第2話
明り代わりに手のひらから火の玉を出しながらぬかるんだ地下を歩くクルツ。
「ただいまー愛しい僕の家ー」
光の一切届かない地下、かつて水道として使われていたそこがクルツの家だった。
さして寝心地の良くない藁を敷き詰めたベッド、一部が腐った丸太をそのまま置いた椅子、じめじめと湿気の多い狭くて不快な空間……
どれをとっても最悪だ。
「さて今日のご飯は……」
「こんなのはどうだ?」
「うわっ!?」
誰も居ないはずの地下水道跡、クルツに声をかけてくる者がいた。
「ぎ、ギースか。脅かさないでくれ」
「魔法使いならこの位警戒しろ。馬鹿が」
暗闇から現れたのは不機嫌そうな表情を浮べる黒いローブに黒髪の青年、名前をギースという。
クルツの昔からの友人だ。
「どうせ食事もまだなんだろう。食え」
「おお、ありがとう。相変わらず優しいな、ギース」
差し出してきたのは小さな籠に入ったライ麦のパンと豚肉の腸詰。
「俺の好敵手がこんなところでこの様で放っておけるか」
「好敵手……か。随分と昔の話だけど、君はまだ僕をそう呼んでくれるのか」
「うるさい」
「ああそうだ。こっちに今朝作ったカブのスープがあるから温めて食べよう」
「要らん。カビでも生えてそうだ」
「まあまあそう言わないで」
崩れた下水道の壁を炉に改造したところで鍋に入ったスープを温めようとした時だった。
「あ……」
「どうした?」
炉の前で固まるクルツ。
「薪が全然ないや……」
「…………」
「火の魔法なんて初歩の初歩だろうが!ええい!」
「いやー流石だね。火力も安定してる」
結局火の勢いが安定しなかったクルツはギースに代わってもらって火の魔法を使い鍋を温めてもらっている。
「じゃあ僕はこれでもやろうかな」
そう言ってクルツは地下水道一杯に小さな火の玉をいくつもいくつも出現させた。
じめじめと陰気な空気が一掃されるような温かく幻想的な光景だ。
見下したような態度のギースも、この魔法のことは笑わなかった。
「……相変らずこういう魔法は上手なんだな。元々は敵を攻撃するための魔法なのに。綺麗なものだ」
「ありがとう。僕はこう……人を喜ばせたり、感動させる魔法?そういうのを研究していたいかな。いずれは水や風を使った魔法もね」
「お前の魔法や研究を否定するわけじゃないが……せめて攻撃用の魔法をいくつか習得しておけ」
「僕には必要ない」
きっぱりと言い切ったクルツに、ギースは頭を痛めた。




