対の魂
白は見据える。
抱きかかえたこの子と同じ色の魂はすぐに見つかった。
その母親の側にはすでに金ちゃんが待っていた。
「マリア!マリア!何て姿に・・」
泣き叫ぶ母親に金ちゃんは冷静に語りかける。
「時間が無い。すぐに蘇生を始めます。まず貴方の魂を半分この子に渡します。体の治療も同時に始めます。よろしいですね?」
呆然としながらもこの子が助かるのならと思ったのか二、三度頷いた。
金ちゃんは母親の顔の前に手をかざす。
すると意識を失い崩れ落ちた。
白がそれを支えて横たえた子に並べる。
「では始める。」
金ちゃんが2人に向けて両手を広げた。
黄金色の空気が2人を包む。
母親の胸元から紅く丸い光が浮かび上がる。
それを二つに分けてそれぞれの胸元へと納めた。
そこから亡くなった子の治療に入った。
子どもに手をかざした金ちゃんの眉間に皺が寄る。
「これは銀ちゃんが怒るのも無理ない。
死因は内臓破裂。これほど踏まれてはひとたまりも無かっただろうに。苦しかっただろう・・」
潰されたお腹の辺りに淡い光が灯る。
腕と脚にも光が灯った。
きっと折れていたのだろう。
まだ幼い子が虫の息で母親の名を呼べたのは奇跡に近い事だと思うほどの怪我だった。
これには金ちゃんも白も怒りをおぼえる。
暫くして光が収まった。
黄金色の空気も静かに消えた。
母親は寝息の様に静かな呼吸をしている。
すると亡くなったはずの子も息をし始めた。
「お見事です。」
白が微笑む。
「脳細胞が壊れて記憶が消えてしまわない様に時間との勝負だったからな。無事甦ってくれて安心したよ。」
金ちゃんはホッとした表情を見せた。
2人は程なくして目を覚ました。
抱き合い無事を確かめ合って泣く親子。
「ありがとうございました!ありがとうございました!
貴方達は命の恩人です!」
何度も何度も頭を下げる母親に金ちゃんは
「いいえ。私どもは彼の方の従者でございます。
全ては彼の方の思し召しのままに行動したまででございます。」
手を差し伸べる方向には異形の銀ちゃんの姿があった。
白と金ちゃんは母親と子に恭しく頭を下げその場から霞の様に消えた。
呆然とする2人。
しかし、この子を助けてくれたのは彼の方なのだと2人は銀ちゃんの元に向かって歩き出した。
「いやぁ、全部銀ちゃんのせいにしましたね。もう、本当に悪いですよ〜!」
白は涙を流して笑っていた。
「僕の恭しい演技、いかがだったかな?」
「もう、合わせるの大変だったんですよ!笑い堪えるのも一苦労でしたし!」
金ちゃんも大笑いしていた。
「とりあえず、あの子も無事甦ってくれたしよかったか!」
「対の魂の術、何度見ても美しいです。感動しました。」
2人は固く握手をした。
素晴らしい連携で親子を救えた事に安堵する。
「さて、そろそろ銀ちゃんが来る頃だと思うから後はよろしくね〜。」
そう言って金髪の少年はその場を後にした。
世界に数名しかいない対の魂。
それぞれケースは違えど金ちゃんの気まぐれで生まれたごく稀な魂。
その繋がりは元々ひとつだった魂なのでとても強い。
そう。
周りが羨むほどの愛ある魂達なのだ。