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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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9   絶対にそんなことはさせません!

「あんた、エイン様に未練があるの?」


 私の部屋は鍵を締めることが許されていません。ノックもなしに堂々と部屋に入ってきたお姉様はニヤニヤしながら、私に尋ねました。


 エイン様の家から連絡があったようですね。ここは演技をすることにします。


「じ……実は……、そのっ……! 未練といいますか」

「最後まで言わなくてもいいわよ。やっぱり未練があるのね。まあ、エイン様は少し頼りないけれど、あんたと仲が良かったものね」


 仲が良かったことは、今回の人生では一度もありませんが、そう見えていたのなら良かったです。正直に言いますと、殴りたいと思ったことは何度もあるんですけどね。でも、その感情を悟られてしまえば、お姉さまはエイン様との婚約を喜んで解消するでしょう。


 絶対にそんなことはさせません!


「今日、エイン様はお姉様との婚約を解消するなんてことを言っていましたが、そんなことになったら、お姉様が私に負けたことになりますもの。妹が姉の婚約者を奪うだなんて、そんなことは絶対にできませんわ!」

「わ、わたしがあんたに負けるですって⁉」

「エイン様がお姉様との婚約を解消して、私と再婚約したら、お姉様が私よりも劣っていると思う人が出てくるに決まっているではないですか!」

「わたしがあんたよりも劣るわけがないでしょう! まあ、見てなさいよ。あんたが羨ましくて泣き出すくらいに、エイン様と仲良くなってやるわ!」


 お姉様は言いたいことを言って満足したのか、私の部屋から出ていきました。

本当に騒がしい人です。でもまあ、まだ子供ですから、そんなものですかね。


 そういえば、ヴィーチは本当にお姉様と婚約したいと思っているのでしょうか。思っていたとして、エイン様とお姉様が婚約を解消しないと知ったら、ヴィーチがどう動くのか気になりました。

 ……といっても、お姉様至上主義のヴィーチがお姉様の決めたことに文句を言うはずもないかと思い、勉強に集中することにしたのでした。


******


 次の日の昼休み、エイン様は食堂から戻った私の所にやって来ると、肩を落として勝手に話し始めます。


「婚約の解消は無理だと言われたよ。本当にごめん」

「気にしないでくださいませ。どうぞ、お姉様とお幸せに」

「いや、そんなわけにはいかないよ! 君には昨日、期待させるような言い方をしてしまったし、このまま終わるわけにはいかないと思うんだ」

「終わってください」

「いや、駄目だよ。君を傷つけた罪は重い」

「傷ついてなんていませんので、もうお帰りください」


 ニーニャたちが心配そうに私を見ていることに気づき、帰るように急かすと、エイン様は必死に訴えます。


「絶対に君と再婚約するよ! 今度こそは裏切らない!」

「いいえ。あなたは絶対に裏切ります」


 はっきりと断言すると、エイン様はびくりと体を震わせ後ずさりしました。私は彼を睨みつけて言います。


「そのままお帰りください」

「何だか、機嫌が悪いみたいだな。本当にごめん。また、違う日に改めて話そう」

 引きつり笑いを浮かべて、エイン様はそう言うと、逃げるように走り去っていきました。その背中を見送ってため息を吐いていると、今度はアデルバート様が私の席にやって来ました。

「あいつのことで先生に苦情入れていいか?」

「もちろんです! ……といいますか、ご迷惑をかけているのは私です。私から先生にお話ししますね!」

 あんな人が頻繁に教室にやって来たら、他の人にも迷惑ですもの。

「いいんだが……、その」

「……どうかされましたか?」


 アデルバート様が珍しく言葉を詰まらせています。いつも言いたいことをはっきり言う方なので、何を言おうとしているのか、とても気になりました。


「ここでは話しにくいことなのですか?」

「……アンナは何回目なんだ?」

「何回目?」

「いや、いい。忘れてくれ」


 その時は一瞬、何の話かと思いました。

 でも、すぐにこんな考えが浮かんだのです。


 今の何回目というのは、人生が何回目かという話だったとしたら?

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