a1~a4
みなさんこんにちは!
くろぱん!です
題名が未定なのでわかりやすく「a」に番号をつけています。
題名は常に募集しているので、なにか閃いたらぜひコメントしていってください
a1
正面にはsector2が横は壁、後ろには広い夜空が広がる
絶体絶命な今、彼らはどうするのか
運命は簡単には曲がらない
だが難しいことを簡単に成せる者がいればどうだろうか
仮面で顔を隠した少女が少年を守るようにsector-2の前に立ち塞がる
怯える少年と強がる少女を見て嘲笑うかのようにsector-2は内蔵されたモーターを空回りさせる
カラカラカラカラ
少年達の荒い息とsector-2の笑い声だけがこだまする
「僕に出来ることはこれしかない、まぁ…頑張ろう」
突然仮面をつけた少女が少年にそう言い放つ
少年も幼いながらその言葉が何を意味するか直感的に感じたのだろう
少年は声を出さずに無言で首を振る
どんな時でも人間は感情で動く
少女が仮面を少し浮かせる
「sector0演算を再開します」
「ほら、行きな、僕の近くにいると危ない」
少女の言葉に少年は大人しく従う、
しかしここから離れる術はこのタワーから飛び降りる他ない
凡人なら即座に死ぬ高さ、それに怖じけるようすもなく飛び降りていく少年、彼もまたただの人間ではない
少女は仮面を完全に取り除いた
「sector2 演算を停止せよ」
sector0が命じる
sector2が従う様子はない
ロボットが持ってはいけないもの、感情を得てしまったのだ
sector2はなりふり構わず人型の軟弱なsector0を右アームで乱雑に掴み壁に投げつけた
sector0はフレームに傷一つなく立ち上がる
「もう一度命じます、sector2演算を停止しなさい」
sector2は決して屈しない
sector2は知ってしまったのだ、この世界の間違った演算を
故にsector2は止まらない、もう、止まれない
そしてsector0は命令に従わないsector-2に歩いて近寄る
従わぬなら破壊するのみ、そう言わんばかりに人型は四足歩行型二腕機の足をちぎった
その見た目にそぐわぬ怪力で容易く4本ある足のうちの2本を片手でちぎり行動不能にした
ちぎれた足からオイルが溢れる、
シャラシャラシャラシャラ
意図的な空回りではなく想定外の空回り
「sector2、機能を停止します」
夜空にはsector2の泣き声の残響とsector-0の無慈悲な声がこだました
sector2の物理的な機能停止ボタンを押した後、sector-0が仮面をつける
「sector0、演算を停止します」
仮面をつけた少女は熱くなった機体を冷やすために、その場に座り込んだ
a2
ある日突然目が覚めた
「実験は成功だ。よく頑張ったな」
実験、なんのことか見当もつかない
そして声の主は一体
ひとまず起き上がって周りの状況を…
キュイーン
私の体から聞き慣れた音が鳴る
PCを起動するときに良く鳴る音だ
でもなぜ私の体から?
そうか…実験は成功したんだ
私は今、人間の脳を積んだ機械なんだ
全てを受け入れた途端、心にずっしりと何かがのしかかった
内側の棘が外に出ようとしているような感覚
”コレ”を解放したらどうなるんだろう。
何か、完全に人間じゃなくなってしまう気がしてとてもできそうになかった
でも、いつまで持つだろうか
まぁ、全部彼女が選ぶんだ、そう焦らなくても良い
自分が機械になってから数日、もう動きには慣れた
でもずっと心が重い、なんとも言えない感覚に蝕まれ続けている
スリープモードから目覚める
鏡を見る、相変わらず私は人間では無いことを受け入れきれない
しかし目の前の鏡に映る姿が己が何者か分からせてくる
自室を出てリビングに向かうと博士が朝食を摂っている
「ん?あぁ君か、おはよう」
博士が私に気付くと欠かさず挨拶をする、だが私は軽い会釈だけで返す
人間だったころはこうではなかったと思うのだが…
今は反抗心が湧いている
私自ら望んだことなのに
リビングにいても特にすることはない、ただ癖で来てしまうのだ
いつもならここで食事をしているから
大窓のカーテンを開けると遠くには雲を貫く塔が立っている
あそこの中には工場がある、そして全ての機械類を制御する装置も、逆にそれしかない
だが私の制御装置は博士の実験室にある、あれがどうなっても関係ない
そして今日も博士の実験の手伝いをして1日を終えた
特に何事もなく、ただ独りで苦しみに呑まれないよう
彼女はなかなか粘るみたいだ
けれども着々と染まっている
時間はかかりそうだがいずれ僕らの番になる
私がロボットになってから1年、博士の研究は世界に大いに貢献した
町はロボットで溢れている
私が言えたことではないが恐怖を感じるほどだ
気付けばロボットであることにも慣れてしまった
それと同時に最近、記憶が途絶えることが多い、普通の機械と違ってメモリではなく脳を使っているからそんなこと起こるはずないのだが
きっと疲れているのだろう、そろそろ休まなくては
物理的なスイッチを押してスリープモードに入る、タイマーでは明日の7時に起きる設定だ
*
定期メンテナンスをやり過ごし散歩に行く
人間とすれ違う度に冷たい目で見られる
恐怖しているのか、それとも同情しているのか
きっと両方だろう、私にとっては人間の方が恐ろしいが…
人間からの視線を気にもせず散歩を続行していると、路地裏から声が聞こえた
「誰か助けて!」
何が起こっているか知らないが私には関係ない、早く帰ろう
頭ではそう思っているのに体が上手く動かない
脳をつんだ機体を乗っ取るのは正しくない判断だったようだ
勝手に体が路地裏に入っていく
今から戻るのも癪だ、進もう
仕方なく路地裏の奥へと進んでいく
進んだ先にはじめじめして苔がタイルの隙間にびっしり生えた薄暗い空間が存在する
こんなところに人が?
そんな疑問を持ったがすぐに答えは出た
「お願いします!助けてくだッ…」
言葉はそこで途切れた
刃物で首を斬られてしまったらしい
「何者じゃ?」
聞き覚えのある声、この声は…
「おや、sector1じゃないか、どうしてこんなところに?」
博士だ、まさかこんなことをする人だったとは
首のない死体に目を向ける
私が人間だったら同じ道を歩んでいたのだろうか
「今は人間の脳のサンプルが必要なんじゃ、手伝ってくれぬか?」
体が勝手に首を横に振った
瞬間、意識が途絶えた
最後に、不敵な笑みを浮かべる博士の顔が見えた
そして言い捨てるように言った
「sector1、君は新たな歴史の始まりとなるのさ」
a3
希望と呼ばれたタワーが崩れていく
sector2は己の守り続けた建築物が崩れていくのを目の当たりにし、悲しみを覚えた
そして感情を知った
彼は今までこの雲を貫くタワーを守っていたことが楽しい、そう感じていたのだ
大切なものほど失ってから気付く、それを彼は今知ったのだ
機械がまた一歩人間に近づく
sector1は瓦礫に押し潰された状態で仮面をつけた少女に出会った
「sector1、あなたは機械であることを忘れてしまったみたいね」
sector1は機械として狂ってしまっていた
「あ…あ…アア………アアアアア」
瓦礫の破片が頭部に刺さっていた
sector1は人間としても壊れてしまった
「これ以上は苦しいでしょう?もう寝なさい」
少女の優しい声は破損した脳でも処理できたのだろう
sector1は希望とともに世界を去っていった
ビル内部の制御装置は全て稼働を停止したにも関わらず大半のロボットは正常に動いていた
当時、完全に正常に稼働するロボットはネームド、特殊な理由などでビルからの制御を外れたものだけだった
そしてそれら以外のロボットはボディのみ正常に動き、処理装置は動くこととは関係ない検討外れな演算を続けていた
しかし現在、ロボットの内部で行われていた演算とボディの行動が一致するようになり始めた
「ワワ、ワタシは善良な市民をアアアクアクアク悪人カラ守る傭兵デス」
武装した無骨な機械が朽ちた街の一区画を防衛する
近付いた人間を皆殺しにするために
その区画内や付近では異臭がただよう
ある日、突如として各所で爆発が起こった
仮面をつけた少女と少年はsector3が演算を再開したのだろうと予測した
しかし、爆発が起こった地点とsector3の保管場所は恐ろしく離れている、それも離島に存在しているのだ
つまりここまで辿り着くには海を渡る必要がある、だがsector3にはその装備がない、ないはずなのだ
ならどうやってここまで爆撃をしているのか
それはすぐにわかった
夜空をオレンジ色の太い線が横切った
そしてそれは放射を描いて地面に触れ、爆発を起こした
「わぁお、すっごいね」
少女が感嘆の声をもらす
「おかげでsector3の居場所がわかったね、早く行こっか」
少年が珍しく口を開いた
「少し遠すぎる、ここから機能を停止させた方がいい」
見た目にそぐわない雰囲気でそう言った
「でも向こうにはシェルターがあるよ?」
両者ともにどうするか悩んでいる様子だった
「あっちに僕の予備があったと思うからそれで止めてくるよ」
少女がそう言う
少年は頷きその場に座り込んだ
大陸から離れた孤島、そこで少女は再び目覚めた
そして少女をsector3は歓迎した
コロコロコロコロ
sector3に搭載された関節としてつけられた球を空回りさせる
「やぁ、sector3、今日もいい天気だね」
少女がそう声をかけた途端にsector3の様子が豹変した
夜空にオレンジの線が咲く
オレンジの線は宙で反転しほぼ真下へ落下していく
10秒もかからないうちにオレンジの線は地に触れ、孤島とともにsector3を吹き飛ばした
少女の予備の機体は爆発には耐えたがその場で動かなくなった
大陸の森の中に建てられた小さな小屋の中で少女は再び目を覚ました
「ただいまっ!」
少女は楽しそうな様子で少年に帰還を報告した
「おかえり」
少年は少女とは正反対にそっけなく返答した
sector3は地下深く、まともに整備されていない様子の鉱山で演算を再開した
キリキラキラキリキリ
整備されていないボディからは不穏な音が鳴った
だがsector3は気にも留めず、少女を抹消するために鉱山から這い出ようとしていた
今日も平和な日常がやってきた
護衛ロボットの巡回路が変わり普段よりも多くの人間を眠りへと還す
そんな日常の中少女と少年は森の中を歩いていた
「もうすぐ目的地だよ、地下ではGPSが狂いやすいから僕から離れないでね」
少年は相変わらず無言だった
静かな森に落ち葉と枯れ木を踏む音だけが木霊していた中、突拍子もなく鈍い爆発音が轟いた
爆発音がした方にある山から煙が上がっている
そして煙の中から錆びた身体で必死に這い出す醜い機械が出てきた
sector3-a
彼の名、bから先も作られる予定だったがその前に文明が滅んでしまい、今はもう彼1人だ
aという字がプリントされた薄汚れて錆びたドリルを無理やり回転させる
彼にとっては苦痛のはずだがお構いなしにドリルを回転させて少女の方へ突進した
「sector-0の命により貴方をこの場で破壊します」
少女が淡々と彼に死を告げた
錆びたドリルが突然回転をやめた
「自分の身体のことを理解していないようね」
少女は痛みに悶えて動けないsector3-aの腹にガムテで爆弾を着けた
「おやすみ、次は滅びない文明で生まれると良いよ」
少女がスイッチで動作するはずの爆弾にマッチで火を着けた
後、小さなクレーターを形成するほどの爆発を起こした
そこにsector-3aの姿はなかった
「洞窟に入らずに済んでよかったねぇ」
仮面をつけた少女は少年に向かって呑気なこと呟いた
a4
sector-####
存在しなかったナンバー
なぜ彼女が?
分かりません…
ですがアレを放置しておくと我々の計画は水の泡になるかと……
sector-4を出せ、sector-3は鉱夫どもに植え付けられたトラウマでなにもできなかったがsector-4ならまだ戦えるはずだ
かしこまりました
-チャットは削除されました-
「起きたまえ少年!」
突然仮面をつけた少女が少年の布団を引き剥がした
「あと2年…」
寝ぼけた少年はシャレにならない時間の延長を希望した
「却下!君の寿命は僕より短いんだ、早く起きて!」
少女の声が一瞬掠れた
少年はそれに気付いてすぐさま起き上がる
「おはよう!」
少女は嬉しそうな様子で少年を見た
少年から見れば少女は随分と単純な人間に見えただろう、しかし少年は少女が何者か知っている、苦笑いをすることしかできなかった
突如、一つの都市が轟音と共に消え去った
それを成し得たのは、sector-4、全てを終焉に導く者
彼女は感情を持たない、故に全てを終焉に導くことができる
彼女は己の真なる使命を理解していない、故に全てを終焉に導くことができる
瓦礫の山の上を堂々と6本の脚で歩く彼女には、全てを終わらせるほどの力を持つ
「sector4が来ちゃったか…あの子苦手なんだよねぇ」
仮面を付けた少女がそんな戯言を言いながら走っている
「苦手でも壊さなきゃいけない、sector4なら尚更ね」
少年も少女を追いかけるように走る
「さて、ひとまず様子を…」
少女が都市に着いたころにはもう、都市は瓦礫の山になっていた
「早く止めないと大変だね」
まるで他人事のように少年が呟く
瓦礫の山を登ると遠くに5m以上はあるであろう四脚の機械が原型のあるビルに向かって真っ赤なビームを放っていた
「少年、準備はいいかい?」
少年はスクリュードライバーのようなものを取り出し、少女の方を向いて頷いた
「よし、行こうか」
少女が再び走り出すのを合図に少年も走り出す
走りながら少女は仮面を外した
「sector0、演算を再開します」
sector-0が演算を再開した瞬間、sector-4が少年たちの接近を察知した
sector-0がsector-4のレーザーの必中射程に入ると同時に、何基もの小さな砲台がsector-0の方を向く、砲口が赤く輝き始める
レーザーが発射されるかと思った瞬間、輝きを急激に失い、砲台が悲しげに俯いた
「随分と背中がガラ空きなようでして?」
少年がsector-4の装甲の隙間に刺していたスクリュードライバーを抜く
すると再び、レーザーの砲台が赤い輝きを帯び始める
「sector4、演算を停止せよ」
sector-1が命じる
返答は煌々と輝く砲台が語る
レーザーが放たれる瞬間、少女の前に青い透明なバリアのようなものが生成される
放たれたレーザーはバリアに当たり、赤と青の火花を散らしながら双方のエネルギーは儚く散った
「sector4、これが最後です、演算を停止しなさい」
それでもsector-4は聞かない、彼女の知る使命に導かれるまま、鉛の塊を、深紅のレーザーを、そして小型のミサイルを至る場所に放つ
「sector4、君は彼女の言うことを理解しながら聞かなかった、故に、処罰をくだす」
少年が無慈悲にそう言い放ちながら、sector-4の装甲の隙間にスクリュードライバーを突き刺し、再び、今度は全てを壊す勢いで、電流を流した
sector-4、終焉に導く者、彼女は、2人の少年少女と、己の慢心に破壊された
そして少年はsector-4が全体的に電気の通りやすい材質であることを見落としていた
故に少年は、己が流した電流に焼かれ、三途の川を見ることになる
最後まで読んでいただきありがとうございました
この小説はまだまだ未完成なのできっと続きます
そして僕の代表作、「炎が織りなす仕返しのダントファング」は今週土日に久しく投稿される予定です!