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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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13  戻りたくありません

 時は過ぎ、私は十三歳、アデルバート様は十六歳を迎える年になりました。

 この六年の間も巻き戻る理由はわからないままでしたが、クラスメイトとの親交を深めながら、楽しい学園生活を送れていました。

  これからもこんな日々が続くように祈っていたのですが、そう上手くはいきませんでした。

新学年が始まる前に動きがあり、エイン様とお姉様が婚約を解消し、お姉様はロウト伯爵令息と再婚約したという情報が入りました。

 エイン様とお姉様が婚約を解消するのに時間がかかったのは、お姉様の婚約者選びに時間がかかったからで、フロットル伯爵家がお姉様との婚約を破棄しなかったのは、エイン様の評判も悪くなっていて、新たな婚約者が来てくれないと予想されたからです。どうしても、フロットル家は自分の家の血を絶やしたくないらしく、評判の悪い相手であっても、貴族の血が流れる婚約者が必要だったのではと言われていました。

 ということは、エイン様にも婚約者が見つかったのでしょうか。それに、ロウト伯爵家はどうして、お姉様との婚約を認めたのか謎です。

 なんて考えてみたものの、エイン様たちがどうなろうが知ったことではありませんね。それに、私にとって大きな問題は別にありました。

 今まで、何も言ってこなかった両親が、私と共に暮らしたいと言い始めたのです。施設では、家族との面会は双方が希望すればできます。今まではお互いに希望していませんでしたが、最近になって面会を求めてきたので、私は拒否しました。  

 すると、両親から今までの仕打ちについての謝罪の手紙が届いたのです。そこには『本当に後悔している。家に戻ってきてほしい。家族四人で仲良く暮らそう』と書かれていました。

 私はその手紙を見せ、「家に戻りたくありません」と施設職員に訴えると、ため息を吐いて言います。


「本当に反省しているのかと思って、子供を家に戻しても、また、同じことを繰り返す親も多いの。だから、あなたに家に帰ったほうが良いなんて言わないわ」

「こんなことを言ってくるということは、何か目的があると思うのです。それに元々、帰るつもりもないですし、帰って来いだなんて言われると余計に帰りたくなくなります」

「念の為、絶対に一人にならないようにしてね。シモン先生にも連絡しておくわ」

「ありがとうございます。気をつけます」


 私の学費は学力のおかげで免除されていますし、この施設を運営してくれているのは、とある公爵閣下です。資金不足になることはなく、贅沢はできませんが、実家にいた頃よりも良い生活を送らせてもらっています。このまま無事に生き抜き、私を助けてくれた皆さんに恩返しをするには、長く生きなければなりません。

 家族が何を考えているかはわかりませんが、警戒する気持ちを強めたのでした。


******


 二年ほど前から、アデルバート様は子どもだった頃の可愛さはなくなり、今では長身痩躯の美少年になりました。私のほうも食事をしっかり取れるようになったので、標準体重よりも少し痩せているという体形です。

 この六年間の間に、私とアデルバート様はかなり仲良くなりました。巻き戻っている人間同士だから生まれた絆というものでしたが、クラスメイトはそうは思っておらず「付き合ってるの?」と言われるようになりました。

 私たちの事情を知らない、アデルバート様のお父様からも「息子の婚約者になってくれないか」とまで言っていただいたのです。

 とてもありがたい申し出ではありましたが、私の頭の良さは本当のものではありません。何度も繰り返しているからの知識ですし、婚約するとなれば両親の許可が必要になりますので、連絡を取るのは絶対に嫌です。施設に入っているので、公爵閣下に保護者代理を求めても良かったのですが、ご迷惑をおかけするのも嫌で、辞退させてもらいました。

 アデルバート様と婚約して結婚できれば、今までの人生とは全く違ってきますから、惜しいことをしていますよね。だけど、自分の命が助かりたいという気持ちを優先して、アデルバート様の人生を壊すような真似はしたくなかったのです。

 だって、相手が私だなんて申し訳なさすぎます!

 私が遠慮しているとわかったアデルバート様は「気が向いて婚約しても良いと思ったら言ってくれ」と言ってくれました。

 ですので、私が学園を卒業する時に、その言葉がまだ有効であればお願いします、という話で今のところは終わっています。もちろん、それまでにアデルバート様が婚約したいと思う人が見つかれば、その話は無効になるということになったのでした。

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