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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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11/55

10  もういいかなと思ったんです

「アデルバート様!」


 勢いよく椅子から立ち上がって叫んだため、教室中に私の声が響き渡ってしまいました。みんなからの注目を浴びつつ、アデルバート様は無言で立ち止まり、私のほうに振り返ります。


「あ、あの、申し訳ございません。その、私は……十一回目なのですが、アデルバート様は何回目なのですか?」

「……十四回目だと思う」


 アデルバート様は驚いた顔をしたあと、そう答えました。

 

 アデルバート様は毎回私よりも早くに亡くなっていますから、回数が多いといったところでしょうか。

 私だけ時間が戻る理由がわかりませんでした。でも、アデルバート様も戻っているとなると、何かわかってくるかもしれません。もしかして、今まで違っていた私たちの時間軸が上手く重なったとかでしょうか。


 考えると頭がこんがらがりそうなので、このことを今は深く考えないようにしましょう。生き残ることが最優先ですもの。

 他のクラスメイトが不思議そうにしていることに気づき、私たちは話を止めて、次の授業の準備を始めたのでした。


******


 その日の放課後、アデルバート様から二人で話がしたいと言われました。そのため、クラスメイトが帰ったあとの教室で話をすることにしました。


「どうして、アデルバート様は私が人生を繰り返していると気がついたんですか?」

「きっかけは俺を助けてくれた、あの授業の時だ。手に持っていたならまだしも、裁縫セットの針に毒が塗られていたなんて普通は気がつかない」

「……そういえば、過去にアデルバート様はその方法で殺されているのですが、今回も危ないとは思わなかったのですか?」

「手に痛みが走ったのは覚えてる。でも、数時間後に苦しくなったから、何が原因だったか知らなかった。ただ、この日に死んだなってことはわかっていたから、今までその場に存在しなかったアンナを選んだ」


 女性が苦手なアデルバート様が私やニーニャと話をしてくれたのは、今まで同じクラスになったことがなかったからとのことでした。


「……ということは、ニーニャも巻き戻っているという可能性があるのでしょうか」

「どうだろうな。アンナがだいぶ運命を変えているみたいだから、ニーニャはアンナが楽に生きるために選ばれた可能性がある」

「選ばれた、というのは誰にですか?」

「わからん。たまたまかも」


 眉根を寄せるアデルバート様に微笑んでから話題を変えます。


「私たちの時間を巻き戻しているのは誰なのでしょうか」

「わからない。それに、何が目的なのかも気になるな」


 私の席の前の人の椅子に座っているアデルバート様がそう言った時、教室の扉が勢いよく開きました。


「アンナ、あなた、そんな所で何をやっているのよ。心配したじゃない。帰るわよ」


 現れたのはお姉様でした。しかも、後ろにはエイン様がいます。ちなみに他の人がいるから、あんた、ではなく、あなた呼びのようですね。


「アデルバート様とお話ししているのです。いつも一緒に帰っていないのですから、今日だけ一緒に帰る必要はないでしょう。先にお帰りくださいませ」

「あなたに近づくなと、エイン様が先生に叱られたの! その話がしたいのよ!」

昼休みに担任に相談していたので手を打ってくれたらしく、エイン様は私に近づかないようにと怒られたようです。

「家に帰ってすればいいだろ」


 もっともなことを言われたお姉様は、怒りで顔を真っ赤にして、アデルバート様を見つめました。でも、お姉様は何も言い返すことができず、大人しく引き下がり、エイン様と一緒に去っていきました。

 足音が遠ざかっていくのを確認してから、アデルバート様は尋ねてきます。


「一体なんだったんだ?」

「申し訳ございません。変わっている姉なんです。考えを理解することは難しいと思いますので、気にしないでください」

「……そうだな。一生分かりあえそうにないタイプだしな」


 アデルバート様は頷くと、話を戻します。


「アンナは俺が死んだ理由は知ってるんだよな?」

「はい。アデルバート様は大体、十歳までの間に亡くなっていましたので、新聞などで知っています」

「アンナのほうが巻き戻った回数が少ないということは、アンナが知らない死因もあるんだろうな」


 アデルバート様は私とは違い、長くても十歳までしか生きていません。たとえ、地頭が良くても考え方が限られてくるのかもしれませんね。経験値というものも大事になるのでしょう。


「どうして、アデルバート様は毎回殺されてしまうのでしょうか」

「知らん。アンナも同じだろ?」

「私は姉に嫌われているからです」


今までの事情を話すと、アデルバート様は不思議そうな顔をします。


「対処できそうな気もするけど、姉に好かれようと思ったことはないのか?」

「あります。ですが、何度も失敗しましたので、今回の人生はもういいかなと思ったんです」

「……そうだな。何度やっても同じということは、その選択肢が正解ではないんだろうな」

「どうすれば良いのでしょうか」

「それがわかってたら、苦労してない」


 ……それはまあ、そうですよね。

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