい! だから……、だからっ、僕のためにローンノウル侯爵令息との婚約を解消して僕と再婚約して」

「嫌です」


 エイン様の話の途中でしたが、続きを聞かなくても内容がわかるので、はっきりとお断りしました。


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